環境に配慮したブリ類養殖の「ASC認証」基準の採択に向けて


現在の世界の水産物の約4割を占める、養殖水産物。世界の需要を支える一方、養殖による海の汚染や、生態系のかく乱、天然の魚へのさまざまな悪影響などが指摘される例も少なくありません。WWFは現在、海の環境や地域社会に配慮した養殖業を推進するため、ブリ・スギ類養殖の「ASC認証」の基準作りを進めています。2013年8月には、その基準案に対する一般からの意見募集(パブリックコメント)が始まります。

拡大する水産養殖産業とその問題

水産養殖は世界でも成長率の著しい産業であり、今や水産物の総生産量のおよそ4割を占めています。

2050年には、世界人口が現在の72億人から96億人まで増加すると予想される中で、
水産業殖業は安定的な食糧供給の観点からも、引き続き拡大が見込まれています。

しかしながら、水産養殖産業が拡大する一方で、さまざまな環境問題が見られるようになりました。
海洋環境の悪化、天然の魚などの個体群や生態系のかく乱、エサの原料として使用される天然魚の乱獲などです。

こうした問題を解決し、環境に配慮した水産養殖業を世界に広げるため、WWFは養殖版の「海のエコラベル」である「ASC(Aquaculture Stewardship Council:水産養殖管理協議会)認証」の普及と推進に努めています。

このASC認証は、世界に共通した養殖の基準、たとえば、養殖に際して水質を汚染していないか、飼育している魚が逃げて自然の生態系をかく乱していないか、エサとして与える天然魚などを持続可能な形で使用できているかなどについてのルールを定め、それを守って行なわれている養殖業を「認証」するもの。

また、この認証を受けた養殖水産物には、独自のASCラベルが貼られ、消費者にもそれが環境配慮型の商品であることが、一目でわかる仕組みになっています。

世界が話し合う「持続可能な水産業」の基準

WWFはこのASC認証を推進するため、世界各地の養殖関係者、NGO、科学者などを集めたアクアカルチャーダイアログ(水産養殖管理検討会)を開催。環境と社会に責任のある養殖業の世界基準(グローバル・スタンダード)作りを、現在進めています。

この基準に照らして審査に合格した養殖業は、ASCの認証を取得することが可能となり、世界の市場で環境に配慮した養殖水産物であることを、アピールすることができます。

ASC認証の対象として、現在までに設定されている魚介類は、全部で12種。
この12種のうち、すでにティラピア、パンガシウス、サケ、二枚貝(カキ、ホタテ、アサリ、ムール貝)、アワビについては、基準作りの作業が完了しました。

また、エビ、淡水マスについても2013年中に、最終版が公表される予定となっています。

そして、最後に残ったのが、ブリ類とスギの2種。
特に、ブリ類の養殖は日本がその生産量の9割を占めており、海外にも輸出されています。

そこで、このブリ・スギ類については、2013年2月に東京で生産者、飼料メーカー、研究者、流通・販売企業、監査法人、NGO等の関係者が一堂に集まって、第3回ブリ・スギ類水産養殖管理検討会を開催。

ブリ・スギ類養殖に関係する環境的、社会的な問題について話し合いを行ないながら、ASCの基準案をどのようにまとめるかを検討しました。

ブリ

ブリの養殖場(鹿児島県)

給餌の様子

日本で策定される養殖の世界基準

そして今回、このブリ・スギ類基準の策定作業計画がこのほど改定され、WWFアメリカのウェブサイト上で公開されました。

この計画案には、管理基準の改定案の公開や、第4回ブリ・スギ類水産養殖管理検討会の開催予定、最終管理基準の採択の日程などが含まれています。

現在、ブリ・スギ類水産養殖管理基準検討会運営委員会では、東京での第3回検討会での議論と、ここで作られた最初のASC基準の草案に対する一般からの意見公募(パブリックコメント)の結果をふまえて、基準の改定案を策定中です。

今後の作業計画の流れは、以下の予定になっています。

8月中旬:ASCブリ・スギ類基準(案)の公開
8月中旬~10月中旬:関係者や一般からの意見(パブリックコメント)の募集
10月中旬:第4回ブリ・スギ類水産養殖管理検討会(予定開催地:日本)
12月中旬:基準の確定

詳細はWWF-USのウェブサイトをご参照ください(英語)

多様な関係者の声をASC認証基準に

こうした、さまざまな意見交換や、一般からの意見募集が重要な理由は、これから作られるASCの基準が、特定の立場の人たちだけの見解を強く反映した、結果的に偏ったものにならないよう、配慮する必要があるためです。

これまでにも、水産養殖に関する基準は多く作られてきましたが、これらは主に、生産者や業界団体が中心になって策定したものでした。

しかし、海の環境という、社会的にも多くの人がかかわるテーマに則したASC認証の基準作りは、多様な関係者の声を反映させることを基本原則としています。ブリ類の養殖生産の多くを占める日本の水産養殖関係者の人たちにとっても、これは大切な問題といえるでしょう。

2013年8月に始まる、基準案に対する意見の提出(パブリックコメント)には、日本の生産者、消費者の声を反映させることが求められています。ご関心をお持ちの方は、ぜひこのパブリックコメントの募集に参加してみてください。

ブリ・スギ類水産養殖管理 基準案について

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