活動再開へ!ゾウ密猟が勃発した中央アフリカ共和国より続報


2013年3月にクーデターが起きた中央アフリカ共和国で、5月6日、17人の武装密猟団が、国内の混乱に乗じて、南西部のザンガ・ンドキ国立公園に侵入。少なくとも26頭のゾウが象牙を目的とした密猟の犠牲になりました。その後も、同国では混乱が続き、保護地域での活動が中断を余儀なくされていましたが、5月下旬から再開に向け、動きが活発になっています。首都から派遣された密猟対策の軍部隊も現地に到着。事態の改善が期待されます。

ザンガ・サンガの悲劇から1カ月

中央アフリカ共和国の南西部、「ゾウの楽園」といわれる水草スワンプ(湿地帯)を擁したザンガ・ンドキ国立公園で、象牙を狙った密猟団によるマルミミゾウの密猟が起きてから1カ月が経ちました。

この国立公園を含めたザンガ・サンガ保護地域は、WWFが過去30年にわたり、森林の保全に務め、近年は人づけされたゴリラやゾウが人気を呼んで、エコツーリズムで地元のコミュニティーが必要な収入を得られる、数少ない地域として注目されていた場所です。

また、ここはサンガ川を挟んでカメルーン、コンゴ共和国と豊かな熱帯森林生態系を共有し、「サンガ多国間ランドスケープ」として世界自然遺産にも登録された、中部アフリカ地域でも貴重な保護区です。WWFジャパンが2012年から支援を開始した、カメルーン、ロベケ国立公園とも隣接しています。

このような中央政府の混乱の波及により、一時は保護区のスタッフらも、隣国のカメルーンに退避を余儀なくされましたが、5月下旬から保護活動の再開に向けた動きが始まっています。

5月16日には、事態の改善と密猟対策強化を強く求めるWWFなどの要請を受けて、中央アフリカ共和国暫定政府の防衛大臣と森林大臣が、密猟取り締まりのため軍部隊とレンジャーを、首都バンギから派遣する命令書に署名。

さらに、この部隊の現場到着に先立って、ザンガ・サンガ保護地域の国立公園管理事務所があるバヤンガの町に、事態の収束を見越した公園事務所の所長とレンジャーたちが、一時的に避難していたカメルーンから戻り、いち早く保護活動の再開に着手したのです。

また、カメルーンのロベケ国立公園で活動を展開する、WWFカメルーンの密猟対策と法整備の専門家スタッフ、エルベール・エコデックも助っ人として中央アフリカ共和国に入り、その活動をサポート。この人々の頑張りによって、保護部隊が到着するまでの数週間、現場は新たな密猟の危機に見舞われずに済みました。

密猟で使われた銃。これはカメルーンで4月に押収されたもの

2013年5月に中央アフリカ共和国で起きた大規模な密猟の犠牲になったマルミミゾウ

ザンガ・サンガ保護地域に、ついに保護部隊到着!

そして6月3日午後、ザンガ・サンガ保護地域で危機対応に当たっていたWWFスタッフをはじめ、現地の関係者が、待ちに待った瞬間がやってきました。

首都バンギから、ついに保護部隊が到着したのです。これは、森林大臣と防衛大臣の命令によって派遣された、30人のレンジャーと30人の軍人からなる混成部隊です。

ここに、バヤンガでWWFの要請を受け、スーダンの密猟団を警戒していた暫定政府軍SELEKA(セレカ)の協力的な部隊が、北部のノラへ移動するに当たって現地に残した10人の兵も合流。さらに、ノラからも7人が派遣され、総勢77人となりました。

当初、60人に1台しか自動車が手配できず、また新政府内の事務手続きの遅延などもあって、出発が大幅に遅れましたが、ようやく保護の現場を守る体制が整いました。

到着した部隊は、すでに現地で動いていたレンジャー部隊と新たな見回り計画を詰め、6月5日の朝から実際最初の4日間のパトロール活動を開始しました。

密猟にしばしば使用されるAK47カラシニコフ自動小銃。旧ソ連で開発され、世界中の戦地で使用されてきた。写真はカメルーンで押収された物。

こうした現地で取り組まれている一連の密猟対策には、カメルーンのロベケ国立公園の保護活動にWWFジャパンを通じて送られた日本からの寄付金も、大きく役立ちました。

今回、WWFのスタッフをはじめとする、カメルーンのロベケ国立公園の関係者たちは、ザンガ・サンガからの一時的な退避を受け入れただけでなく、活動再開への支援にも力を尽くして取り組みました。その前提として、同時に、自分たちの国立公園も密猟から守られることが必要でした。

そのためには、公園管理のバックアップをするWWFスタッフの補強が急務とされていたのですが、ちょうど2012年に日本から寄せられた寄付金によって、新しいスタッフを1名、雇うことができたのです。彼が補佐に入ったおかげで、エルベール・エコデックが、ロベケの現場を一時的に離れることが可能になりました。

保護区の情勢と活動の態勢が安定すれば、ザンガ・サンガ保護地域にすむゾウやゴリラなどの野生動物にも、しばらくは静かな暮らしが戻ってくることが期待できるでしょう。

「政府軍」と「反政府軍」 密猟の背景にあるもの

もっとも、これで中央アフリカ共和国の混乱が、完全に収束したとは言い切れません。

5月に起きたゾウの密猟が物語るとおり、ザンガ・サンガをはじめとする保護地域にとって、中央政府の政情不安は大きな危険に繋がります。

アフリカではしばしば、こうした政情不安が勃発してきましたが、それが 直接、密猟に結びつくケースが見受けられるからです。

たとえば、クーデターによる政権の交代が起きた場合。
それまで「政府軍」だった軍隊が「反乱軍」になり、「反乱軍」だった軍隊が「革命軍」また「暫定政府軍」に、いとも簡単に入れ替わります。

そもそもこれらの「反乱軍」は、反体制派の部族の長が私的軍隊として抱えている「民兵団」と呼ばれる武装集団を、組織化したものです。各部族は固有の民兵団を持っていることが多く、政権を取っているあいだは、その民兵団の元締めは国軍の主要な地位を占めています。ところが政府が転覆し、「民兵団」も後ろ盾を失うと、そのまま武器を持ち出し、国境を越えて移動しながら、他国の政情不安に加担するケースが増えているのです。そして中には、象牙などの密猟に走る事例が発生します。

中央アフリカ共和国に生息するマルミミゾウ。森林に生息する。5月の大規模な密猟の現場にも、ゾウの姿が戻り始めている。

中央アフリカ共和国の隣国カメルーンでも、同様の問題が続いてきました。
南東部のロベケ国立公園が、現在直面している密猟問題の背景には、1990年代後半に勃発した隣国コンゴ共和国の内戦で、大量に出回ったカラシニコフ自動小銃(AK47)があります。これらの銃器が北部のサンガ州へ流れ、カメルーンへ越境してくるコンゴ人の密猟に流用されているのです。

国境を越えて暗躍する密猟団が多用する、こうしたおびただしい戦闘用の武器に対しては、各地の国立公園管理事務所の所有している限られた数のライフルでは、とても太刀打ちできません。このため、大規模な密猟行動を阻止するためには、軍隊の出動を要請し、その結果に期待するしかないのです。

民兵団と繰り返されるクーデター

国が非常な混乱にさらされる中で、保護区の自然や野生動物を守ることは、容易ではありません。そのため、是非なくこうした軍の助力を仰がねばならないケースが、現場には存在します。

しかし、こうした民兵上がりの軍隊、つまり武器を持った人間たちは、同時に危険な要素にもなります。

中央アフリカ共和国においても、現在の政府による3月のクーデターを成功に導いたのは、SELEKA(セレカ)と呼ばれる民兵団でした。

しかし、この武装集団の中身は、中央アフリカ共和国内の当時の反政府勢力だけではありません。チャドやスーダンといった、隣国の民兵団を戦力として巻き込んでいるのです。

現代の民族紛争では、カラシニコフなどの安価で高性能の小型武器が、国境を越えて広く移動するとともに、それを持ち歩く民兵も移動します。特定の国の政治集団だったグループが、武装戦闘集団へと変容し、戦場を渡り歩くケースが多く生じています。

前述のコンゴ共和国の内戦では、ソ連崩壊とロシアの混乱のため、仕事をなくした旧KGBの傭兵が政府軍、反政府軍双方の特殊作戦に加わっていた、などといったことすらありました。

こうした武装集団は、報酬を得られるならば、自国のみならず、他国においても、クーデターの立役者となるべく「反乱軍」にはせ参じます。そして、自分たちが誕生させた新政権が出す条件が悪いと、すぐに寝返って旧政権側に付き、新たな紛争を引き起こしたりするのです。

懸念される中央アフリカ共和国の今後

今回の中央アフリカ共和国の混乱も、その意味でも先行きに不安を残しています。

中央アフリカ共和国の新政権は現在、クーデター以来の緊急事態は収まったとして、SELEKAの兵士たちに、出身地で日常生活に復帰するよう促していますが、中には正式に政府軍への雇い上げを求め、現状の対応に不満を訴えている人たちも出ています。

これはあくまで可能性ですが、5月初旬に起きたザンガ・サンガの大規模密猟も、そうした不満を募らせたSELEKA内の一派の仕業とも考えられています。

もちろん、問題は軍隊だけではありません。
そもそも、人々の暮らしと政治が安定しない限り、長期にわたって自然や野生生物を守ってゆくことは困難です。

3月に起きた政変の前、打倒される以前の中央アフリカ共和国政府は、国境を接するカメルーンやコンゴ共和国とも協調し、サンガ多国間ランドスケープの世界自然遺産への登録を果たしたのみならず、激しさを増す密猟への対策に、3か国で協働する本格的な軍の投入を決めていました。

クーデターは、そのすべての計画を転覆させただけでなく、政府の中枢に座る顔ぶれを、政府が持つ自然保護に対する意識・方針ともども、一変させてしまったのです。

こうした政治的、軍事的な混乱は、実際の行政の現場にも大きな影響を及ぼします。
3月のクーデターの混乱の中では、中国のダイヤモンド採掘業者に対し、それまで許可されていなかった、ザンカ・サンガの保護地域でのダイヤモンドの探索権が、新たに発行されてしまいました。これは、クーデター後の新政権が、保護地域の重要性をよく認識していなかったために発生した問題です。

そしてこの採掘業者に対しては、いち早くSELEKAの部隊を護衛に付けて、バヤンガへの初期調査の便宜を図った一方で、同時期にバヤンガに侵入したゾウの密猟団に対しては、この新政府派遣のSELEKAが何の行動も取らなかったため、大規模密猟の悲劇が起こってしまいました。

政治機能がどれだけ早く立て直せるのか。軍隊や武装勢力にかかわる問題が解決できるのか。また民兵たちは武器を捨て、社会復帰できるのか。

6月5日、首都バンギのWWF事務所も再開しましたが、同日、軍隊のベースキャンプで撃ち合いがあり、数名の死者が出たとの情報があります。また、3月のクーデターで失脚し、亡命したボジゼ前大統領が再入国したという噂も出回り、軍の動きが活発化するとともに、国内に新たなパニックを引き起こす可能性も出てきました。

中央アフリカ共和国は今、国の真の復興と、豊かな環境保全への道を進めるのか、その進路が問われています。

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