中央アフリカ共和国で暫定政府軍を名乗る密猟団がゾウの生息地に侵入


2013年5月8日、中央アフリカ共和国南西部に位置するザンガ・ンドキ国立公園で、少なくとも26頭のゾウが象牙を目的とした武装密猟団に殺される事件が起きました。同国ではゾウの密猟が急激に深刻化しており、事態をこのまま放置すれば、2012年2月に約300頭のゾウが殺された、カメルーンのブバ・ンジダ国立公園と同じような大規模密猟が起こる危険性もあります。WWFは、2013年3月の政変により混乱をきたしている中央アフリカ共和国に平和と秩序を取り戻し、世界自然遺産にも登録されているこの貴重な地域の保全を支援するよう、国際社会に強く呼びかけています。

「ゾウの村」が、「ゾウの墓場」に

WWFの情報源によると、2013年5月6日、中央アフリカ共和国の暫定政府軍セレカを名乗る17人の武装密猟団がザンガ・ンドキ国立公園に入り、現地で「ゾウの村」とも称されるザンガ・バイ(水草の多い湿地帯)に向かいました。

ザンガ・バイは、その砂に含まれる栄養分をなめるために、毎日50頭から200頭のゾウが集まる場所です。

WWFは30年にわたり、これらのゾウや、あるいは同じようにバイを利用するゴリラなどの保護と研究にたずさわり、その結果、ここはゾウが安心して観光客の前にも姿を現す、野生動物の楽園になっていました。

しかし政情不安の影響をうけた安全上の理由により、WWFなどの自然保護団体は、4月よりザンガ・バイに隣接する事務局から一時退去を余儀なくされていました。

WWFが支援している現地の調査員の報告によると、同日、密猟団のメンバーが彼らに接触し、通常は科学者や観光客のゾウ観察用に使われているザンガ・バイの見張り台への行き方と、食料を求めました。

調査員は正確でない方向を故意に教えたあと即座に逃げましたが、ザンガ・バイの方向から自動小銃の銃声が聞こえてきたといいます。その後、夜を通じて繰り返し銃声が聞こえましたが、レンジャーたちは安全面から近づくことができませんでした。

この17人の密猟団は、5月8日の夕刻、森から出ました。翌日、現地のレンジャーたちはただちにザンガ・バイとその周辺を調べ、象牙を切り取られて死んでいる少なくとも26頭のゾウ(うち4頭は子ども)を発見しました。

さらに、5月9日午前には、村人がゾウの肉を持ち去る様子が確認されています。現地から届いた写真は、象牙を取るために激しく損傷した頭部や、肉を取られて内臓があらわになったゾウの死体の惨状をとらえていました。

中央アフリカ共和国の暫定政府は、対応を検討中とみられますが、現在のところ具体的な密猟対策は講じられていません。また、事件の日から現在にいたるまで、ザンガ・バイには生きているゾウが1頭も姿を現しておらず、まさに「ゾウの墓場」の様相を呈していると、現地の情報源は伝えています。

ゾウの楽園だったザンガ・バイの湿地帯。以前はこうした多くのゾウたちの姿を見ることができた。

ザンガ・バイで5月6日~8日に殺されたマルミミゾウ。森林に生息するマルミミゾウは、主に密猟によって、過去10年間で62%減少したとみられている。

中央アフリカのザンガ・サンガからカメルーンのロベケ国立公園に逃げてきたと思われる、人に慣れたゾウ

早急な平和と秩序の回復を

ザンガ・ンドキ国立公園を含むサンガ多国間ランドスケープ(※)の動向にくわしいWWFジャパン自然保護室の岡安直比(おかやす・なおび)は、この事態に対し、次のように述べています。

「昨年2012年7月、サンガ多国間ランドスケープ内で隣接するカメルーンのロベケ国立公園での調査時には、ゾウは人間を恐れて、夜にしかバイに出てきませんでした。しかし、今は昼間でも平気で姿を現すゾウが、中央アフリカ共和国との国境を成すサンガ川沿いに急増しています。
これは、人に馴れた中央アフリカ共和国のゾウが、密猟を恐れてカメルーン側に逃げてきているということでしょう。WWFのサンガ多国間ランドスケープ・ロベケプロジェクトでは、難を逃れてきたこれらのゾウを守るため、国境警備を強化するカメルーン政府森林省への全面支援を開始しました」

またWWFインターナショナル事務局長のジム・リープは、

「野生生物犯罪は、地域の暴力を助長し、中部アフリカ国家の治安と経済成長をさまたげています。中央アフリカ共和国政府はこの事態に対し、即刻、軍を投入するべきです。またWWFは、中央アフリカ共和国が平和と秩序を取り戻して、貴重な自然環境が保全されるよう、同国をただちに支援することを国際社会に求めます。そして象牙の消費国、特に中国とタイの政府は、アフリカ大陸中のゾウを絶滅に追いやろうとしている原因である象牙の需要を減らすよう、取り組みを強化するべきです」

とのコメントを発表しています。中央アフリカ共和国を中心として、付近一帯についても、早急な秩序と平和の回復が望まれます。

  • サンガ多国間ランドスケープ:Tri-national De La Sangha: 略称TNS。中央アフリカ共和国(サンガ・ンドキ国立公園)、カメルーン共和国(ロベケ国立公園)、コンゴ共和国(ヌアバレ・ンドキ国立公園)の3カ国にまたがる、国立公園と周辺の保護地域。マルミミゾウやニシローランドゴリラなどの希少種が生息する。2012年ユネスコ世界自然遺産に登録された。

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