マグロの国際会議に参加してきました


マグロ担当の植松です。
最近、太平洋クロマグロ(本マグロ)の資源減少のニュースが飛び交っています。

ニュースでは、「本マグロの値段が上がる」、「食べられなくなるかも」、「国民の生活に影響が!!」と報道されています。

しかし、日本人の食べるマグロ類のうち、クロマグロの消費はわずか1割程度。一番影響があるのは、実はクロマグロではなく、消費の6割以上をまかなっているメバチ、キハダといったマグロの資源減少なのです。

日本近海を含めた中西部太平洋に産するこうしたマグロの資源管理は、WCPFCという国際機関で管理されています。

その科学委員会が、減少しているキハダ、メバチについて「2011年までに漁獲量・努力量を30%削減すること」という勧告を各国にしたのが今から5年前。ですが、日本を除く各国では未だにこの削減が達成されていません。

これではいけないと、臨時のWCPFCの作業部会が、8月の終わりに東京で開かれました。

その前日、3NGO(WWF・グリーンピース・Pew財団)共同で記者会見を開き、予防原則と科学的根拠に基づいた資源管理を強化するよう求めました。

作業部会当日、オブザーバーとして会議への出席が認められているWWFからは、代表として私が出席。会議の場でも、前日と同様、3NGO合同の声明を発表し、速やかに科学委員会の勧告を達成するよう求めました。

しかし、各国の利害が絡み、会議は難航。残念ながら、今回は各国の合意が得られませんでした。それでも、目標を達成した日本が率先して正論で会議に臨み交渉する姿は、たのもしい限りでした。

久々の国際会議への、しかも一人での出席でとても疲れましたが、お刺身大好きな日本人の一人として、早く適切な資源の管理が実現するように、今後も頑張っていこうと思います。

★昨日から福岡でWCPFCのまた別の会議(北小委員会)が始まりました。年末に開かれる年次総会に向けて議論が進む見込みです。進展につきましては、またあらためてお知らせしたいと思います。

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自然保護室(海洋水産 IUU漁業対策マネージャー、水産資源管理マネージャー)
植松 周平

農学博士。東京大学大学院農学生命科学研究科において水域保全学に関する博士号を取得。その後、経営コンサルティング会社を経て、国際水産資源研究所(現 水産研究・教育機構)に入所。太平洋クロマグロの資源研究を行う。2013年よりWWFジャパンで勤務し、マグロ、カツオ、サンマといった国際水産資源の保全やIUU漁業対策に関わる業務に加え、事業戦略立案や各種業務改善等の社内コンサルタント業務にも従事。2021年には水産庁水産流通適正化法検討委員を務めた。

子供の頃から、田んぼや川、海で遊ぶことが大好きでした。高校生の時、幼少時の遊び場の環境破壊を目の当たりにし、「なんとかせねば」と思い環境保全の道を目指すことに。環境保全とは、生き物だけでなく、人々の生活も守ること。それは、とても難しいことだけど必要なことです。海洋保全研究者だけでなく、経営コンサルタントの経験も活かし、子供たちの未来のために、皆様と一緒に頑張っていきたいです。

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環境保全団体です。

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