© Aline Massuca/COP30

COP30が開幕しました


強い日差しが照りつけ、湿気を含んだ熱い空気がまといつき、急激に降り注ぐスコールが大地を叩きつけるアマゾンの玄関口。赤道直下に位置するベレンは、夏を迎えています。11月11日、COP史上初めてアマゾン地域で開催されるCOP30が開幕しました。

COP29のババエフ議長から、COP30の議長に選出されたコへーア・ド・ラーゴ議長に、議長だけがもつことを許される木槌が手渡された
© Alex Ferro/COP30

COP29のババエフ議長から、COP30の議長に選出されたコへーア・ド・ラーゴ議長に、議長だけがもつことを許される木槌が手渡された

今年のCOPでも、多くの議題が話し合われます。
 まず、パリ協定がめざす1.5度目標を実現するために欠かせない、各国の2035年目標の提出と積み上げです。本来はすべての締約国が2035年目標を2025年春までに提出することになっていましたが、多くの国では提出が遅れていました。それでも提出国はCOP30開催初日までに112カ国に達しましたが、まだ未提出の国が残っています。そのため、2週間後の閉幕までにできるだけ多くの国が提出することが求められます。
 IPCCによるとパリ協定の長期目標である1.5度目標を達成するためには、世界全体で2019年比で60%の削減が必要です。COP30では、果たしてどれだけの国が野心的な目標を提出し、その目標の合計が1.5度目標を達成するために十分かどうかが問われます。

 途上国の気候変動対策を行なうために必要な資金支援も大きな課題です。昨年のCOP29では、先進国を中心に2035年までに途上国に年間3,000億ドルの資金を動員し、さらに民間資金など多様な資金源を含めて年間1.3兆ドルの資金を動員することも決まりました。その資金目標をいかに具体化できるかが問われています。途上国にとっては資金や技術支援がされることを前提に削減行動の約束を掲げているので、資金支援の進展なくしては、野心的な削減行動の前進が望めないからです。

 議長国ブラジルは、この重く大きな課題を背負ったCOPの招致を決断し、成功に導こうとしています。開会式が始まると、コへーア・ド・ラーゴ議長は、粛々と議事を進め、次々と議案を採択していきました。昨年のCOP29では議案の採択をめぐって議論が紛糾したことから、ブラジルは時間をかけて多くの締約国の主張に耳を傾け、話し合いを重ねてきたからです。そのため、初日にほとんどの議案が採択され、COP30は幸先のいいスタートを切りました。

コへーア・ド・ラーゴ議長はCOP30を気候変動政策を推進する「実施のCOP」と位置づけ、粛々と議事を進め、次々に議題を採択した。
© Alex Ferro/COP30

コへーア・ド・ラーゴ議長はCOP30を気候変動政策を推進する「実施のCOP」と位置づけ、粛々と議事を進め、次々に議題を採択した。

第二次トランプ政権がパリ協定から離脱を表明し、COP30に政府代表団も派遣しなかったことが、気候変動の交渉を停滞させるのではという声が聞かれますが、COP30会場内ではアメリカの不在が話題に上ることはなく、会議関係者はCOP30を成功させる努力に集中しています。
 アメリカに追随してパリ協定を離脱した国はなく、むしろ各国は結束して気候変動を防ごうとしています。そして、連邦政府がパリ協定を離脱しても、パリ協定に留まって1.5度目標の達成をめざすアメリカの州政府などが加盟する非国家アクターの連盟は、ゆるぎない意思を世界に発信しようとしています。

 WWFでは、会議の成功をめざして、2週間の会期を通じてさまざまな活動を行っていきます。今後の発信にぜひご注目ください。

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自然保護室(気候・エネルギー)
田中 健

修士(理学・九州大学)
福岡県庁、経済産業省で廃棄物管理やリサイクルなどの環境保全行政に従事、日本のリサイクル企業の海外ビジネス展開を支援。その後、日本科学未来館にて科学コミュニケーターとして、国内外の科学館、企業、研究機関などと連携し、科学技術や研究者と一般市民をつなぐ様々なプロジェクトを担当。2018年8月から現職。気候変動イニシアティブ(Japan Climate Initiative: JCI)等、企業や自治体など非国家アクターの気候変動対策の強化に取り組む。

子どもの頃から、自然や生き物の「なぜ?」を探るのが好きでした。自治体や国で環境保全に10年取り組むも、「もっとたくさんの人に環境問題を伝えたい!」と思い、一念発起。科学館スタッフとして環境・社会・教育など様々な分野のプロジェクトを通じて科学コミュニケーションの経験を積み、WWFへ。これまでの経験をまとめて生かし、地球温暖化という大きな課題にチャレンジ精神で取り組みます。

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