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WCPFC2020閉幕 カツオ・メバチ・キハダの漁獲戦略に関する合意は再度延期に

この記事のポイント
2020年12月7日から7日間にわたりオンラインで開催されていた中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)の年次会合が閉幕しました。新型コロナウイルス感染症の影響によるオンラインでの開催という事情もあり、資源の枯渇が懸念されるカツオ、メバチ、キハダについての漁獲戦略に関する合意は再度延期に。また、マグロ漁船における奴隷労働を防ぐ仕組みの導入についても合意されず、太平洋のマグロ類の未来に懸念を残す結果となりました。

カツオ・メバチ・キハダの目標管理基準値についての合意は再度先送り

2020年12月7日から15日まで、オンラインにて中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)の第17回年次会合が開催されました。

26の加盟国・地域が参加したこの会議では、減少が懸念されるマグロ類を中心とした漁業資源の保全と利用について話し合いが行なわれました。

今回2020年の年次会合では、2019年では合意されなかった、カツオ、メバチ、キハダの中長期的な資源回復目標(目標管理基準値)について決議する予定でした。
目標管理基準値とは、対象ごとの漁獲量やルールを定める漁獲戦略のひとつで、持続可能性を維持しつつ漁獲量を最大化するための漁獲枠のことです。

カツオは、お刺身やタタキで食されるほか、かつお節の原材料として用いられており、和食にとって大変重要な魚の一種です。

メバチも日本人が刺し身として最も消費しているマグロですが、どちらもその多くは中西部太平洋で獲られたものが、日本の食卓にあがっています。

近年、カツオは、世界中のツナ缶需要に答えるべく、発展途上国を中心に漁獲量が増大。資源量は過去最低レベルまで減少しています。

また、メバチの幼魚は、魚群集魚装置(FADs)を用いたカツオまき網漁の際に生じる「混獲」で多く漁獲されており、資源への悪影響が指摘されています。

カツオ、メバチの資源状態は、今のところ枯渇状態にはないとされていますが、乱獲に陥ることを防ぐ上でも、目標管理基準値を含めた漁獲制御ルールに基づく管理が必要とされています。

そこでWWFは、年次会合に際して、加盟各国に対し、要望書を提出。

特にカツオに対しては、日本企業との連名で、持続可能な資源管理を求めました。

また、会議にもオブザーバーとして参加し、上記の必要性を訴えるとともに議論の行方を見守りました。

しかし、初のオンライン会議となった、今回2020年の総会では、加盟国間で十分な議論ができず、2019年に続き、管理基準値を含めた資源管理措置は合意されませんでした。

一方、これ以上、合意できていない状況が続かないよう、新型コロナウイルスの影響が続く中でも十分な議論を行なうため、ワークショップを最低2回実施することが決まりました。

マグロについては、世界の海域ごとに、マグロの資源管理を目的とした5つの国際管理機関があり、資源管理のためのルールを定めています。

マグロについては、世界の海域ごとに、マグロの資源管理を目的とした5つの国際管理機関があり、資源管理のためのルールを定めています。

マグロ漁船の人権問題対策導入についても見送り

また、今回の総会では、同じく議論の不足を理由に、マグロ漁に従事する労働者の人権保護に向けた、有効な措置の導入も見送られました。

この問題については、2020年8月には、海外のマグロ漁船において、インドネシア人の船員が奴隷労働を強いられ、死亡した結果、遺体を海に投棄されたという衝撃的な報道がありました。

さらに、実際に漁船に乗船し、混獲などの情報を収集する「オブザーバー」が殺害されるという事件もあとを絶たず、マグロ漁における人権問題は、国際的な問題にもなっています。

そのような状況に対処すべく、WWFは要望書を提出し、船員の安全と人権を確保するための措置の早期導入を訴えましたが、この件に関する国際合意も先延ばしとなりました。

© James Morgan / WWF-US

コロナウイルス感染症下での課題解決方法を模索すべき

今回の年次会合の結果に対し、オブザーバーとして参加したWWFジャパンのサイエンス&テクノロジー担当の植松周平は、次のように述べました。

「今回の年次会合は、コロナウイルス感染症下での初のオンライン開催ということもあり、重要議題に対し十分な議論が出来なかったことは大変残念です。

しかし、カツオ・メバチ・キハダの管理措置については、次回の年次会合までに議論を深めるため、最重要課題としてワークショップを最低2回開催することになりました。

これは、コロナウイルス感染症の影響下にあっても、次回は必ず合意すべき、という加盟各国による強い決意の現れでもあり、評価することが出来ます。

一方、船員、オブザーバーの人権問題解決についての議論は未だ不透明です。

水産物輸入大国の日本は、IUU(違法・無報告・無規制)漁業由来の水産物を多く輸入しているリスクが高いと言われています。こうしたIUU漁業は、船員やオブザーバーの人権問題の温床だと考えられています。

日本のマーケットも、奴隷労働等の人権問題に加担することがないよう、漁獲海域から最終消費地までのフルトレーサビリティの導入を加速させ、取引履歴の把握とリスクの軽減を図るべきです」。

新型コロナウイルス感染症により、一時は開催自体も危ぶまれた2020年のWCPFC年次会合は、無事オンラインで開催された一方、あまり進展のない結果に終わりました。

解決すべき山積みの課題を前に、日本をはじめとするWCPFC加盟各国はどのような対応をとっていくのか、事前の議論などを密に行なうなど最大限の工夫をしながら、マグロ類の資源管理を加速させていく必要があります。

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