シベリアトラの追加調査2日目 仔トラの足跡を発見!


※2023年6月26日をもって、WWFロシア(Vsemirnyi Fond Prirody)はWWFネットワークから離脱しました。

自然保護室の川江です。
先日、極東ロシアのウスリスキー保護区で行なわれた、シベリアトラの個体数調査の追加実施に2日間同行してきました。

今回は、2日目の調査結果のご報告です。

この調査の主な目的は、事前調査で見つかっていた7~8頭のトラのうち、一斉調査で見つからなかった残りの5~6頭の個体の足跡を探すこと。

オスのシベリアトラ

特に、2年前に確認された仔トラ2頭の行方が気がかりです。

2日目の調査では、まずオスとメスの成獣の足跡を発見。

このオスは、同じ場所を何度も往復した跡があり、この辺りを縄張りにする個体のようでした。

また、足跡の大きさや互いの発見場所の距離から、1日目に見つかったオスとは別の個体である可能性が高いこともわかりました。

トラがマーキングのために体をこすり付けた木の幹。トラの毛が残っている場合があるので採取します。

そして、そこから少し離れた場所で、母トラと仔トラの足跡を発見!

足跡が古く、仔トラが1頭なのか2頭なのか正確には判別できませんでしたが、それでも独り立ちが近い大きな仔トラと推測され、2年前に確認された個体である可能性が高いことがわかりました。

収集されたトラの毛はDNA鑑定に回します。

この他にも、トラの爪痕、糞を発見。
事前調査で見つかっていた7~8頭全てを発見することはできませんでしたが、一斉調査で見つかったメス2頭に加えて、オスの成獣2頭と仔トラ1~2頭の痕跡を新たに発見することができました。

一斉調査の結果は、5月に概要が、10月に最終報告が発表される予定です。

その結果は、単にシベリアトラの推定個体数が増えたか、減ったか、というだけでなく、今後、私たちが、どこで、どのような保護活動を実施していくべきなのか、そうした事についても示唆を与えてくれる、重要な知見になるでしょう。

雪道でトラの糞を発見!分解の早い糞は、冬季以外は収集が難しい貴重な資料です。これもDNA鑑定に回します。

前回10年前の調査よりも、トラたちが減っていないことを祈りつつ、発表を楽しみにしたいと思います。

シベリアトラ調査の概要を説明するWWFロシア・アムール支部のパベル・フォメンコ

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自然保護室長(森林・野生生物・マーケット・フード・コンサベーションコミュニケーション)、TRAFFICジャパンオフィス代表
川江 心一

京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科修士課程修了。
小学生の頃に子供向け科学雑誌の熱帯雨林特集に惹きつけられて以来30年間、夢は熱帯雨林保全に携わること。大学では、森林保全と地域住民の生計の両立を研究するため、インドネシアやラオスに長期滞在。前職でアフリカの農業開発などに携わった後、2013年にWWFに入局。WWFでは、長年の夢であった東南アジアの森林保全プロジェクトを担当し、その後持続可能な天然ゴムの生産・利用に関わる企業との対話も実施。2020年より現職。

小学生の頃に科学雑誌で読んだ熱帯雨林に惹きつけられると同時に、森林破壊のニュースを知り「なんとかしなきゃ!」と思う。以来、海外で熱帯林保全の仕事に携わるのが夢でしたが、大学では残念ながら森林学科に入れず・・。その後、紆余曲折を経て、30半ばにして目指す仕事にたどり着きました。今でもプロジェクトのフィールドに出ている時が一番楽しい。

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WWFは100カ国以上で活動している
環境保全団体です。

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