見過ごしている生きものたち


駅までの道すがら、毎朝通る学校の裏道。

今の時期、校庭にはツグミやムクドリが何羽もやってきて、朝食を楽しんでおります。

道沿いの木立や草むらには、スズメやエナガ、ジョウビタキなどがおり、アオジやモズを見ることも。

そんな場所で先日、思わぬ出会いがありました。

歩いていると、いつも通りスズメが数羽、落ち葉をひっくり返して食事に夢中。

おはよう!という気持ちでチラと目を向け通り過ぎたところ、

んんん?

何か羽の模様が違う気がする...

ものの数秒でぱっと飛んで逃げてしまい、残念ながら写真は撮れず。明らかにスズメよりも警戒心が強いようでした。

足を止めて数歩戻り、よく見てみると、

「アトリだ!」

そこにいたのは、独特な形の羽を頭に戴く、久しぶりに見た小鳥たちでした。

アトリは本州には冬にやって来る渡り鳥で、開けた農地などでは大群をつくることもあります。

見られたのは5羽。

アトリの群。これは以前、九州で見たもの

もとより珍しい鳥ではないですが、住んで7年になるこの町では、初めての出会いでした。

アトリはもっと郊外の鳥(うちも十分郊外だけど)、という印象でしたが、後で聞いた話では、今冬はとても飛来数が多いとのこと。

それでも、年によっては少ないながら、アトリたちはここに来ていたのかもしれません。

小鳥は全部スズメだ、くらいにしか思っていなかった自分の目には、おそらくその姿が見えていなかったに違いない。

なかなか捨てたもんじゃない学校のグラウンド。カワラヒワやコゲラもよくいます。

ヤレ勿体無いことをしたと、嬉しくも反省しきりの、そして電車を一本逃しただけの価値ある(?)時間になりました。

自分自身が思っているほど、私たちは野生の生きものたちのことを知らないものです。

身近な野鳥しかり。遠く海を越えたスマトラの森や、チリの海に生きる生きものたちしかり。

新しい出会いが待っていることをまた期待しながら、謙虚な気持ちで彼らの姿に目を向けてゆかねばと思います。(広報担当 三間)

関連情報

足元で日向ぼっこしているキジバト。一応こっちを見ていますが、全然逃げません。

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自然保護室(コンサベーションコミュニケーション グループ長)
三間 淳吉

学士(芸術学)。事務局でのボランティアを経て、1997年から広報スタッフとして活動に参加。国内外の環境問題と、保全活動の動向・変遷を追いつつ、各種出版物、ウェブサイト、SNSなどの編集や制作、運用管理を担当。これまで100種以上の世界の絶滅危惧種について記事を執筆。「人と自然のかかわり方」の探求は、ライフワークの一つ。

虫や鳥、魚たちの姿を追って45年。生きものの魅力に触れたことがきっかけで、気が付けばこの30年は、環境問題を追いかけていました。自然を壊すのは人。守ろうとするのも人。生きものたちの生きざまに学びながら、謙虚な気持ちで自然を未来に引き継いでいきたいと願っています。

人と自然が調和して
生きられる未来を目指して

WWFは100カ国以上で活動している
環境保全団体です。

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