世界初!日本のブリ養殖がASC認証を取得


2017年12月16日、黒瀬水産株式会社(宮崎県)がブリ類としては世界初のASC(水産養殖管理協議会)認証を取得しました。ASCは、海の環境保全に配慮して行なわれる養殖業を認証する、国際的な制度。日本の養殖魚生産量の6割を占め、さまざまな料理に使われる人気魚種のひとつであるブリ類の認証が、今回初めて取得されたことをきっかけとして、今後の国内でのASC認証の普及拡大が期待されます。

日本を代表する養殖魚ブリとASC認証

ブリ類(ブリ、カンパチなど)は、国内で生産される養殖魚の約6割を占め、世界のブリ類の養殖生産量の約9割に相当する、日本を代表する養殖魚です。

こうした規模の大きな養殖業が、環境に配慮した取り組みを導入することは、日本近海の海の自然を守っていく上で、非常に重要です。

WWFはその手段の一つとして、環境配慮型の養殖業を認証する国際的な認証「ASC認証」の導入を推奨しています。

このASC認証を取得するためには、排泄物などによる汚染から漁場の環境を良好に保つことはもちろん、養殖魚の餌となるカタクチイワシなどが、自然界の海で乱獲されるのを防ぐため、それらの資源状態や使用率についての条件を満たすこと、また適切な病気の管理や、そこで働く労働者の人権と地域社会への配慮などが求められます。

日本におけるブリ養殖の歴史は古くからありますが、生け簀で育てる魚は、自然の海から獲ってきた天然の稚魚に多くを依存しているほか、サーモンのように種苗の改良が進んでいないこともあり、飼料原料や魚病管理などの点で、環境への配慮を十分に行なうことが難しいとされてきました。

このため、実際、国際基準であるASCの基準を満たす形で養殖業を行なうためには、大きな改善が必要とされていたのです。

黒瀬水産養殖いけす

黒瀬ぶり

日本が貢献したグローバル・スタンダード作り

そこで、WWFジャパンでは、日本の養殖業の中でも特に影響力の大きなこのブリ類の養殖でも、ASC認証の取得が実現できるよう、2009年から、ブリ類の審査基準となるASCブリ・スギ類基準の策定を開始しました。

ASC設立当初、12の魚種について、8つの基準を設けることが予定されていましたが、ブリ類の養殖に関しては、策定作業が大幅に遅れていました。

基準の策定は、ASCやWWFが直接行なうのではなく、ブリの養殖に携わる世界中の関係者が集まって開催する基準策定会議(アクアカルチャー・ダイアログ)の場で、進められました。

これは、ASCが現場に則した実用性を担保しつつ、意味のある改善を実現する基準を策定するために、どの魚種においても共通して行なっている取り組みです。

しかし、世界のブリ類養殖の9割を日本が占めるにも関わらず、このブリ類の基準策定会議は当初、海外で開催されたいたため、日本からの情報提供や議論はあまり活発に行なわれていませんでした。

そこでWWFジャパンでは、2013年にアクアカルチャー・ダイアログを初めて日本に誘致し、東京と鹿児島の2回にわたって、会合の開催を支援。

その結果、基準策定の重要な議論に多数の日本人関係者が参加し、意見交換や情報提供、パイロット監査(注)などが進められました。

ASC基準に関するセミナー(2016年8月18日 東京海洋大学)

持続可能な養殖業の証であるASC認証のマーク

第3回ブリ・スギ類養殖管理検討会(2013年2月12日、13日 東京海洋大)

当初、日本国内のブリ生産の実態と、環境への強い配慮を踏まえて作られた基準草案の間には、大きな開きがありましたが、さまざまな取り組みを重ねる中、徐々にそのギャップは縮小されるとともに、ASCが目指す「責任ある養殖」についての理解が関係者の間で浸透していきました。

そして、会議後も続けられた関係者間のやり取りを経て、ASCブリ・スギ類基準と監査マニュアルが完成。

2016年10月に、ASCより正式に発行されたのです。

策定開始から実に7年の歳月を要する取り組みとなりました。

このように時間がかかった理由はASC基準の策定がISEAL(社会環境基準設定のための適正実施規範)に準拠して、さまざまな関係者から意見聴取を行ない、策定のプロセスの透明性を重視しているためです。

これが、ASC認証が世界的に信頼性の高い認証システムと表されるゆえんの一つなのです。

今後求められる対応とは

こうした経緯を経て2017年12月16日、宮崎県に拠点を置く黒瀬水産株式会社(以下、黒瀬水産)が、世界で初となるブリ類でのASC認証を取得しました。

今回の認証取得にあたり、黒瀬水産株式会社の山瀬茂継代表取締役社長は、「このたびASC認証を取得できたことを誇りに思うとともに、いろいろとご協力いただいた関係者の皆様に深く感謝申し上げます。この認証への取り組みは広がりを見せており、日本の養殖も次世代に責任を持つ持続可能な産業へ進化する時代に入ってきているものと喜ばしく感じております」とコメントしています。

ASC(養殖管理協議会)のクリス・ニネス最高責任者は、「ASC認証を取得する養殖場は年々拡大していますが、このたび黒瀬水産株式会社がその一員となられたことを大変喜ばしく思います。ASC基準を満たした世界初のブリ類養殖場となるにあたり、ご尽力されたすべての関係者の方々にお祝いを申し上げます」とコメントを寄せました。

また今年9月より活動を開始しているASCジャパンの山本光治ジェネラルマネージャーも「今回の黒瀬水産のASCブリ養殖認証の取得は大きな意義があります。ASC認証を取得したブリが市場に出ることにより国産のASC水産物をさらに増やす事となります。今回の認証取得に伴い養殖場が資源環境と地域社会にさらなる貢献をして、その商品が市場で評価されることを期待しております」とコメントを寄せました。

山瀬茂継氏

黒瀬ぶりパッケージ

そして、今回のブリ・スギ類では世界初となるASC認証の誕生にあたって、2013~2015年にかけてブリ・スギ類アクアカルチャー・ダイアログの運営委員を務めたWWFジャパン海洋水産グループ長の山内愛子は以下のようにコメントしています。

「黒瀬水産の関係者の皆さまには、ASC認証取得へと至りましたこと、心より敬意を表し、お慶び申し上げます。

ASC基準の策定にかかわる中で、与えられた条件が日本の生産者にとって決して簡単ではないチャレンジであり、大幅な改善が必要となったことを理解しています。

ブリという日本の食卓にとって欠かせない魚種でのASC認証が誕生したことで、これをきっかけにASCが目指す責任ある養殖が生産現場から消費の現場までさらに広がるものと期待しています」

現在のASCブリ・スギ類基準と国内のブリ類の一般的な生産工程との間には、まだ解決すべき課題も残されており、これらを解決しながら、ASC認証ブリの出荷量を安定させることが求められています。

そのためには、養殖業者単独の取り組みだけでは困難なことも多いため、飼料メーカーや、水産医薬品メーカー、さらには研究機関や行政機関など、さまざまな関係団体の協力が必要とされています。

さらに、市場側の協力、受け入れ態勢も重要です。

ASC認証を受けた水産物の加工・流通・販売を行なう企業の数は増加傾向にありますが、ASC認証製品がより日本の食卓に広がるためには、さらなる認証取得の拡大と、何よりも消費者側の認知や需要が必要不可欠です。

日本にとってなじみの深いブリ類でのASC認証誕生。

WWFジャパンは今後さらに、「責任ある養殖」に取り組む生産者のチャレンジを後押ししつつ、消費者にも広くASC認証製品を認知、選択してもらえる取り組みを行なってゆきます。
注:パイロット監査とは、ASCが基準を正式発行する前に基準の審査手法を定めたマニュアルの実用性を検証するもので、WWFジャパンの支援のもと、日本からは生産者5団体ならびに認証機関3者が参加し、ASCに対して意見を提出しています。

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