煙で飛行機が飛ばない?!スマトラ島より


自然保護室の南です。
いま、私たちが熱帯林の保全を支援している、インドネシア・スマトラ島中部のリアウ州に来ています。

が、大きな問題が発生しています。
連日、飛行機の欠航が続き、一時は空港自体も閉鎖されてしまいました。

日本で飛行機が欠航になるとしたら、まずは台風や大雪、といった理由が思い浮かびますが、ここリアウでは「煙」が原因です。この煙がすでに2カ月近く、街中を覆っているのです。

当然、視界も悪くなり、飛行機も頻繁に欠航。現地のWWFのスタッフたちも、青空をしばらく見ていないそうです。

何故、そんなに煙が発生しているのでしょうか。

これ、実はスマトラ島での森林火災が発生源です。
スマトラは、パーム油(植物油)を採るためのアブラヤシの栽培が盛んな島ですが、このアブラヤシを植えるために、森を焼き払ってしまうケースが多発しているのです。

特に、自分の土地を持っていない人などが、アブラヤシを植えるため火を入れることも多く、現地ではとても大きな社会問題にもなっています。

この煙による害、すなわち「煙害(ヘイズ)」が毎年ひどくなるのは乾季で、風向きによってはシンガポールやマレーシアまで煙が流れ、国際問題にまで発展しています。

インドネシア政府も、専門チームを組むなど対応に力を入れていますが、根本的な解決に繋がる対策は、まだ十分にとられていません。

地元紙によれば、現在火災が確認できる地点はすでに2000カ所を超えているとのこと。

こうした熱帯森の減少を食い止めるためにも、環境や社会に配慮して栽培されたRSPO認証パーム油を普及していかなければと思いながら、まずは帰りの飛行機が飛ぶかどうかを心配しているところです。

関連情報

 

煙霧(ヘイズ)に閉ざされた、ペカンバルの街

テッソ・ニロ国立公園の近くにあるアブラヤシの農園。ここはRSPO認証を取得した小規模農園。

スマトラ島は、絶滅が危惧されるスマトラトラやスマトラゾウの貴重な生息地。こうした動物と人との軋轢を回避するために、ゾウとゾウ使いによるパトロールも行なわれています。

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自然保護室(森林グループ兼 フードグループ長)
南 明紀子

米Monterey Institute of International Studies国際環境政策専攻修士課程修了。国際基督教大学国際関係学科卒業。 環境マネジメントコンサルタントを経て、2013年にWWFジャパン入局。森林リスクコモディティとも呼ばれる、森林減少要因であるパーム油、牛肉などの持続可能な生産と利用推進を担当。

マニュアルも正解もない仕事ですが、何が地球・人間にとって一番最適解かを模索する日々です。最近の疑問は「認知の後にアクションに繋げるにはどうすればいいか」。

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