【第3部:費用算定編】 第1章 エネルギー価格と費用算定の方法


第1章 エネルギー価格と費用算定の方法

本報告は、省エネルギー技術と自然エネルギーの費用を検討することを目的にしている。検討の対象にしたのは、産業、家庭、業務、運輸部門における代表的な省エネルギー技術と、太陽光、風力、地熱、水力などの自然エネルギー技術である。その費用を評価するために、まず将来のエネルギー価格を検討する。

1.1 エネルギー価格

2010年の日本における実際のエネルギー価格は表1.1のようになっている。

将来のエネルギー価格の見通しについては、米国エネルギー省エネルギー情報局(EIA)が毎年発行している将来見通しAnnualEnergyOutlook2013(以下AEO2013)(USEIA2013)4)を参照することとした。

AEO2013は、2040年までのエネルギー価格を、図1.1のように、2010年の価格を100とする指数で表示している。

いずれのエネルギーも価格が上昇することが予想されている。

本報告では、2040年から2050年においては世界の人口増加と途上国の経済成長がゆるやかになることを想定して、この期間のエネルギー価格をやや穏やかな上昇と推定して補っている。

本報告では、表1.1の日本の2010年のエネルギー価格を基準にして、図1.1の指数によって将来のエネルギー価格が推移するものと想定した。

(出典)USEIA4)より筆者作成

1.2 将来の電力価格

本報告では、2050年までに自然エネルギーが大量に普及してゆくことを想定している。将来のWWFシナリオの電力価格を以下のように推定した。

まず、自然エネルギーの将来価格は、第3章に示すように、固定価格買取制度(2012年7月開始)の価格5)と国立環境研究所6)、コスト等検証委員会7)を参考にして、学習曲線を利用して計算している。

(出典)コスト等検証委員会7)などを参照し、筆者作成

発電設備建設費(初期投資)、燃料費、固定資産税、発電効率などを用いて、各種エネルギー源による発電価格をもとめて、図1.2に示した。石油、天然ガスの発電価格は2050年まで上昇してゆき、太陽光、風力発電は価格が低下してゆく。

BAU総合電力価格は、2010年の発電燃料構成を固定して将来の発電価格を計算したものであり、化石燃料の価格上昇によって2030年ごろから上昇してゆき、WWFシナリオの発電価格に比較すると大きなものになってゆく。このBAU総合電力価格を、自然エネルギーによる発電の代替を評価するために使用した。具体的には運転費用の計算のためには、運転を維持する費用から、省エネまたは代替されるエネルギー費用によって回収される費用を差し引く。省エネ、あるいは代替されるエネルギーのうちの発電分にBAU電力価格を用いた。

1.3 費用算定の方法

本報告は、2011年に作成した「脱炭素社会へ向けたエネルギーシナリオ提案」の「第一部 省エネルギー」報告2)、「第二部 100%自然エネルギー」報告3)により推定したエネルギー最終消費について、以下のような方法でWWFシナリオのケースの省エネルギー費用と自然エネルギーの費用を検討している。

  1. 設備投資(CapEx)
  2. 運転費用(運転維持費用--省エネまたは代替エネルギーにより回収される金額)(OpEx)
  3. 正味費用(設備投資金額+運転費用)(Net)

設備投資は、BAUシナリオの省エネルギーに対する追加の省エネルギー費用、および太陽光発電などの初期投資の費用を意味している。

運転費用には、まず省エネ設備や自然エネルギー設備の運転に必要な運転維持費用がある。これから、省エネルギーや自然エネルギー(太陽光や風力発電など)によって削減または代替される化石燃料などの費用をさしひいたものである。これは比較する対象のBAUシナリオの運転費用に相当する。なお金利は考慮していない。

各年について、正味費用を以下のように計算する。

正味費用(Net)=設備投資(CapEx)+運転費用(OpEx) である。

設備投資はプラスの数値であるが、運転費用は省エネルギーまたは自然エネルギーでのエネルギー費用代替により回収される金額を差し引くため、多くの場合はマイナスになる。したがって、一般に投資が適切なものであれば、正味費用は初期の設備投資のため当初はプラスの値であるが、次第に減少してゆき、2050年に至る以前にマイナスの値になる。これは、設備投資が回収されるだけでなく、利益となることを意味している。

1.4 費用算定の対象

本報告では、利用可能なデータの制限から、WWFシナリオの実現に必要な費用を、個別技術ごとにすべて積み上げて算定するというアプローチは採っていない。各部門において、代表的な対策・技術の費用を算定することによって、当該部門の費用を推計するというアプローチを採っている。

こうした費用算定に関する既存の研究例として、国立環境研究所が2012年の政府「革新的エネルギー・環境戦略」に関する議論の中で行った試算がある。同研究所の「対策導入量等の根拠資料」6)には、2030年までの省エネルギーと自然エネルギーの対策の費用が、概数でまとめられている。
表1.2~1.3にそれを示した。

費用の計算は、2011~2020年と、2011~2030年の期間に区分されている。産業部門では、エネルギー多消費産業が検討されている。家庭部門、業務部門については、断熱化・照明・電気製品などが検討対象になっている。自動車については、効率の向上を主眼としており、EVやFCVは対象にしていない。

表1.4に下線で示した項目が、本報告の省エネルギーの費用算定項目である。

産業部門については、省エネルギーの投資と回収期間を用いて、計算している。
家庭部門については、最終用途のうち住宅の断熱化、エアコン、照明について計算している。厨房、温水のエネルギー需要は計算に含めていない。また、動力(電気を使用するもの)については照明のみを計算に含めている。
業務部門については効率の高いオフイスと照明について検討している。
運輸部門については、乗用車のみを費用算定項目としており、そのほかの旅客輸送や貨物輸送は算定の対象に含めていない。

表1.5には自然エネルギーについては、すべてのエネルギー供給について費用算定を行った対象を示している。なお、バイオマスについては本来は発電も含むが、熱・燃料用途が主であるため、すべて熱・燃料供給用とみなして計算した。

脱炭素社会に向けたエネルギーシナリオ提案 目次

脱炭素社会に向けたエネルギーシナリオ提案 <第三部 費用算定>
PDF版はこちら 全文 / 概要版

第1章 エネルギー価格と費用算定の方法
1.1 エネルギー価格
1.2 将来の電力価格
1.3 費用算定の方法
1.4 費用算定の対象
第2章 省エネルギーの費用
2.1 産業部門の省エネルギー費用
2.2 家庭部門の省エネルギー費用
2.3 業務部門の省エネルギー費用
2.4 運輸部門の省エネルギー費用
第3章 自然エネルギーの費用算定
3.1 太陽光発電の費用
3.2 風力発電の費用
3.3 地熱発電の費用
3.4 水力発電の費用
3.5 太陽熱の費用
3.6 バイオマスの費用
第4章 費用算定のまとめ

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