カワウソブームの裏で


先月、対馬で撮影されたカワウソ!が大きな話題になりました。

ニホンカワウソの生き残りか、はたまた海峡をはるばる渡ってきた大陸のカワウソか、とても気になるところ。

ではありますが、私たちにとって気になるニュースといえば、タイでのカワウソ密輸事件。

しかも、今年に入って日本人が関わる事件が3件も摘発されました。

まず、2月にカワウソ12頭などをスーツケースに詰め込み、バンコクから日本へ出国しようとした事件。

ついで6月に、コツメカワウソの幼獣10頭を、手荷物に入れて成田行きの飛行機に乗ろうとした男が逮捕された事件。

ボルネオ島のコツメカワウソ

さらに8月、また4頭のカワウソを密輸しようとした日本人が拘束。

こうした事件の背景には、愛らしく多くの人を惹きつけるカワウソの、ペットとしての取引需要があります。

日本国内でのカワウソ類の販売は、今のところ禁止されていませんが、80万~百数十万円という販売価格からも、その需要と希少性は明白。

過去にブームとなった、スローロリスやリクガメ類と同様、違法な捕獲や取引のターゲットになりつつあることが懸念されています。

熱帯アジアに生息するスローロリス

特に、南~東南アジアに生息し、IUCNの「レッドリスト」でも「危急種(VU)」に指定されているコツメカワウソは、絶滅のおそれのある野生動物。

主な危機は、生息環境の急激な悪化ですが、毛皮やペット目的の違法取引も問題視されており、過度な取引を防止するため、ワシントン条約の附属書Ⅱに掲載されています。

こうした問題はカワウソにとどまりませんが、野生動物のペット取引がむやみに広がるのは考えもの。

私たちが全力で取り組んでいる調査や規制のための提言活動は、まだまだ道半ばです。

皆さんもぜひ、こうした取り組みをご支援いただければと思います!(トラフィック 若尾)

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自然保護室(野生生物)、TRAFFIC
若尾 慶子

修士(筑波大学大学院・環境科学)
一級小型船舶操縦免許、知的財産管理技能士2級、高圧ガス販売主任者、登録販売者。
医療機器商社、海外青年協力隊を経て2014年入局。
TRAFFICでペット取引される両生類・爬虫類の調査や政策提言を実施。淡水プロジェクトのコミュニケーション、助成金担当を行い、2021年より野生生物グループ及びTRAFFICでペットプロジェクトを担当。
「南西諸島固有の両生類・爬虫類のペット取引(TRAFFIC、2018)」「SDGsと環境教育(学文社、2017)」

子供の頃から生き物に興味があり、大人になってからは動物園でドーセントのボランティアをしていました。生き物に関わる仕事を本業にしたいと医療機器業界からWWFへ転身!ヒトと自然が調和できる世界を本気で目指す賛同者を増やしたいと願う酒&猫好きです。今、もっとも気がかりな動物はオガサワラカワラヒワ。

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