シリーズ:気候危機の解決に向けて、私にできることは?「再生可能エネルギーを多く供給している電力会社に切り替える」編


都道府県を選択すると、その地域に起こりうる今世紀末の気候危機を見ることができる「未来47景」キャンペーン。大切な地元にも温暖化の影響が及びうることを知って、食い止めるための行動を呼びかけるとともに、特設サイトでは、個人にできる12のアクションをご紹介しています。

でも、「気候変動ってとっつきにくい、実感がない」「個人の行動で何が変わるの?」と感じている人も多いはず。そこでこのシリーズでは、12の選択肢からピックアップしたアクションについて、WWFインターン歴1か月の大学生・エナさんが、気候変動・エネルギーグループの専門家に聞いた行動のヒントをご紹介します!

再生可能エネルギーを多く供給している電力会社に切り替える

エナ:はじめまして、いろいろ教えてください!初心者なので、わかりやすくお願いします(笑)

イチカワ:了解しました(笑)なんでも聞いてください!

エナ:初回は「再生可能エネルギーを多く供給している電力会社に切り替える」ですが、そもそも、電力会社を選べるって知りませんでした。

イチカワ:東日本大震災と東京電力福島第一原発事故から5年後の2016年、電力小売全面自由化により、私たちは自由に電力会社を選べるようになりました。

エナ:実際に切り替えるのは大変そうですね。

イチカワ:ハードルが高いイメージがあるかもしれませんが、実はとっても簡単なんです!電力会社を決めて、検針票を用意すれば、ウェブサイトや電話から10分ほどで申し込みが完了します。現場の立ち合いも必要ありません。

エナ:たった10分で・・意外でした!となると気になるのは価格がですが、やはり高くなっちゃうんでしょうか?

イチカワ:あまり変わらないか、安くなる場合もあります。経験者の63.4%が、電気代が安くなったと感じているという調査もあるようです。*1

エナ:再エネが多い=高いではないんですね!さっそく電力会社を検索してみたら、いろいろ出てきました。こんなにあると迷っちゃいそうです。どういうポイントで選ぶのが、WWFとしてはおすすめですか?

© Shutterstock / Andrei Shumskiy / WWF

イチカワ:選ぶ際の大きなポイントは2つあります。

1つめは、電気の「由来」を公表している点です。使う電気が、石炭火力など化石燃料由来で作られているのか、あるいは太陽光や風力などの再生可能エネルギーなのか。電気の割合(電源構成)を、ちゃんと“情報開示”している会社を選びましょう。しっかりした会社であれば、ウェブサイトの目につく場所に、グラフで分かりやすく掲載しているはずです。

2つめは、やはり再生可能エネルギーの割合が多いものを選ぶという点です。割合は多いほどいいですが、その時、できれば注意して見てほしい点があります。

電気の割合を示すグラフや案内に、“FIT“の文字がついていない、ただの「太陽光」、「風力」などの割合が多いものがより望ましいという点です。

逆に、「FIT太陽光」、「FIT風力」といった“FIT”の文字がついている場合は、ただし書きをよく見ることが重要です。 「このFIT電気は、非化石証書(再エネ指定)によってCO2排出ゼロを実現します」といった趣旨の内容の記載があればOKです。

他にも、より環境によい電気を選ぶには多くのポイント(排出係数や、非化石証書の種類など)を見る必要がありますが、まずは上記の2つを押さえてみてください!

エナ:なるほど。電気の由来と、再エネの割合ですね!

イチカワ:ここまで、大丈夫ですか?(笑)

エナ:はい、なんとか!

© Adam Oswell / WWF

イチカワ:ちなみに、同じ電力会社でも、提供するプランによって、再生可能エネルギーの割合が違ったりします。これも、ちゃんと情報開示している会社であれば、分かりやすく書いてくれていますよ。

また、東京都や神奈川県などが9月30日までの期間限定で、自然の電気を共同購入するキャンペーンを実施しています。参加する人が集まるほど電気料金がお得になることもメリットですが、キャンペーン事務局が電力会社を選んで提案してくれるのもポイントです。

エナ:なるほど!電力会社を比較する時間がなかなかとれない人にもいいですね。ところでもうひとつ、とっても気になっていることがあるんです。

イチカワ:はい。なんでしょうか?

エナ:気候変動という大きな問題に対して、自分ひとりのアクションが小さく思えてしまいます。私の行動って、効果があるんでしょうか?

イチカワ:家庭から出るCO2の約半分は、電気の使用によるものです*2。電力会社の切り替えは、個人ができるアクションとしては、貢献度が高いと考えています。

家庭からの二酸化炭素排出量(世帯当たり、燃料種別、2018年度)<br>出典)温室効果ガスインベントリオフィス/全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト

家庭からの二酸化炭素排出量(世帯当たり、燃料種別、2018年度)
出典)温室効果ガスインベントリオフィス/全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト

エナ:私はこの春、上京して大学生になりましたが、コロナ禍で2回しかキャンパスに行けていません。授業はオンラインで受けています。家にいる時間が長くなったことで、照明はもちろん、夏にはエアコンの稼働時間も増えました。この電力が化石燃料由来だと、ますます温暖化が進んでしまうんじゃ・・と思ったりします。

イチカワ:そうですね。エネルギーの中でCO2排出がもっとも多いのが石炭火力発電ですので、世界では脱石炭の流れが加速しています。遅れをとっている日本ですが、CO2を出さない再エネを選ぶ家庭が増えることで、石炭火力発電をしている電力会社へのプレッシャーにもなると考えています!

© Edward Parker / WWF

気候変動という巨人に対して、一家庭の切り替えの力は小さく感じても、それは「脱炭素」の未来への明確なメッセージを持った「投票」です。ぜひトライしてください!

エナ:イチカワさん、ありがとうございました!


「未来47景」キャンペーンサイトでは、みなさんの意思表明をお待ちしています。地元の未来の気候危機を知ったあとは、取り組みたいアクションを選んで「実行する」ボタンのクリックをお願いいたします!

次回は、「家でも外でも、食べ残しをしない工夫を」編。公開するとSNSでお知らせしますので、WWF公式Twitter/Facebookをフォローしてくださいね!

シリーズ一覧

参考文献
*1 https://www.dentsu.co.jp/news/release/2019/1220-009985.html
*2 https://www.jccca.org/chart/chart04_06.html

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