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ダスグプタ教授が示す「生物多様性の経済学:ダスグプタレビュー」3つのポイント

この記事のポイント
2021年10月に中国(昆明)で開催される生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)では、ポスト2020国際枠組みが採択される予定です。内容の議論が進む中、2021年2月に「生物多様性の経済学:ダスグプタレビュー」が発表されました。このたび、いま最も注目されている報告書のひとつである本レビュー要約版を和訳作成しました。
目次

2021年10月に中国(昆明)で開催予定の生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)では、ポスト2020年生物多様性国際枠組みが採択されます。

現在は、2020年8月に発表された改訂ゼロドラフトをもとに、持続可能な生産や消費、経済のしくみ変革などが検討されています。

この時期に呼応する形で、2021年2月に英国財務省は、生物多様性と経済の関係を分析した英ケンブリッジ大学ダスグプタ名誉教授による独立した報告書を発表しました。

なにが新しいのか

今回、ダスグプタ教授は、経済学の標準的な近代経済学の枠組みにいながら、その考え方だけでは不十分と指摘しました。

経済学の専門家によると、主流派経済学の立場から、地球の供給能力には限界があることを重視し、エコロジー経済学の考え方を中心にしたことが新しい点です。

この経済学の大きな転換点になるとみられる本レビューを国内の多くの人たちが知ることは、国内での生物多様性と経済の関係を見直す機会になると考えます。

そこで、このたびWWFジャパンでは、同志社大学教授和田喜彦氏、国立環境研究所山口氏に監修ならびに多大なご尽力をいただき、要約版の和訳を作成しました。

「生物多様性の経済学:ダスグプタレビュー」和訳

人間は自然の内部に組み込まれている

本レビューでは、「人間は自然の外部にあるのではなく、人間も経済も、自然の内部に組み込まれている」という基本的な事実を理解し、受け入れることが解決に向けた第一歩である、としています。

これまでは、自然が財・サービスを供給する能力には限界があるにもかかわらず、人間は、技術的な進歩によって、自然の限界を克服することが可能であるように考えてきました。
人間は自然の「外」の存在であるかのような社会を形成しています。

持続可能な社会にするためには、地球が供給する範囲内で、経済成長を測る指標を見直し、金融の改革が必要であると説いています。

さらに、自然のなかにある経済のしくみとは具体的にどのようなことか、各地の事例や手法などを紹介しています。

3つの重要ポイント

レビューでは次の3点が重要とされています。

  1. 人間の需要が地球の供給能力を上回らないこと 環境指標エコロジカル・フットプリントでは、人間の需要が地球の供給能力を70%超過している。
  2. 経済的成功の基準を変化させ、自然資本を含む「包括的な富」を指標のひとつにすること。 1992~2014年の間に、人工資本は2倍、人的資本は13%増、自然資本は40%減少している。
  3. 金融と教育のシステムを変革する   金融や教育の制度になかに自然を組み込む。

図 1人当たりの世界の富 (出典:ダスグプタ, 2021)

G7首脳会合でも歓迎

2021年6月にイギリスの(コーンウォール)で開催されたG7首脳会合では、2030年までに生物多様性の減少を回復に反転させることを約束した「ネイチャー・コンパクト(自然協約)」が発表されました。

自然資源の持続可能な利用とともに、自然に投資しネイチャーポジティブな経済の促進を表明しています。

さらに、「生物多様性の経済学については、ダスグプタレビューとOECD政策を歓迎する」と記載されています。

また、イギリスは、G7のあと、「ダスグプタレビュー-政府の対応策」を発表しました。

ここでは、生物多様性を経済や財務の意思決定に組み込む「ネイチャー・ポジティブ・エコノミー」を表明しています。

具体的な実施策はこれからですが、イギリスが経済のしくみをかえるイニシアチブをとる方向に進んでいます。

海外の自然資源に依存している日本は、世界の生物多様性保全に貢献する責任があります。

さらに、日本はG7の一員として「自然協約」に参加し、「自然に投資し、ネイチャーポジティブな経済を促進する」ことを約束しています。

欧州主導で加速する資金の動きや金融のしくみ変革に追いつき、国内で的確に実施していくためには、政治だけでなくビジネス、投資家たちの積極的な関わりが求められます。

また、生物多様性の経済を進めていくには、環境省だけでなく、財務省や経済産業省などを含めたオール政府で取り組む必要があります。

資料

「生物多様性の経済学:ダスグプタレビュー」和訳

The Economics of Biodiversity: The Dasgupta Review 要約版原文(Abridged version)

本文(Full report)

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