朝日SDGs ACTION!ウェビナー「WWFと考える SDGsの実践セミナー」第6回を開催 サステナブルなコットン調達とは?アパレル大手が挑んだOCS認証取得の道のり
2026/06/05
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- WWFジャパンは2025年11月6日、朝日新聞SDGs ACTION!編集部とともにウェビナー「WWFと考える SDGsの実践セミナー」を開催しました。テーマは「サステナブルなコットン調達とは?アパレル大手が挑んだOCS認証取得の道のり」。ゲストには、今年5月に大手アパレル企業として初めてOCS認証を取得したTSIホールディングス SDGs推進部部長の本宮靑芸氏を迎え、コットンのサプライチェーンにおける環境負荷の現状や同社における認証取得までの課題と取り組み、持続可能な調達について議論しました。
企業におけるコットンの持続可能な調達に向けた取り組みを紹介
WWFジャパンは、朝日新聞SDGs ACTION!編集部と協力し、サステナビリティや脱炭素、生物多様性などに関心を持つ企業関係者に向けて、2021年から「WWFと考える~SDGsの実践」という連載企画を実施しています。
この取り組みの一環として、国際的な潮流や企業の環境対応の先進事例を紹介するウェビナーを開催し、各業界からSDGs関連部署の担当者や経営層をお招きし、取り組みの内容や背景について語っていただきます。
2025年11月6日に開催した、第6回目のテーマは、コットンのサプライチェーンにおける環境負荷の現状と、持続可能な調達を目指す取り組み。アパレル産業の主要原料であるコットンの生産地では、大量の水の使用や、農薬による環境汚染、健康被害といった問題が指摘されています。この問題の解決に向けて、先進企業の間では、生産時の環境負荷が低くトレーサビリティが確保されたことを示すオーガニック認証を受けた繊維素材を取り入れる動きが広がりつつあります。
第6回では、認証制度の活用を通じて推進してきた、TSIホールディングスの先進的な取り組みを紹介しました。
ご登壇いただいたのは、TSIホールディングス SDGs推進部部長の本宮靑芸氏。朝日SDGsACTION!編集部 編集長の竹山栄太郎氏のファシリテーションのもと、WWFジャパンからは、淡水グループ長の小林俊介が登壇し、コットン生産と水リスク、認証制度の概要、TSI社の認証取得までの取り組み、そして今後の展望について議論しました。

水リスクと生物多様性の危機から考える、コットンサプライチェーンのサステナビリティ
まず、WWFジャパンの小林から、コットン生産と水リスク、そして淡水域の生物多様性をめぐる深刻な現状について説明しました。コットンは重要な天然原料である一方、栽培には大量の水を必要とし、水リスクの高い地域に生産が集中しています。気候変動で深刻化する干ばつや豪雨のほか、農薬過剰使用による水質汚染の影響も重なり、淡水域の生物多様性は深刻な状況にあります。
小林は、「生きている地球レポート」による分析として、淡水域の指数が1970年から2020年の間に85%減少し、世界の淡水生物の約4分の1が絶滅の危機にある現状を紹介。

衣料品は、原料生産から製造、販売に至るまで、多くの工程を経て国境を越えたサプライチェーンの中でつくられています。一方で、各工程における環境負荷は見えにくく、その把握が大きな課題となっています。小林は、環境への影響を低減していくためには、まずサプライチェーン全体の状況を可視化することが不可欠だと説明しました。
その具体的な手段の一つとして、サステナブル調達における認証制度の活用に触れ、国際的な認証制度としてOCS(Organic Content Standard)認証とGOTS(Global Organic Textile Standard)認証の2つを紹介しました。

TSIが取得したOCS認証マーク(TSIホールディングス提供)
なお、水リスクとコットンサプライチェーンのサステナビリティについては、別途こちらの寄稿で詳述しています。
サステナブルなコットン調達とは アパレル大手がOCS認証取得 WWFと考える~SDGsの実践~【18】
TSIホールディングスのビジネス概要と環境負荷低減への取り組み
続いて、TSIホールディングスでファッションのサステナビリティ経営を担当する本宮氏が登壇し、コットンをめぐる環境問題に対する考えを共有しました。本宮氏は、「気候変動の影響が年々大きくなるなかで、水リスクや生物多様性への影響は、企業にとっても無視できないビジネスリスクになっている」と述べました。
こうした問題意識の背景として、本宮氏からは、社長をはじめとする経営層の理解と後押しに加え、SDGs推進部を中心に社員・役員向けの環境研修を継続的に実施してきたことが紹介されました。その積み重ねにより社内の理解が進み、取り組みが各部門へと広がったと言います。
その結果、TSIホールディングスではコットンを環境面での重点課題の一つとして位置づけ、本宮氏は「まずは自社でどれだけコットンを扱い、どのような影響があるのかを把握することから始めた」と振り返りました。

具体的な取り組みとして、本宮氏からは、オーガニックコットンを対象に、生産された原料が製造・加工を経て最終製品として消費者に届くまでの過程を確認できるOCS認証の取得に着手した経緯が語られました。持続可能な調達方針を策定したうえで、その第一歩として、子会社であるTSI社が2025年5月にOCS認証に基づくブランド認証を取得。国内アパレル大手としては初の事例となりました。
さらに、この認証取得を受けて、同12月には「ナノ・ユニバース」からOCS認証付きのシャツが発売されることも紹介されました。

2025年12月に販売を開始したナノ・ユニバースの OCS認証コットンシャツ (TSIホールディングス提供)
トークセッション:ファッション産業と水をめぐる課題、OCS認証取得までの苦労、今後への期待
トークセッションの冒頭では、「ファッション産業と水をめぐる課題」をテーマに議論が行なわれました。朝日竹山氏の問いかけに対し、小林は、ファッション産業が原材料の生産から加工に至るまで、事業の多くの場面で水と深く関わっていることを改めて説明しました。
特にコットンについて、小林は「生育に水が欠かせない一方で、水リスクの高い地域で生産されることが多い素材」と指摘。こうした背景から、原材料の持続可能な調達や、生産・加工工程での環境負荷低減が国際的にも注目されている状況を紹介しました。

これを受けて本宮氏は、コットンがTSIにとって主要な原材料であることに触れながら、「生産背景や調達のあり方をきちんと整え、それを当たり前の状態としてお客様に届けることが大切」とコメント。欧米の動向も視野に入れつつ、原材料段階から環境負荷を考える重要性を語りました。
続くセッションでは、「OCS認証取得の取り組み」をテーマに、より具体的な事例が共有されました。小林は、OCSやGOTSといった国際認証が、原材料から最終製品までの流れを確認できる仕組みを持つ点を特徴として挙げ、サプライチェーンが長く複雑なアパレル産業において、環境負荷を把握するうえで有効な手法であると説明しました。
TSI社がOCS認証取得を検討するにあたっては、WWFジャパンがTSI社員向けに実施したセミナーが後押しになったと、本宮氏は振り返ります。認証制度やサステナブル調達の考え方を具体的に知ることで、自社での取り組みを現実的にイメージできるようになったと言います。
一方で、認証取得に向けて苦労した点として挙げられたのが、生産量やロットの問題でした。本宮氏は、「一般的な認証取得の生産単位と合わないケースが多く、調整が難しかった」と語ります。また、オーガニックコットンの調達では、生産量に見合った生地の確保に加え、縫製を担う認証取得工場の選定にも時間と労力を要したと言います。
こうした課題に対しては、商社のサポートを受けながら、原料調達から製造までサプライチェーン全体で連携する体制を築くことで、一つひとつ乗り越えてきた経緯が紹介されました。本宮氏は、「サプライチェーン全体で支えてもらえたことが、認証取得の実現につながった」と述べ、協働の重要性を強調しました。
認証取得後は、特に投資家からの反応が大きかったとも語られました。今後に向けては、持続可能な調達方針のもと、重要な素材ごとに数値目標を設定し、より具体的な取り組みへと進めていきたいと展望を示しました。

最後に小林からは、サステナブルなコットン調達について、企業一社一社の取り組みが社内にとどまらず、やがて業界全体へと広がっていくことで、水をはじめとするコットン生産やアパレル・繊維産業を取り巻く環境課題の解決につながっていくとの期待が述べられました。
まだサステナブルコットンは一般消費者の認知が十分とは言えない分野だからこそ、トレンドを創出する力を持つアパレル・繊維・ファッション産業の果たす役割は大きいとし、TSI社の取り組みを一つの起点として、こうした動きが業界全体へと広がっていくことへの期待とともに、本ウェビナーは締めくくられました。

イベント概要:WWFと考える SDGsの実践セミナー 第6回『サステナブルなコットン調達とは?アパレル大手が挑んだOCS認証取得の道のり』
開催日:2025年11月6日
会場:オンライン開催
参加者:約170名(当日)
登壇(敬称略):
株式会社TSIホールディングス SDGs推進部部長 本宮靑芸氏
WWFジャパン淡水グループ長 小林俊介
朝日新聞SDGs ACTION! 編集長 竹山栄太郎
主催:朝日新聞SDGs ACTION!編集部、WWFジャパン



