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西表島干立で希少植物をまもる人々


今春、沖縄県西表島で湿地再生を目指す「西表島干立村ふるさとの田んぼ再生プロジェクト」のフィールドで実施された植物調査に同行しました。

この調査は、2018年から干立で植物調査を継続されている宮本太さん(東京農業大学)によって、プロジェクトの水田再生予定地周辺で実施されたものです。

調査には水田作りに参加している住民の皆さんやプロジェクトメンバーも同行し、先生から水辺や畔で植物の実物を示しながら解説して頂きました。

干立の水田周辺の植物群について解説する宮本太さん(農学博士、東京農業大学)

今回の調査で、日本国内はもとより西表島でも今では干立でしか見られなくなった希少な植物の生育を確認することができました。

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国内では干立にのみ生育が確認されたスイシャホシクサ。CR:絶滅危惧ⅠA類(環境省レッドリスト)

オオシラタマホシクサ。国内では西表島、石垣島、沖縄島周辺に分布するが、現在は西表島にのみ生育する。

こうした希少な植物が生育するためには、除草剤等の農薬を使わない昔ながらの方法で維持・管理された水田環境が必要です。

また水辺との適切な距離が保たれる緩やかな傾斜のある畔などのエコトーンの存在が、多種多様な湿地性植物の生育のために非常に重要であることを実地で学ぶ機会となりました。

一方でこうした水田作りは、手間と労力がかかり、収量を上げることだけに着目すれば効率的ではない面があります。

干立では、伝統的な稲作に根差した祭りを継承するために必要な稲わらを自給するため、また希少な植物・動物の生育・生息地をまもるため、こうした水田作りに取り組んでいます。

「西表島干立村ふるさとの田んぼ再生プロジェクト」メンバーの皆さん.右から、宮本太さん、伊谷美穂さん(イルンティ・フタデムラ理事)、山下義雄さん(竹富町議会議員、イルンティ・フタデムラ理事)。WWF小田、長澤孝道さん(イルンティ・フタデムラ代表理事)

生物多様性の保全と文化伝統の継承という多面的機能の発現を目指す干立の皆さんの水田作りが、さらに多くの参画と支援を得て地域に根付いていくことを願い、WWFも引き続き協働していきたいと思います。

(野生生物グループ 小田倫子)

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自然保護室(野生生物)
小田 倫子

弁護士として10年間稼働後、家族の転勤に伴い沖縄県名護市に居住したことを契機に、自然保護の仕事を志し大学で保全生態学を専攻、2013年WWF入局。法人パートナーシップ担当として生物多様性保全・気候危機対策に関する企業との協働プロジェクトの提案・実施業務を担当後、野生生物グループに異動、今は国内希少種を保全するフィールドプロジェクトを担当。
学士(法学・農学 東京大学)
法学修士(カリフォルニア大学バークレー校)

国内希少種の宝庫である南西諸島で主に活動しています。フィールドで生き物に出会い、その美しさ・不思議さを仲間と分かち合える瞬間が至福の時。趣味は里山散策と水生生物の観察。

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