インドシナトラのグッド・ニュース!


先日、タイ東部の森で、インドシナトラの繁殖が確認された、というニュースが大きく報道されました。

その内容によれば、現地を調査した保護団体の関係者は「奇跡的だ」と語ったとのことですが、本当にこれは大変なニュースでした。

インドシナトラは9亜種が知られるトラの亜種の1つで、かつてはインドシナ半島に広く分布していました。

しかし、ベトナムやラオス、カンボジアなどでは、ここ10年ほどの経済成長に伴い、急激に進んだ森林破壊のあおりを受け、繁殖個体は絶滅。

密猟も危機に拍車をかけ、もはやトラの生息が十分に可能な場所は、タイ・ミャンマー国境周辺のまとまった森以外には、スポット的に森が残る保護区3、4か所に限られると考えられていたのです。

そんな状況の中での、本当に貴重な朗報でした。

しかし、今回確認された繁殖個体群が、すでに絶滅寸前の危機にあることは明白です。

インドシナ半島に分布するトラの亜種インドシナトラ。タイ国内の推定個体数は200頭前後で、ベトナムなどはほぼ絶滅、ミャンマーは詳しい調査が行なわれていません。

さらに、インドシナトラについては、生態や行動圏の広さなどが詳しくわかっていません。

インドシナ半島では20世紀後半の内戦と、その後の政治的な混乱を引きずり、野生動物の保護調査が十分にできない状況が続いてきたためです。

そして近年は、経済の成長が大きく進んだ一方、自然に配慮した開発や、環境の保全といった取り組みが遅れをとってきました。

今、残されているインドシナ半島の自然の危機は、今食い止めなければなりません。

タイ西部、ミャンマーとの国境地帯に残る森。インドシナトラにとっては、残された数少ない希望の森です。

この地域に産するゴムやパーム油などの産品を、日本が多く輸入していることも忘れずに、私たちも今後、インドシナトラが繁殖するもう一つの場所、タイ西部の国境に面したミャンマー側の森で、森とトラの保全活動を支援してゆきたいと考えています。

続報が得られましたら、またお知らせいたしますので、ぜひ応援をよろしくお願いいたします!
(自然保護室 川江)

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自然保護室長(森林・野生生物・マーケット・フード・コンサベーションコミュニケーション)、TRAFFICジャパンオフィス代表
川江 心一

京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科修士課程修了。
小学生の頃に子供向け科学雑誌の熱帯雨林特集に惹きつけられて以来30年間、夢は熱帯雨林保全に携わること。大学では、森林保全と地域住民の生計の両立を研究するため、インドネシアやラオスに長期滞在。前職でアフリカの農業開発などに携わった後、2013年にWWFに入局。WWFでは、長年の夢であった東南アジアの森林保全プロジェクトを担当し、その後持続可能な天然ゴムの生産・利用に関わる企業との対話も実施。2020年より現職。

小学生の頃に科学雑誌で読んだ熱帯雨林に惹きつけられると同時に、森林破壊のニュースを知り「なんとかしなきゃ!」と思う。以来、海外で熱帯林保全の仕事に携わるのが夢でしたが、大学では残念ながら森林学科に入れず・・。その後、紆余曲折を経て、30半ばにして目指す仕事にたどり着きました。今でもプロジェクトのフィールドに出ている時が一番楽しい。

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環境保全団体です。

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