【第1部:省エネルギー編】 第3章 WWFシナリオの内容


脱炭素社会に向けた
エネルギーシナリオ提案

省エネシナリオ:第3章 WWFシナリオの内容

3.1 WWFシナリオのエネルギー需要の算出

2020、2030、2050年におけるWWFシナリオのエネルギー需要は以下のように算出した。

各最終用途のエネルギー需要
=2008年の各最終用途エネルギー需要 × 各部門の活動度の変化×省エネルギーの効率向上

各最終用途のエネルギー需要は、2008年の各部門のエネルギー需要を出発点にして、これに各年における各最終用途の活動度の変化をかけ、さらに前章で検討した省エネルギーによる効率向上をかけて求めた。

各エネルギー最終用途の活動度は、人口、世帯数、実質GDP、材料資源指数を、2008年を起点とする比で表わし、これを利用して計算している。材料資源指数は、粗鋼、エチレン、セメント、紙・板紙の生産量を合計した数値を、2008年を1として指数化したものである。それぞれのエネルギー最終用途に最も関係が深いと考えられる指数を利用して将来の活動度を表現するようにした。

graf8.jpg
主要数値2008202020302050
人口(万人) 12,769 12,282 11,477 9,520
人口比(2008年比)   0.96 0.90 0.75
実質GDP(2000年価格) 544.1 656.8 730.4 850.6
- 実質GDP比(2008年比)   1.21 1.34 1.56
世帯数(万世帯) 5,233 5,446 5,269 4,519
- 世帯数比(2008年比)   1.04 1.01 0.86
鉱工業生産指数(2005年=100) 94.9 123.6 135.9 155.6
- 粗鋼生産(万トン) 10,550 11,458 10,595 8,870
- エチレン生産(万トン) 652 705 687 571
- セメント生産(万トン) 6,590 5,564 5,315 4,169
- 紙・板紙生産(万トン) 2,879 3,085 3,058 2,827
材料資源指数(2008年比) 1.000 1.007 0.951 0.795

graf9.jpg

エネルギー最終用途活動量2050年の省エネルギーの内容
産業部門    
   - 非製造業 人口に比例 効率20%向上
   - 製造業    
  素材系
   ・鉄鋼
   ・化学
   ・窯業・土石
   ・紙パルプ

生産量に比例
生産量に比例
生産量に比例
生産量に比例

リサイクル率70%
効率30%向上
効率30%向上
効率30%向上
  非素材系
   ・食品・タバコ
   ・繊維
   ・非鉄金属
   ・金属機械
   ・その他

人口に比例
人口に比例
材料資源指数に比例
GDPに比例
材料資源指数に比例

効率30%向上
効率30%向上
効率20%向上
効率30%向上
効率30%向上
民生部門    
- 家庭部門
   ・冷房
   ・暖房
   ・給湯
   ・厨房用
   ・動力ほか

世帯数に比例
世帯数に比例
世帯数に比例
世帯数に比例
GDPに比例

断熱化、ヒートポンプのCOPが2倍
断熱化、ヒートポンプのCOPが2倍
ヒートポンプ給湯器のCOPが2倍
効率30%向上
22%は照明用で4分の1に低下、残りは効率50%向上
- 業務部門
   ・冷房

   ・暖房
   ・給湯
   ・厨房用
   ・動力ほか

GDPに比例

GDPに比例
人口に比例
人口に比例
GDPに比例

都市緑化で5%削減、クールビズで8%低減、断熱化、
ヒートポンプのCOPが2倍になる
ウォームビズで8%低減、断熱化、ヒートポンプのCOPが2倍
ヒートポンプ給湯器のCOPが2倍
効率30%向上
BEMSで10%削減、50%が照明用で1/4に低下、
残りは効率50%向上、TV会議用負荷増加
運輸部門    
- 旅客輸送
   ・自家用乗用車
   ・営業用乗用車
   ・バス
   ・鉄道
   ・海運
   ・航空

人口に比例
人口に比例
人口に比例
人口に比例
人口に比例
人口に比例

効率70%向上、エコドライブ、カーシェアリング
効率70%向上、エコドライブ、カーシェアリング
効率30%向上
効率20%向上
効率30%向上
10%がTV会議へ。効率30%向上
- 貨物輸送
   ・貨物自動車
   ・鉄道
   ・海運
   ・航空

材料資源指数に比例
材料資源指数に比例
材料資源指数に比例
GDPに比例

効率向上60%、エコドライブ、モーダルシフト15%
効率20%向上+モーダルシフト増加
効率30%向上
効率30%向上

たとえば、素材系の産業の活動度は、鉄鋼、化学、セメント、窯業・土石、紙パルプのそれぞれの年間生産量に比例するとした。非製造業は農林・水産業であり、その活動度は人口に比例するとした。素材系の産業のうち食品・タバコ、繊維も同様にその活動度は人口に比例するとした。金属機械は情報産業に関する成長分野であり、その活動度はGDPに比例するとした。

家庭部門の活動度は世帯数に比例するとしたが、動力他(電力)についてはGDPに比例するとしている。業務部門の活動度は、給湯と厨房については人口に比例するとしたが、そのほかはサービス産業の増大が生じるのでGDPに比例するとした。運輸部門については旅客輸送の活動度は、人口に比例し、貨物輸送の活動度は、材料資源指数に比例するものとした。各最終用途における活動度の変化を示す指標と2050年の省エネルギーの効率向上を、表3-2に示す。

省エネルギーについての取り扱いの例を挙げると以下のようになる。

3.2 乗用車の省エネルギー

自家用乗用車と営業用乗用車の省エネルギーについては、既存自動車の燃費の改善、軽量化を進めたエコカーPHV/EV/FCVの普及、エコドライブ、カーシェアリングを含めた扱いが必要である。そのため、表3-3に示すように、各年度における、それぞれの普及状況とその省エネルギー効果を見積もって合計のエネルギー消費を指数化して求めている。ここでは、既存自動車に対して普及してゆくエコカーの割合を考慮し、さらにすべての乗用車に対してエコドライブの普及とカーシェアリングの普及を当てはめている。2050年にはすべての乗用車が70%効率向上したエコカーになり、エコドライブが20%、カーシェアリングが5%普及して、2008年比で27.9%のエネルギー消費になる。

graf10.jpg
乗用車の省エネルギー2008202020302050
既存乗用車割合(%) 100 65 30 0
- その効率向上割合 0.8 0.8 0.8
- A:そのエネルギー消費 100 52.0 24.0 0.0
軽量化+PHV/EV/FCV普及率(%) 0 35 70 100
- その効率向上割合 0.5 0.4 0.35 0.3
- B:エネルギー消費 0 14 24.5 30
- A+B:エネルギー消費 100 66 48.5 30

エコドライブ普及率(%)

0

5

10

20
- そのエネルギー減少(15%) 0 0.75 1.5 3
カーシェアリング普及率(%) 0 1 2 5
- そのエネルギー減少(80%) 0 0.8 1.6 4
エコドライブ+カーシェアリングによるエネ削減 0 1.55 3.1 7
 C:エコドライブ+カーシェアによる省エネ割合 1 0.98 0.97 0.93

合計エネルギー消費(A+B)×C

100.0

65.0

47.0

27.9
2008年比 100 65.0 47.0 27.9

3.3 貨物自動車の省エネルギー

貨物自動車の場合には、2050年には、15%が鉄道へのモーダルシフト、既存自動車から効率が60%向上するエコカーへの移行、そして40%のエコドライブの普及が組み合わさっている。

表3-4に示すように、エコカーへの移行によってエネルギー消費は、2050年には、40%に低下してゆく。そして、エコドライブの普及により、6%のエネルギー消費の削減が生じ、2008年比では33.5%のエネルギー消費になる。

graf11.jpg
貨物自動車の省エネルギー2008202020302050
モーダルシフトによる削減(%) 1 5 10 15
A:モーダルシフト後のエネルギー消費 0.99 0.95 0.9 0.85

既存貨物自動車割合(%)

100

65

45

0
- その効率向上割合 1 0.9 0.8  
- B:そのエネルギー消費 100 59 38 0
軽量化+PHV/EV/FCV普及率(%) 0 35 55 100
- その効率向上割合 1 0.6 0.5 0.4
C:エネルギー消費 0 21 27.5 40
B+C:エネルギー消費 100 79.5 65.75 40

エコドライブ普及率(%)

0

10

20

40
- そのエネルギー減少(6%) 0 0.6 1.2 2.4
D:エコドライブによる省エネ割合 1 0.994 0.988 0.976

合計エネルギー消費 A×(B+C)×D

99.0

75.1

58.5

33.2
2008年比 100 75.8 59.1 33.5

3.4 WWFシナリオのエネルギー需要

以上のような計算によって、2020、2030、2050年におけるWWFシナリオのエネルギー消費量をもとめた。

表3-5には、その結果を取りまとめた概要を示している。表中には、各エネルギー部門のWWFシナリオのエネルギー需要について示したが、部門合計にはBAUシナリオの数値も参考に示している。

graf12.jpg
エネルギー(1000TOE)2008202020302050
産業部門計(BAU) 155,988 166,309 158,732 136,499
産業部門計(WWF) 155,988 138,384 122,114 91,543
- 非製造業 9,123 8,336 7,380 5,441
- 製造業 146,865 130,048 114,734 86,101
  素材系 103,928 92,936 80,590 56,478
   ・鉄鋼 37,801 36,238 29,115 16,945
   ・化学 48,056 42,609 38,483 29,460
   ・窯業・土石 9,604 6,649 5,886 4,253
   ・紙パルプ 8,467 7,440 7,106 5,820
  非素材系 42,937 37,112 34,144 29,623
   ・食品・タバコ 5,827 4,596 3,980 3,041
   ・繊維 2,073 1,635 1,416 1,082
   ・非鉄金属 3,377 2,992 2,697 2,148
   ・金属機械 10,656 10,548 10,872 11,661
   ・その他 21,004 17,341 15,179 11,691
民生部門計(BAU) 92,117 101,780 99,025 87,093
民生部門計(WWF) 92,117 68,759 58,307 46,854
- 家庭計(BAU) 51,902 54,957 51,906 43,228
- 家庭計(WWF) 51,902 37,211 30,940 24,262
   ・ 冷房 1,132 615 376 176
   ・ 暖房 12,739 6,920 4,233 1,980
   ・ 給湯 15,014 10,938 9,071 6,483
   ・ 厨房用 4,267 3,641 3,265 2,579
   ・ 動力他 18,750 15,097 13,995 13,044
- 業務計(BAU) 42,338 46,823 47,120 43,805
- 業務計(WWF) 42,338 31,548 27,367 22,592
   ・ 冷房 5,068 3,650 3,144 2,597
   ・ 暖房 6,765 4,957 4,323 3,649
   ・ 給湯 6,451 5,274 4,343 3,102
   ・ 厨房用 3,761 2,966 2,749 2,532
   ・動力他 20,294 14,700 12,807 10,712
運輸部門計(BAU) 84,255 73,707 64,206 46,916
運輸部門計(WWF) 84,255 58,271 43,824 25,820
- 旅客計(BAU) 54,771 45,784 38,187 25,262
- 旅客計(WWF) 54,771 35,474 26,511 16,624
   ・自家用乗用車 45,447 28,414 20,545 12,196
   ・営業用乗用車 1,376 860 622 369
   ・バス 1,447 1,141 988 755
   ・鉄道 1,905 1,612 1,438 1,136
   ・海運 166 131 113 87
   ・航空 4,430 3,315 2,803 2,081
- 貨物計(BAU) 29,485 27,923 26,019 21,654
- 貨物計(WWF) 29,485 22,798 17,313 9,196
   ・貨物自動車 25,040 19,110 14,072 6,670
   ・鉄道 128 124 122 122
   ・海運 3,771 3,113 2,725 2,099
   ・航空 546 451 395 304
非エネ 4,465 4,175 3,834 3,074
合計(BAU) 338,948 345,971 325,798 273,522
合計(WWF) 338,948 269,590 228,078 167,291
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目次

脱炭素社会に向けたエネルギーシナリオ提案 <第一部・省エネルギー>
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