パーム油を考える!
2019/02/25
先日、東京お台場にある日本科学未来館の科学コミュニケーターの方々と勉強会を行ないました。
科学コミュニケーターのみなさんは、科学的な根拠に基づいた情報を、一般の人向けて分かりやすく知らせるエキスパートです。
一方、私はWWFの森林担当として、どうしたら保全現場の情報を上手に伝えられるか、いつも模索しています。
今回は立場や手法を超えて、「パーム油」という植物油の生産過程における問題をテーマに議論しました。

閉館後のスタッフのみなさんに向けたレクチャーと、ディスカッションという2部構成の勉強会でした。
パーム油は、加工食品をはじめ、洗剤やシャンプー、石けんや化粧品などにも使われている、日本の暮らしにも身近な油です。
パーム油が生産される上で起きる森林破壊や児童労働などは、今欧米を中心に関心が高まっているトピックのひとつです。

パーム油は、植物油の中でも桁外れに生産性が高いため、使うのを止めると、その代替油脂には更なる耕作面積が必要になり、新たな森林破壊に繋がることが危ぶまれます。WWFではトラなどの野生動物のすむ森を切り拓くことなく生産されたRSPOのパーム油を推奨しています。
一方、日本ではパーム油の存在を知らない人のほうが多い状況。
この差は一体?とディスカッションは白熱しました。
ポイントとなったのは、価値観の違いです。
日本では商品の価格、味、安全性などが重視され、企業は一般的に信頼のおける存在とされる傾向があるかと思います。
一方欧米では、生産過程における労働者の環境や、自然環境にも過度な負担がかけられていないか配慮する価値観をもつ人が多く、企業を信頼していない人も多いことから、第三者による認証システムで信頼性を確保していると考えられています。

欧米では、動物園などの身近な公共施設でも、野生動物のすむ環境などに関するユニークな企画が多く実施されています。オーストラリアのメルボルン動物園で実施された「ズーパーマーケット」の様子。選んだ商品に、パーム油が含まれているか、RSPO認証油が使用されているかを教えてくれる。
それでも、パーム油の問題を「理解」し「社会を変える」課題は、日本も欧米も同じ。そんな視点のもと、いろいろな意見が交わされました。
パーム油の生産過程の問題の新しい「伝え方」について、科学コミュニケーターのみなさんとも引き続き一緒に考え、一人でも多くの方に関心を寄せてもらうところから保全につなげていきたいと思います。

本科学未来館では、これまで花王株式会社と共に「石けん」という切り口からパーム油に関するワークショップや、宇宙飛行士の方を招いたトークイベントなどでもパーム油の問題に関したイベントが実施されています。

欧州で販売されているRSPOマークのついた商品。日本でも、RSPOに加盟する企業は120社を越えました。洗剤や石鹸などマークがついた商品は、少しずつ増えてきています。このマークを選ぶことで、日本でも生産現場の森林保全を応援することが出来ます。