【第2部:100% 自然エネルギー編】 第1章 自然エネルギー 100%


脱炭素社会に向けた
エネルギーシナリオ提案

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100%自然エネルギーによる日本の将来のエネルギー供給を検討するのが、本報告の目的である。

ここでは、日本国内にある自然エネルギーの供給可能性を概観する。対象にしたのは、太陽光発電、風力発電、水力発電、地熱発電、太陽熱、バイオマスである。

このほかにも波力発電、海洋温度差発電、潮流発電、潮汐発電、地熱の直接利用などがあるが、これらのエネルギー技術について詳細な情報が入手できなかったため、本報告では扱っていない。これらのエネルギー技術の将来の普及の可能性を否定するものではない。

1.1 太陽光発電

日本における太陽光発電の導入規模は、すでに約300万kWになっている。3kW程度の家庭用と数千kWクラスのメガソーラーの普及が始まっている。騒音がなく、市街地でも設置でき、どこでも屋根や未利用地があれば設置可能である。

日本における設置可能な潜在量は、戸建住宅1.01億kW、集合住宅1.06億kWであり、2030年ごろの現実的な導入ポテンシャルは、戸建住宅5310万kW、集合住宅2210万kWとされている。このほかに公共建物、工場、未利用地、耕作放棄地などに1億5000万kWが設置可能となっている。(1)

これらを合計すると2050年ごろには、3億5000万kW規模が可能となる。この計算に利用している面積あたり出力は67W/m2であり、これから必要な面積を計算している。発電効率は、現在すでに最高のものでは20%を超えており、2050年には最低でも25%を超えると考えられる。発電効率が25%になり、パネル周辺の無効面積が減少すれば、同じ面積で2倍、およそ7億kWの設置が可能になる。2050年ころには最大規模はさらに拡大すると予想される。

現状では、経済性が難点であるが、固定価格買取制度により、導入が加速されている。
生産規模が大きくなってきており、大量生産に関する学習曲線によって将来のコスト低下の可能性を検討することができる。(参考資料4)

1.2 風力発電

日本における風力発電の導入規模は220万kWである。北欧では電力需要の一定割合を供給し、ドイツやアメリカでは2000万kWを超えている。世界的には2億kWを超えており、すでに経済性のある投資と考えられている。欧米諸国と比較すると、日本の導入量は10分の1程度にとどまっている。

風力発電については、環境省の風力発電のポテンシャル調査により、表1-1に示すように電力会社別10地域における建設可能規模が示されている。(1) 設定した風速は、陸上では5.5m/秒、洋上では6.5m/秒である。

風力発電の合計規模は、陸上ポテンシャル2億8293万kW、洋上ポテンシャル15億7262万kWになっている。陸上ポテンシャルでもっとも大きな規模を示すのは北海道であり、東北地方、九州、関西がこれに続いている。洋上ポテンシャルでは、九州が最大であり、北海道、東北、中国がこれに続いている。

本シナリオでは、風力発電の許容可能な最大規模は、陸上で1億4000万kW、洋上で3億2000万kWと想定した。


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1.3 水力発電

現状では、2016万kWの規模であるが、小水力を含めて最大可能な規模は、2760万kWとされている。今後の開発余地は、ほかの自然エネルギーに比較するとそれほど大きく残っていない。

水力発電の年間設備利用率は、45~50%程度であり、太陽光発電の12%、風力発電の20~30%と比較すると、水力発電の設備利用率は高い。

1.4 地熱発電

現状では52万kWであるが、今後、急速に開発が行われるとして期待が高まっている。年間設備利用率が70%ほど期待でき、環境に配慮したうえでの開発余地もかなり大きい。本シナリオでの想定は、最大1419万kW、設備利用率は70%としている。(参考資料2)

1.5 太陽熱

1980年代に家庭用太陽熱温水器が500万台以上、広く普及した。しかし、1990年代には、その普及は低下してゆき、現在では、設置規模が減少し、メーカーの数も少なくなっている。太陽熱温水器は経済性があり、低温熱を供給する良好な手段であり、政策的な援助を行って、技術開発を奨励して広く普及させる必要があると考えられる。

太陽熱コレクターと循環ポンプを組み合わせたソーラーシステムは、産業用にも広く利用可能な潜在力を持っている。ソーラーシステムで80℃の熱を供給し、この低温熱を使って電気ヒートポンプで165℃の蒸気を供給するシステムが、日本のメーカーによって開発されており、産業用にボイラ需要を代替する可能性があると期待されている。本シナリオでは、このような可能性を熱利用の部分の計算に組み込んでいる。

1.6 バイオマス

日本国内で利用可能な廃棄物バイオマスと未利用バイオマスは、表1-2に示すような規模になっている。

表1-2 バイオマスの可能性
バイオマスの種類内容現状年間発生量
(万トン)
未利用分
(万トン)
廃棄物バイオマス 家畜排泄物 90%は堆肥などに利用 8,900 890
食品廃棄物 20%は肥料・飼料に利用 2,200 1,760
廃棄紙 回収されず焼却されている 1,600 1,600
パルプ廃液(黒液) 乾燥重量(製紙産業で利用) 1,400 0
製材工場等残材 90%は堆肥・燃料などに利用 500 50
建設発生木材 60%は製紙原料・家畜敷料 460 184
下水汚泥 濃縮汚泥ベース 7,500 2,700
未利用バイオマス 林地残材 ほとんど未利用 370 370
農作物非食用部 30%は堆肥、飼料に利用
(稲わら、もみがら)
1,330 910
エネルギー作物 森林 現状ではほとんどなし。
今後積極的に生産する
  6,000
合計(乾重量)     24,260 14,464
合計(石油換算)       6,727

(バイオマス・ニッポン総合戦略などをベースに、システム研にて試算)

バイオマスは、発電、産業用燃料、民生用燃料、輸送用燃料(自動車、航空機、船舶) として利用する。とくに航空機には質量あたりのエネルギー密度の高い液体燃料としてのバイオマスが最も適しており、重要な供給源である。

上記の数値は、乾燥重量であり、石油換算するとおおよそ2分の1のエネルギー量になる。本シナリオでは、廃棄物と未利用バイオマスで3000万TOE、さらにエネルギー作物を3000万TOEを国内で生産するものとして、バイオマス合計で最大6000万TOE/年の利用を見込めるとした。

バイオマスの利用を推進するには、廃棄物の回収利用、農林業の活性化、未利用耕地でのエネルギー作物の生産など国内のバイオマス産業を育成する必要があることは言うまでもない(参考資料5)。

1.7 水素/電力

産業用、民生用の燃料需要に水素を供給することを検討した。本シナリオで扱う水素は、 太陽光発電と風力発電の余剰電力を使って水の電気分解により得られる水素である。

このほかに輸送用に水素を供給する。ただし、輸送用にEV(電気自動車)とFCV(燃料電池車)の両者の技術革新が進展中であるが、その優劣をつけがたいところである。

EVは、電力を直接利用可能であり効率が高いが、走行距離と充電時間に課題が残っている。暖冷房時や夜間の照明による負荷の増大があるとEVの走行距離は短くなる。(参考資料8)

FCVはこの課題を解決できるが、水素を利用するときに効率が低下する。ともに電気モータで走行するため、走行時の効率が現状の内燃機関の3倍ほどになるが、水素への変換効率によってその必要なエネルギー量には、違いが生じる。

ここでは、乗用車と貨物車について、FCVとEVが同程度に利用されるものとした。 FCVへの水素、EVへの電力は、発電システムの余剰電力から供給するものとした。

ここでは、輸送用の最終用途として100のエネルギーが必要な場合に、EVとFCVの利用割合をそれぞれ50と想定した。以下のような効率を適用した。

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図1-1に示すように、必要な変換過程をさかのぼると、FCVとEVに50の最終用途エネ ルギーが供給されるときに必要な電力は、FCVへ92.6、EVへ55.6であり、合計で148.2と なる。この計算過程を適用して輸送用水素/電力の計算を行っている。

1.8 自然エネルギーによる発電の最大規模

本シナリオで扱う自然エネルギーによる発電の最大規模の概要をまとめると以下のよう になる。

自然エネルギーによる発電の最大規模の概要
供給源供給容量(kW)設備利用率(%)発電量(TWh)
太陽光7億 12 736
風力4億8000万 25 1,051
水力2760万 46 111
地熱1419万 70 87
バイオマス800万 70 49

水力発電、地熱発電、バイオマス発電の2050年の規模は上記の表1-3に示した数値を使用している。
太陽光発電と風力発電については、2050年において上記の規模の範囲内に収まることを確認することにする。

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目次

脱炭素社会に向けたエネルギーシナリオ提案 <第二部 100% 自然エネルギー>
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第1章 自然エネルギー
1.1 太陽光発電
1.2 風力発電
1.3 水力発電
1.4 地熱発電
1.5 太陽熱
1.6 バイオマス
1.7 水素/電力
1.8 自然エネルギーによる発電の最大規模
第2章 WWFシナリオのエネルギーの需要と供給
2.1 産業部門
2.2 家庭部門
2.3 業務部門
2.4 運輸部門
第3章 WWFシナリオのエネルギー供給構成
第4章 2050年の電力供給
4.1 気象データ
4.2 電力需要の月別・時刻別パターン
4.3 太陽光発電と風力発電の規模
4.4 電力貯蔵システム
4.5 電力のダイナミック・シミュレーション
第5章 CO2排出量
参考文献 参考文献 一覧(PDF)
参考資料 1)鉄鋼産業のエネルギー需要
2)地熱発電のポテンシャルに対する考え方
3)原子力発電の想定
4)太陽光発電と学習曲線
5)バイオマスの扱いについて
6)ダイナミック・シミュレーションの方法
7)電力貯蔵システムとバックアップ電力
8)自動車技術
9)燃料需要の詳細と供給構成
  • ※単位について
    1000TOE=1000トン石油換算、MTOE=百万トン石油換算、1TOE=11,630kWh
    本報告では最終用途エネルギーに注目して1次エネルギーは扱っていない。
    ただし、自然エネルギーからの電力を燃料に転換するときに生じる損失は供給構成に含めている。

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