イギリスと台湾が象牙取引禁止を決定


2018年4月3日、イギリスと台湾が自国内・域内の象牙取引について禁止に向けた政策を進めることを発表しました。象牙は「ワシントン条約」で国際取引が禁止されていますが、国や地域によっては今も国内取引が認められています。しかし、こうした各国の国内市場に、違法に取引された象牙が海外から持ち込まれ、その消費地となっている例が多発しています。国際的にも各国での取引規制が進む中、今回、イギリス政府は国内取引禁止の具体的内容を定め、実行に移す決意を表明。台湾政府も2020年までに国内取引を停止させるために法改正をすることを打ち出しました。象牙の在庫を多く抱えた国内市場を有する日本の政策も、世界から注目されています。

イギリス、国内の象牙取引禁止へ向けて前進

イギリス政府は2018年4月3日、これまで自国内で認めていた象牙の国内取引の禁止に向けた政策を進めると発表しました。

イギリスは現在、象牙の大きな消費ニーズを抱えた国ではありませんが、19世紀~20世紀初頭にかけて装飾品や美術品の素材として利用してきた歴史があります。

しかし今回の政策により、現在のイギリスのアンティーク(骨董品)市場で普通に取引されている象牙製品のほとんどは事実上、取引禁止となります。

このほか新政策では違反した際の罰則や、ごくわずかに認める例外の規定と、そうした製品の一つ一つを厳しく管理するシステムの概要についても明らかにしています。

イギリスのアンティーク市場で見られる象牙製品

【取引禁止の例外として指定された象牙製品の例】

  1. 僅少品(De minimis):象牙部分が製品全体の10%未満で、1947年より前に製造されたもの
  2. 楽器:象牙部分が全体の20%未満で1975年より前に製造されたもの
  3. ミニチュア・ポートレート(17~19世紀に主に作成された、薄い象牙などの板に描かれる人物細密画を指す): 100年以上前に製造されたもの
  4. 各種象牙製品のうち最も希少で高い美術的・文化的・歴史的価値のある製品:100年以上前に製造され、専門機関の鑑定に基づいたもの
  5. 展示のため博物館などの間でやり取りされるもの

イギリスに限りませんが、一口に「象牙の国内取引の禁止」を叫んでみても、有償無償を問わずに行なわれる取引を、実際に全て禁止し、取り締まるのは容易ではありません。

そうした中で、法律の意図と目的に適う形で、厳密な例外を規定することは、その効果を確かなものにする上で重要なポイントになります。

イギリス政府は、野生生物の違法取引撲滅に向けた国際的取り組みをけん引してきた国のひとつですが、今回の取引禁止政策の発表では、そうした視点においても優れた判断を下した形となりました。

また、2017年10月6日~12月29日の12週間をかけて、この国内の象牙取引の禁止についてイギリス政府が行なった国民の「意見徴収」(日本でいうパブリックコメント)にも71,238件の回答が寄せられ、国としての関心の高さもうかがえる結果となりました。

同じくイギリスのアンティーク市場で見られる象牙製品

台湾でも象牙取引禁止となる法改正案が提案される

同じく2018年4月3日、台湾でも行政院農業委員会(日本の農林水産省に相当)が、2020年までに域内の象牙取引を段階的に停止するための法律の改正案を発表しました。

台湾ではこれまで、ワシントン条約の規制に従って1989年以降、象牙の輸出入(国際取引)を禁止。

域内取引については1995年に登録された在庫の象牙に限って、取引が認められていました。

そうした中で今回、台湾政府が大きく政策を改めた背景には、やはり過去10年間に激化したアフリカゾウの密猟と、隣接する香港や中国本土で進められている、国内・域内での取引停止の動きを汲んだものと思われます。

実際に近年、隣国である日本から中国に、象牙が違法に輸出される問題が明らかになっています。

象牙の国際違法取引のデータを収集・分析するETIS※(ゾウ取引情報システム)によれば、2011年~2016年の6年間で、日本から海外へ違法に輸出された象牙は、2.42トン(押収された分のみ)。

そのうち95%が中国向けの密輸であったことが明らかになっています。

2012年台湾で押収された象牙。お菓子を装っていた

台北の市場で見られる象牙製品(マンモス牙も含まれている)

また台湾でも同様の事件が発生。

2018年3月4日には、大阪から台湾の桃園空港に到着した旅客のスーツケースの中に隠された合計4.9kgの象牙製品が押収される事件が発生しました。

逮捕された台湾人は、日本国内で購入した象牙の彫刻品4点を、違法に海外へ持ち出し、台湾の税関で捕まりました。

WWFジャパンの野生生物取引調査部門であるトラフィックが行なった日本国内の市場調査でも、違法と知りながらこうした外国人に象牙を販売する、日本の古物商や販売業者の実態が確認されています。

今、日本に向けられる世界の注目

2017年12月末には中国で国内の象牙取引が終了し、香港も2021年までに域内の取引を終了させる政策を打ち出しています。

またアメリカでも、2016年に州間の象牙取引を禁止するなど、大幅な規制強化を導入。

それぞれ国や地域の事情に合った取引の禁止や、例外を規定する政策を取っています。

また、このような取引禁止の政策を実施するにあたり、各国や地域が、あえて「宣言」に近い形で自国の姿勢を公に表明する背景には、止まないアフリカゾウの密猟や象牙の違法取引撲滅に向けた強い意志があると言えるでしょう。

日本もまた、過去に合法的に輸入した多くの象牙の在庫と、合法的な国内市場を有する国の一つ。

違法な象牙の取り締まりや国内管理については一部改善も進められていますが、現在のところ、日本から象牙が違法に流出している現状に厳しく対応し、国際社会に向けた積極的な意思を表明するには至っていません。

日本の取り組みの不足が、密猟・密輸の防止に向けた各国の努力を阻害し、象牙の闇市場(ブラックマーケット)を拡大させる要因を生み出すような事態は、断固として防がねばならないものです。

今も象牙の在庫を数多く抱える日本の国際的な責任は重いものです。

WWFジャパンは、緊急な措置をもって象牙の違法輸出を阻止すると共に、厳格に管理された狭い例外を除き、国内取引を停止する政策を進めることを日本政府に求めています。

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