新型コロナウイルス感染症とSDGsの目標達成

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2020年7月7日、国連は「持続可能な開発目標報告2020」を発表。各国政府によるSDGs(持続可能な開発目標)の進捗を明らかにする一方、その取り組みに対する、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響に言及しました。とりわけ、その関係が強く指摘されたのはSDGsの「目標15:陸の豊かさも守ろう」です。報告書は、世界の生物多様性の劣化・消失が、感染症を引き起こす一因として注目される中、生態系の保全と回復を目指す国際的な取り組みの重要性を、改めて示しています。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)とSDGs

2020年7月7日、国連は「持続可能な開発目標報告2020(The Sustainable Development Goals Report 2020)」を発表しました。

これは、各国政府が取り組む「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成状況を、17の目標ごとに整理、報告するもので、国連の「持続可能な開発に関するハイレベル政治フォーラム(High Level Political Forum:HLPF)」の年次総会の開催にあたり発表されたものです。

2020年は7月7日から16日まで、オンラインで実施された、このHLPFは、SDGsにとっては非常に重要な会議。

今回は特に、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックが、SDGsの目標達成に及ぼした影響に注目が集まりました。

とりわけ、今回のパンデミックに直接かかわるSDGs目標として指摘されたのが、「目標15:陸の豊かさも守ろう」です。

目標15:陸の豊かさも守ろう
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その理由は、多様な生物が息づく森林環境などの破壊を伴う土地利用の変化が、新興感染症と呼ばれる新しい感染症をもたらし、世界の公衆衛生と経済を脅かしているため。

© Philippe T. / WWF-France

特に深刻なのは、新興感染症の75%を占めるといわれる「動物由来感染症」の発症です。

実際に生息地の森などが破壊された結果、野生動物と人間が接触する機会が増え、こうした病気が20世紀以降、数多く発症。

SARS(重症急性呼吸器症候群)やエボラ出血熱などはその最も顕著な例であり、新型コロナウイルス感染症も、その一つであると考えられています。

さらに報告では、野生動物の密猟や密輸(違法取引)などの犯罪行為も、こうした感染症を広げるリスクがあることを指摘。

今後また繰り返されるおそれのあるパンデミックを予防する施策として、各国がSDGsの目標達成をめざす取り組みを強化すると同時に、生物多様性を守り、これまでの人と自然の関係を見直し、よりバランスのとれた共存を実現するための認識を育む必要性を訴えました。

国連が発表したSDG15活動状況 ©2020 United Nations

国連が発表したSDG15活動状況 ©2020 United Nations

未だに多くの国が生物多様性の重要性を認識していない

しかし、こうした問題の深刻さとは裏腹に、世界の国々の生物多様性の保全に向けた取り組みは、いまだ不十分なままです。

その一例が、新型コロナウイルス感染症により2021年5月17日~30日に開催延期が決まっていた、「生物多様性条約」第15回締約国会議(CBD COP15)をめぐる動きです。

現在までに条約事務局に対し、129の締約国政府が報告した国ごとの取り組みの現状は、その危機的な状況を示すものとなりました。

実際、生物多様性保全のために、各国政府が立てた、国の取り組み目標が達成できると報告した国は、全体の約32%どまり。

さらに、約24%の締約国が、具体策をとっていないか、そもそも目標自体を立てていません。

2010年に名古屋市で開かれた生物多様性条約第10回締約国会議(CBD-COP10)で採択された、生物多様性を守る世界の目標「愛知目標」を達成する上でも、これが不十分であることは、明らかです。

愛知目標2に基づいて設定された国家目標の達成度 ©2020 United Nations

愛知目標2に基づいて設定された国家目標の達成度 ©2020 United Nations

生物多様性の保全に欠かせない、これらの国別の取り組みや「愛知目標」のような国際合意が、SDGsとその目的を同じくし、その進捗にも大きく関係していることは、いうまでもありません。

鍵となるのは生態系サービスの保全を中心とした回復

今回の国連の報告は、世界のグローバル化が、野生生物の生息環境である自然を破壊し、感染症のパンデミックを引き起こしたことを、あらためて指摘しました。

しかしその反面、グローバル化は経済や、貧困の削減、技術革新、相互の文化交流をももたらし、世界の人々はその利点を享受しています。

つまり、こうした長所を活かしつつ、より公平で持続可能なグローバル化を目指してゆくことが重要といえるでしょう。

今回の国連の報告と同様の指摘は、2020年6月にも、「持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(SDSN)」とケンブリッジ大学が作成したSDGsに関する報告書の中でなされており、新型コロナウイルス感染症による負の影響は、明らかであることが示されています。


また、WWFもこれまでに発表してきた報告書『THE LOSS OF NATURE AND RISE OF PANDEMICS(失われる自然とパンデミックの増加)』などの中で、自然環境の破壊や野生生物犯罪が、こうした新たな感染症を発生させ、拡散させる原因になっていることを指摘。
生物多様性を喪失することのリスクと、保全の必要性を強く訴えてきました。

こうした指摘を踏まえ、今後目指すべき方向性として重要なのは、地球上のさまざまな「生態系サービス」を保全し、それを今後の経済活動の回復の中心とすべきである、という考え方です。

「生態系サービス」は自然界に由来する食物や木材、また気候の安定や、それに支えられた健康など、人の生存に欠かせないあらゆる環境的な要素を生み出しています。

現在はまだ、世界中でさまざまな自然資源、環境を搾取する形で続けられている経済活動が主流となっていますが、これに終止符を打ち、生物多様性が生み出す恵みである「生態系サービス」と、その持続可能性を守った形で形作る社会、これこそが、ポスト・コロナの未来を支える経済発展のカギとなるものです。

新型コロナウイルス感染症のパンデミックをきっかけに、日本をはじめとする多くの国は、環境に悪影響を及ぼさない、新しい経成長を実現するため、より大きな努力を払うことを求められています。

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