インドネシア初!ブラックタイガー(エビ)の「ASC認証」が誕生


2017年8月18日、インドネシアで初となるブラックタイガー(エビ)のASC(水産養殖管理協議会)認証が誕生しました。ASC認証は、自然環境、労働環境や地域社会に配慮した養殖業だけが取得できる国際的な認証制度。WWFは、ランドスケープ(景観)の保全を目的として推進する「北カリマンタン 海と森の保全プロジェクト」の海を守る活動として、ASC認証取得を目指しブラックタイガー(エビ)の養殖業改善プロジェクトに取り組んできました。
*この認証の取り消しについて追記あり(2020年7月2日)

ボルネオ島の自然環境の保全に向けて

豊かな生態系を育み、ボルネオゾウやテングザルをはじめ、多様な野生生物が生息するボルネオ島・北カリマンタン。

しかし、この北カリマンタンでは、エビの養殖池やパーム油を生産するためのアブラヤシ農園などの無計画な開発の拡大により、マングローブ(ヒルギ科の樹種の森)や熱帯林が大規模に破壊され、野生生物の生存が危ぶまれてきました。

その産品であるエビやパーム油は、主要な消費国である日本にも多く輸入され、使われています。

そこでWWFジャパンは、日本とも深いかかわりを持つこの地域の、森と海の双方を含めたランドスケープ(景観)の保全を目的とした、「北カリマンタン 海と森の保全プロジェクト」を推進。

その一環として、現地の海でのエビ(ブラックタイガー)の養殖が、「ASC認証」を取得するよう支援する、養殖業改善プロジェクト(AIP: Aquaculture Improvement Project)を、現在実施しています。

「ASC認証」はその地域の自然環境や社会、労働環境などに配慮した養殖に与えられる、国際的な認証。

北カリマンタン沿岸部に広がるエビ養殖池

その取得をめざす今回のプロジェクトは、現地のエビ加工会社であるPT. Mustika Minanusa Aurora(PT. MMA)社、およびPT. MMA社の最大の取引先(供給先)である株式会社ニチレイフレッシュと共に、持続可能なブラックタイガーの生産を実現するための取り組みでもあります。

フィールドとなるエビの養殖池が広がる北カリマンタン沿岸部は、マングローブや泥炭湿地からなる独自の生態系もつ生物多様性が豊かな場所。

ここは、絶滅が危惧されるテングザルやコツメカワウソなどの哺乳類、コハゲコウをはじめとする鳥類といった絶滅危機種の生息地でもあります。

そして、エビ養殖でASC認証を取得する際の基準には、養殖池の開発によって伐採されたマングローブの再生や、定期的な水質調査が要件に含まれているほか、養殖池に時折姿を見せる、野生生物への配慮も求めています。

つまり、持続可能な養殖業の証であるASC認証の取得は、この場所の貴重な自然環境や野生生物を保全する手立てとなるのです。

上からテングザル、コツメカワウソ、コハゲコウ

実現したASC認証の取得!持続可能な生産拡大に向けた大きな一歩

養殖業改善プロジェクトでは、地域の小規模養殖業者たちがASC認証の基準にそった持続可能な養殖が行なえるように、マングローブ再生のサポートや労働者たちへの水質調査等のトレーニング、労働環境の整備や地域社会とのコミュニケーションの促進を実施。

厳しい基準をクリアできる下地を整え、2017年3月に認証審査を受け、5カ月にわたる評価と手続きが行なわれました。

マングローブの再生

そして、2017年8月18日、ブラックタイガーの養殖としてはインドネシア初となるASC認証を、PT. MMA社が取得しました。

ブラックタイガーは、日本にも非常に多く輸出されていることから、生産地であるインドネシアの関係者と消費地である日本の関係者が、協力して養殖業の改善に取り組み、ASC認証取得を達成したことは、北カリマンタンさらにはインドネシア全体で、エビのASC認証を広げる大きな一歩です。

養殖池で働く労働者へのトレーニング

今回のASC認証取得にあたり、株式会社ニチレイフレッシュ代表取締役社長の金子義史氏は、次のように述べています。「弊社が2006年からインドネシアのタラカン市や地元パートナー企業のMMA社と共に取り組んできた活動を通じ、ブラックタイガーでASC認証を取得できたことは大変光栄な事です。WWFインドネシアやWWFジャパン様のお力添えをいただき、新たなステップへ進むことが出来ました。今後も、北カリマンタンの豊かな生態系や持続可能な水産物の保全について取り組んでまいります」

認証審査の様子

また、WWFジャパン、事務局長の筒井隆司は、「今回のASC認証取得は、サプライチェーンのパートナーの協働によりもたらされた非常に意義のあるのです。ボルネオ島の豊かな自然環境を守る上でも大きな一歩となりました。今後も、(株)ニチレイフレッシュをはじめとする日本の水産関係者やインドネシアオフィスと協力しながら、持続可能な水産物の推進を通じて、現地の自然環境、野生生物の保全に向けて取り組んでいきます」と述べています。

持続可能な養殖業の証であるASC認証のマーク

さらに、WWFインドネシア、現地プロジェクト担当のモハマッド・ブディ・サントサも、「今回のASC認証取得は、養殖業者、養殖池で働く労働者、PT. MMA社、そしてバイヤーである(株)ニチレイフレッシュの協働により実現し、サプライチェーンの関係者の連携を示した素晴らしい事例となりました。さらに、小規模養殖業でもASC認証を目指し、養殖業の改善を行なえることを証明しました」と述べています

WWFは引き続き、「北カリマンタン 海と森の保全プロジェクト」を推進し、インドネシアの自然環境と野生生物の保全に取り組んでいきます。

認証を受けたブラックタイガー(エビ)

養殖業改善プロジェクト(AIP)にかかわった現地関係者


<この認証の取り消しについて(2020年7月2日 追記)>

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ブラックタイガーのASC認証が、ASC基準のマングローブに関する要件を満たさない点が新たに見つかったことにより、2020年6月5日付けで取り消されました。

ASC基準のマングローブに関する要件では、1999年5月より後にマングローブを伐採し造成された養殖池については、当局によって許可されたポンプ場や取水・排水用水路の建設を除き、ASC認証の対象とはならないことになっています。

今回の養殖池については、関係者へのヒアリングをもとに、1999年5月より前に造成されたことを認証機関が本審査の際に確認作業をしており、また養殖業改善プロジェクトに関わっていたPT. MMA社やWWFインドネシアを含む現地関係者、およびWWFジャパンも同様に確認作業をしたことで、一旦は本審査の基準を満たしていると認められていました。

しかし、年次監査の過程で衛星写真により改めて確認を行なったところ、1999年より後に造成された養殖池であることが明らかになり、残念ながら要件を満たさないと判断されました。

WWFジャパンとしては、今回の件を、今後インドネシアでエビ養殖業改善プロジェクトを推進していくにあたっての教訓とし、WWFインドネシアとの一層の連携の下で、養殖池を選定する段階からマングローブの要件を含め関係者と十分に協議・確認を行ない、再発の防止に努めるとともに、野生生物や人間にとっても重要なマングローブ生態系の保全を含む持続可能な養殖業への転換をさらに進めてまいります。

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