© Brian J. Skerry / National Geographic Stock / WWF

日本初 日本船籍のカツオ・キハダまき網漁船がMSC認証取

この記事のポイント
2024年2月15日、日本の漁業会社2社から成るグループが、カツオ・キハダのまき網漁業で、MSC漁業認証を取得しました。MSC認証は「海のエコラベル」とも呼ばれる、サステナブルな漁業と水産物の国際認証です。日本船籍のまき網漁船による認証取得は、日本で初めてのことです。世界有数のカツオ・キハダの漁獲国かつ消費国である日本で、持続可能なマグロ漁業が確実に広がっています。
目次

和食にも必須 カツオやキハダの現状と課題

ユネスコの無形文化遺産に登録された「和食」。その和食にとって、マグロの一種である、カツオやキハダは必要不可欠の存在です。

カツオは刺身、タタキや出汁のかつお節の原材料。キハダは刺し身やツナ缶材料として用いられています。

日本による消費量も多く、カツオにいたっては世界の約10分の1を日本が消費しています。

また、海外では、カツオ、キハダは主にツナ缶材料として使用され、それらの漁獲量は急増しています。

(関係資料)カツオという生物~その特徴と漁獲・消費量~
(関係資料)マグロという生物

世界最大のカツオ・キハダの漁場である太平洋でも漁獲量は急増。その結果、資源量は現在、過去最低レベルまで減少しており、カツオ、キハダ資源をとりつくさないような漁業への転換が求められています。

厳格な管理が必要不可欠なまき網漁業

カツオやキハダを漁獲する方法はさまざまですが、主に一本釣りやはえ縄といった針を用いた方法と、まき網といった網を用いた方法があります。

(関係資料)漁法の詳しい解説についてはこちら

針を用いた漁法は、一度にたくさん漁獲できないものの、魚体を傷つけることを防ぐことができることから、高品質で、刺し身材料に適した漁法となります。

一本釣りはカツオの漁法として有名ですが、漁獲時にカツオ以外の海鳥やウミガメを誤って獲ってしまう「混獲」が発生しづらく、最も環境負荷が少ない漁法の一つにあげられ、日本でもすでにカツオ一本釣り漁業でMSC認証が取得されています。

(関係資料)混獲について

網を使った漁法である、まき網漁は、魚の群れを一網打尽にすることができるため、効率よく一度にたくさん漁獲することができます。

カツオ、キハダのまき網漁法は、自然に発生する魚の群れを漁獲する素群れまき網と、浮き漁礁(FADs)を用いて魚を集めたのち、それを漁獲するFADsまき網に分類されます。

世界では、より高効率のFADsまき網漁が主流ですが、効率よく一度にたくさん漁獲できるということは、しっかりとした管理をしないと乱獲につながってしまうリスクが高いとも言えます。

加えてFADsまき網漁は、キハダ、メバチの幼魚を混獲してしまうことが多くあるため、環境負荷を低減できるような取り組みが求められています。

未来にカツオ・キハダ資源を残すため 日本の漁業会社がとったアクションとは

WWFジャパンは、世界的なカツオ・キハダの資源減少をうけ、海洋生態系の保全活動の一環として、持続可能なカツオ・キハダ漁業を日本で実現するためのプロジェクトを2020年より開始。

ウェビナーやラウンドテーブルなどを通じて、持続可能な漁業の必要性を漁業関係者や水産会社など、日本の重要なステークホルダーに働きかけを行ってきました。

その結果、2021年に、今回の明豊漁業株式会社ならびに共和水産株式会社を含む国内企業3社と、MSC認証取得を目指すことに合意。WWFジャパンのサポートの下、予備審査を行い、その結果に基づき、審査に必要な情報の収集とオペレーションの改善を行ってきました。

2023年2月、まき網漁船を保有する明豊漁業株式会社、共和水産株式会社が共同で、サステナブルな漁業の国際認証である「MSC認証」の本審査を受審。

その結果、2024年2月15日、無事に日本漁船で初の、カツオ・キハダのまき網漁業のMSC認証の対象となりました。
なお、今回認証された漁船による漁獲量(2021年)は、日本の漁獲量に対しカツオでは約14%(約15,400トン)、キハダでは約10%(約4,100トン)を占めると想定されます*。
*明豊漁業株式会社・共和水産株式会社の漁獲量(MSC Track a Fisheryより)、日本全体の漁獲量(FAO Fishstatより)を用いてWWFジャパンが漁獲割合を算出

(関係資料)海を守るためのエコラベル

また両社は、世界最大の熱帯マグロ産地である中西部太平洋のマグロ漁業を管理する国際機関のWCPFC(中西部太平洋まぐろ類委員会)に対し、持続可能な熱帯マグロ漁業管理強化を訴える要望書を、WWFを含むその他ステークホルダーとともに2020年より毎年提出。国際的な漁業管理強化に向けた働きかけにも取り組んでいます。

(関係資料)持続可能な熱帯マグロ漁業実現のため、WCPFCに対し17の日本企業・団体が連名で要望書を提出

上段左から東海漁業株式会社(共和水産子会社)の第88光洋丸、共和水産株式会社の第78光洋丸 © 共和水産株式会社。下段左から明豊漁業株式会社の第36昇喜丸、第88明豊丸© 明豊漁業株式会社。

持続可能な社会のため 企業間連携が加速

普段はライバル関係にもある2社は今回、持続可能な漁業実現に向けて、共同でMSC認証取得にチャレンジし、見事にそれを実現しました。

これは、日本でのMSC認証では初めてのことであり、こうした取り組みは、SDGs(持続可能な開発目標)の「12. つくる責任つかう責任」や「14. 海の豊かさを守ろう」や「17.パートナーシップで目標を達成しよう」にも通じる、SDGsへの貢献手段を明らかにしたものでもあります。

2021年にも、企業間連携により、世界初のMSCかつお削り節の提供が開始されましたが、持続可能な社会の実現という大きな課題に対し、日本の水産業界でも、着実に企業連携が加速していると言えます。

(関連資料)世界初 MSC認証のかつお削りぶしが和食店きじまで提供開始

持続可能な未来のため、日本の消費者の選択がカギ

サステナビリティを追求する先進的な漁業者は、持続可能な未来のため、自らの多くの資金や労力をかけ、MSC認証を取得するなどのアクションを起こしています。

そして、そうした取り組みを、支えることができるのは、一般の消費者です。

例えば、スーパーやレストランでMSC認証の製品を優先的に選ぶことは、サステナブルな漁業に取り組む人たちを支える何よりの力になります。

また、MSC認証製品がお店になかった場合は、お客様カードなどで要望すれば、商品やサービスを提供する側にも、こうしたサステナブルな水産物の需要やその必要性を気づかせ、流通を促進することにつながります。

今回の新たなマグロ類のMSC認証の取得は、こうした水産物を消費者が選ぶことのできる可能性を、より大きく広げる一つの機会としても、大きな意味を持つものといえるでしょう。

持続可能な水産物を美味しくいただき、先進的な漁業者の方々のアクションを応援することが、持続可能な未来実現のカギとなります。

WWFは今後も、サステナブルな漁業を促進し、海の環境と漁業の未来を守っていくため、先駆的な企業や漁業者への支援や、MSC認証の広がりをめざした活動に取り組んでいきます。

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