【第2部:100% 自然エネルギー編】 第3章 WWFシナリオのエネルギー供給構成


脱炭素社会に向けた
エネルギーシナリオ提案

自然エネルギーシナリオ第3章 WWFシナリオのエネルギー供給構成

以上に示したエネルギー需給の内容を、2008年から2050年についてとりまとめると、以下のようになる。

まず、エネルギー供給構成は燃料と電力とするが、電力には元来のデマンドドリブン(需要対応型)の電力需要があり、ここではこれを純粋電力需要とよぶことにする。

つぎに、もともとの燃料需要のうちの一部が、電力からの変換により供給されるものがある。そのプロセスは、水素への転換(燃料水素とFCV用)、電力ヒートポンプを利用する熱供給、EVの駆動用動力、車上太陽光であり、これらを燃料用の電力と呼ぶ。そして残りの燃料需要がもとからある燃料需要(正味の燃料)であり、バイオマスと太陽熱によって供給されることになる。

表3-1 燃料と電力の最終用途の構成
1000TOE20082020203020402050
燃料 247,989 188,218 134,711 95,922 70,063
電力(燃料用) 0 2,555 16,576 27,563 34,887
電力(純粋電力) 86,494 70,853 63,991 57,959 53,938
合計 247,989 190,773 151,287 123,485 104,950
図3-1 燃料と電力の最終用途の構成 graf3_1.jpg

表3-1には、燃料(正味の燃料)、電力(燃料用)、電力(純粋電力用)の3種類の最終用途別の数値をとりまとめている。

2020年以降は、燃料の一部が電力(燃料用)から供給されるので、正味の燃料需要を代替してゆき、2050年には、電力(燃料用+純粋電力用)が最終的にやや増加する結果になっている。しかし、全体として燃料の減少は大きく、燃料と電力の合計は減少している。

このうち燃料と燃料用電力の供給構成は以下のようになる。

表3-2) 燃料の供給構成(1000TOE)
燃料構成
(1000TOE)
20082020203020402050
石炭 36,536 27,558 14,858 5,943 0
石油 166,939 104,159 48,874 19,550 0
ガス 42,120 28,398 16,902 6,761 0
太陽熱 0 7,788 14,807 17,004 18,468
バイオマス 2,395 20,315 39,270 46,665 51,594
燃料代替電力
(ヒートポンプ)
0 106 321 1,407 2,131
燃料用水素 0 79 3,595 8,598 11,934
運輸用電力   1,472 3,900 5,217 6,095
運輸用水素 0 528 4,515 6,148 7,237
車上太陽光 0 1,345 3,132 3,481 3,714
合計 247,989 191,748 150,173 120,773 101,173
図3-2 燃料の供給構成 graf3-2.jpg

次に「燃料用電力」を含む電力の供給構成を示す。純粋電力だけであれば、2050年にむけて減少してゆくが、「燃料用電力」を含めると、燃料の一部を太陽光と風力で発電した電力でまかなうために、電力が増加する。

表3-3 「燃料用電力」を含む電力
電力構成(TWh)20082020203020402050
石炭 322 220 140 56 0
石油 107 85 70 28 0
ガス 233 190 110 44 0
水力 83 90 97 105 111
原子力 258 89 23 0 0
地熱 3 24 45 70 87
バイオマス 15 23 32 42 49
太陽光 2 68 151 219 253
風力 3 34 76 109 127
純粋電力への供給計 1,006 824 744 674 627
- 太陽光(燃料むけ) 0 20 128 214 270
- 風力(燃料むけ) 0 10 64 107 135
燃料用を含む電力合計 1,006 854 937 994 1,033
図3-3 電力の供給構成(燃料用電力を含む) graf3-3.jpg

図3-3に示すように、2020年までは、効率向上により電力需要は低下するが、それ以降には、化石燃料代替のための燃料用の水素生産が始まるので、追加的に太陽光と風力の発電量が必要になり、結果として、電力供給全体は2050年に、2008年の水準と同程度になることがわかる。

太陽光発電と風力発電の導入率について多くの条件でのシミュレーションを試みた。その結果、太陽光発電量と風力発電量の相対的な割合は、おおよそ太陽光:風力=2:1程度にするのが望ましいという結果を得ている。これは日本における太陽光+風力発電の発電量に対する電力需要の1年間の変動の特性から来ている。(15)

原子力発電は、安全性、廃棄物の処理、核拡散に関して根源的な問題があり、長期的には核燃料の枯渇の問題もあるため持続可能なエネルギー供給源ではない。WWFシナリオでは、2020年に1561万kW、2030年に404万kW、2040年以後はゼロにするものとした。設備利用率は65%として発電量を求めている。詳細は、参考資料3を参照。

表3-3には、各電力供給源の2008年から2050年までの設備容量と設備利用率から、発電量をもとめて示している。太陽光発電と風力発電の発電量は、2:1に設定して計算を行っている。図3-3には、そのグラフを示している。

参考までに純粋電力のみの場合には、図3-4のようになる。この場合には、図3-3の上部にある、風力(燃料むけ)と太陽光(燃料むけ)の2者を除いたものを示している。

両者の違いは、発電した電力の余剰分を燃料製造用に使用することであり、図3-3の場合には、そのために太陽光発電と風力発電の変動余剰分を利用している。

図3-4 純粋電力のみの供給の場合 graf3-4.jpg
表3-4 全エネルギー供給構成(1000TOE)
供給源20082020203020402050
石炭 64,228 46,478 26,898 10,759 0
石油 176,141 111,469 54,894 21,958 0
ガス 62,158 44,738 26,362 10,545 0
水力 7,138 7,740 8,342 9,064 9,546
原子力 22,188 7,654 1,978 0 0
地熱 284 2,076 3,878 6,040 7,482
太陽光 189 7,584 24,076 37,189 45,052
風力 275 3,792 12,038 18,595 22,526
バイオマス 3,645 22,307 42,004 50,290 55,813
太陽熱 0 7,788 14,807 17,004 18,468
車上太陽熱 0 1,345 3,132 3,481 3,714
合計 336,245 262,971 218,409 184,925 162,602
図3-5) 全エネルギー供給構成(MTOE) graf3-5.jpg

全体のエネルギー供給構成は、表3-4、図3-5のように変化してゆく。

全供給量は、2008年の3億3624万TOEから、2050年の1億6260万TOEまで、おおよそ48.4%に低下してゆく。

原子力が2040年までにゼロになり、石炭、石油、ガスの化石燃料が2050年までにゼロに減少してゆくのに代わって、水力がすこし増加し、地熱、太陽光発電、風力発電、バイオマス、太陽熱、車上太陽光が急速に増加してゆく様子がわかる。

2050年には、バイオマスが5581万TOE、太陽熱が1847万TOE利用される。

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目次

脱炭素社会に向けたエネルギーシナリオ提案 <第二部 100% 自然エネルギー>
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第1章 自然エネルギー
1.1 太陽光発電
1.2 風力発電
1.3 水力発電
1.4 地熱発電
1.5 太陽熱
1.6 バイオマス
1.7 水素/電力
1.8 自然エネルギーによる発電の最大規模
第2章 WWFシナリオのエネルギーの需要と供給
2.1 産業部門
2.2 家庭部門
2.3 業務部門
2.4 運輸部門
第3章 WWFシナリオのエネルギー供給構成
第4章 2050年の電力供給
4.1 気象データ
4.2 電力需要の月別・時刻別パターン
4.3 太陽光発電と風力発電の規模
4.4 電力貯蔵システム
4.5 電力のダイナミック・シミュレーション
第5章 CO2排出量
参考文献 参考文献 一覧(PDF)
参考資料 1)鉄鋼産業のエネルギー需要
2)地熱発電のポテンシャルに対する考え方
3)原子力発電の想定
4)太陽光発電と学習曲線
5)バイオマスの扱いについて
6)ダイナミック・シミュレーションの方法
7)電力貯蔵システムとバックアップ電力
8)自動車技術
9)燃料需要の詳細と供給構成
  • ※単位について
    1000TOE=1000トン石油換算、MTOE=百万トン石油換算、1TOE=11,630kWh
    本報告では最終用途エネルギーに注目して1次エネルギーは扱っていない。
    ただし、自然エネルギーからの電力を燃料に転換するときに生じる損失は供給構成に含めている。

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