ボルネオ島・北カリマンタンの海と森の保全


世界でも有数の生物多様性の高さを誇るボルネオ島。その一方で、著しい森林減少や沿岸開発が続いており、多くの野生生物が絶滅の危機に追い込まれています。その環境から生産された木材や水産物を、輸入・消費している日本にとっても、これは遠い問題ではありません。今ここでは、豊かな自然を守りながら、その恵みである資源の利用を両立する取り組みが必要とされています。WWFではそのため、海と森の双方を含めたランドスケープ(景観)の保全という大きな視点から「海」と「森」を守る活動を推進しています。

北カリマンタンの豊かな自然とそこに迫る脅威

活動地である北カリマンタンには、今も広大な熱帯林と川の流れ、そしてマングローブ(ヒルギ科の樹種の森)などの沿岸の自然が残されており、ボルネオゾウやテングザルといった絶滅の危機にある野生生物の生息地にもなっています。

しかし、パーム油を生産するために造成されるアブラヤシ農園の拡大や、沿岸部の開発などにより、その自然は年々失われつつあります。

ランドスケープの保全

北カリマンタンの沿岸部、エビの養殖池(写真手前)やアブラヤシ
農園(写真奥)が広がっており、開発が進んでいる様子が分かる。

北カリマンタンは、2013年に東カリマンタンから分かれて設置された新しい州です。

それ以来、州内では、土地をどのように利用していくかを決める「土地利用計画」の策定について議論が続いてきました。

この計画は、北カリマンタンの「海」と「森」両方の自然の未来を左右する重要なものです。

たとえば、経済活動のみを優先し、優先して守るべき生物種の生息地を考慮に入れていない計画が立てられた場合は、希少な野生生物の生息地である森林が開発されるなどの大きな環境問題に繋がるおそれがあります。

そこでWWFは、北カリマンタン政府や、州内各県の機関に対し、州の土地利用計画を十分に環境に配慮したものとするよう、政策提言を行なっているほか、林業や漁業に携わる企業や他のNGOとともに、現地の関係者に対するトレーニングの実施などに取り組んでいます。

「海」の保全活動

自然に配慮した養殖池で育てられたエビ(ブラックタイガー)。
過密で環境の悪い養殖池で養殖されたものよりも、周囲に自然が
多く残る場所で育てられたエビの方が、大きく育つといいます。

マングローブ林

生きものが豊かな北カリマンタンの沿岸部では、豊富な水や、平坦なその地形を活かしたエビの養殖が盛んに行なわれています。

しかし、こうした養殖場の無計画な開発は、海岸部に広がるマングローブや、川ぞいの森を次々と破壊してしまう、原因のひとつになっています。

この地で生産されるエビの主要な輸入国の一つである日本も、こうした問題に間接的に、しかし深く関わっているといえるでしょう。

そのためWWFは、現地でエビの生産や加工に携わっているPT.Mustika Minanusa Aurora(PT.MMA)社や、日本ではMMA社の最大のパートナーである株式会社ニチレイフレッシュとともに、持続可能なエビの生産に取り組む養殖改善プロジェクト(AIP)を実施。

ここでのエビ養殖業が、環境や社会に配慮した養殖業の基準を定めた、国際的な認証制度である「水産養殖管理協議会(ASC)」の認証を取得することを目指しています。

このASCが定めているエビ養殖の認証基準には、養殖業を通じてマングローブを再生も要件に含まれています。

つまり、この活動を推進することにより、多様な野生生物が生息する貴重なマングローブの生態系を保全することができるのです。

「森」の保全活動

ボルネオゾウ

テングザル

ボルネオ島では現在、各地で急速な森林減少が続き、多くの野生生物が絶滅の危機に追い込まれようとしています。

森林減少の主な原因は、パーム油を生産するために造成されるアブラヤシ農園の拡大。そして、木材や紙の生産を目的とした森林の伐採などです。

これによって本来の生息地を失ったアジアゾウ(ボルネオゾウ)をはじめとする野生生物が、時に人の生活圏に入り込み、人と衝突してしまう例も珍しくありません。

特に、北カリマンタンに生息する絶滅危惧種ボルネオゾウは、アブラヤシ農園などに侵入してアブラヤシの木を倒してしまったり、住宅などの建築物を破壊したりといった事故を引き起こすことがあります。

そこで、このプロジェクトでは、北カリマンタン州政府が策定しようとしている、土地利用計画への提言を行ない、ゾウの生息地である森を守ると同時に、地域の住民や政府機関に、ゾウとの衝突回避のための普及啓発活動や、村や農園に侵入してきた野生のゾウを、傷つけずに森に追い返すためのトレーニングを実施しています。

「つながり」のあるボルネオの森を守るために

ウンピョウ

日本から遠く離れたボルネオ島の「海」と「森」。
その豊かな生態系は、エビやパーム油、木材などの生産地として、日本の消費と確かにつながっています。

今、残されている生物多様性を守り、未来に引き継ぐためには、現場で起きている課題を解決しながら、自然資源を持続可能な形で利用していくことが欠かせません。

環境の保全活動と人の経済活動。WWFの北カリマンタンの海と森の保全活動では、日本とインドネシアの関係者が協力して、その両立を目指していきます。

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