©WWF-Japan

パーム油調達とTNFD開示の現在地

この記事のポイント
2026年10月6日、WWFジャパンは「ネイチャーポジティブに向けた パーム油調達におけるTNFD開示ベンチマーク調査」ウェビナーを開催しました。企業27社を対象に実施した調査結果をもとに、TNFDに沿った開示や調達方針が広がる一方、トレーサビリティや方針の実行状況の確認に課題が残る現状を紹介。企業と金融機関が、開示の先にある実践をどう進めていくべきかを考えました。
目次

開示から実践へ、27社を調査

企業によるTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)に沿った情報開示が広がっています。しかし、開示の有無だけでは、企業が自然関連のリスクや影響を実際にどこまで把握し、管理しているのかは十分に見えてきません。

そこでWWFジャパンは、森林破壊などにつながりやすい土地利用変化との関係が深いパーム油に着目。パーム油を多く使用する日本企業27社を対象に、公開情報をもとにしたベンチマーク調査を実施しました。

TNFDの提言や関連ガイダンスをパーム油調達の実務に読み替え、14の設問を設定。TNFDという名称のレポートを発行しているかどうかではなく、企業のウェブサイトやサステナビリティレポートなども含め、実際の取り組みがどこまで進んでいるのかを確認しました。

課題はトレーサビリティ

調査結果からは、ネイチャーポジティブへ向けての前進と同時に課題も見えてきました。
TNFDに沿った開示が一定程度行われていた企業は27社中17社でした。また、森林破壊ゼロやNDPE(森林破壊なし、泥炭地開発なし、搾取なし)に関する調達方針を持つ企業も10社あり、企業の方針策定や情報開示は着実に進んでいます。
一方、大きな課題として浮かび上がったのがトレーサビリティです。27社中14社では、調達するパーム油について農園までのトレーサビリティを確認できませんでした。また、サプライヤーに農園までのトレーサビリティ確保を求めていることを確認できた企業は3社でした。

生産地が分からなければ、自然への依存や影響が大きい場所を特定することも、調達するパーム油が森林破壊ゼロの方針に適合しているかを確認することも困難です。
さらに、森林破壊ゼロなどの調達方針を掲げる企業がある一方、調査で設定した基準に照らして、その達成状況を信頼性の高い方法で確認し、その方法を開示していた企業は2社にとどまりました。方針を持つことと、その実行を確認できることの間にギャップがあることが、今回の調査で明らかになった重要なポイントです。

©WWF-Japan

TNFD開示を対話の入り口に

ウェビナーでは、企業の実際の開示事例も取り上げながら、どこに改善の余地があるのかを紹介しました。
認証パーム油の調達や調達方針の策定は重要な取り組みですが、それだけで自然関連リスクの管理が完了するわけではありません。農園までのトレーサビリティをどのように高めていくのか、サプライヤーからどのような情報を得るのか、森林破壊ゼロの達成状況をどのように確認するのかなど、方針を具体的な行動につなげることが必要です。
金融機関にとっても、企業が「TNFD開示をしているか」「森林破壊ゼロの方針を持っているか」だけを見るのではなく、その一歩先を問うことが重要です。
例えば、「農園まで把握できているのか」「サプライヤーに何を確認しているのか」「目標の達成率をどのように把握しているのか」といった問いを通じて、企業の取り組みの実態を確認し、改善につながる対話を進めることができます。企業の取り組み段階やサプライチェーン上の位置によって、対話の内容を変えていくことも重要です。

開示そのものをゴールにしない

ウェビナーの最後に改めて確認したのは、TNFDに沿って開示すること自体がゴールではないという点です。
開示された方針の先で、企業が自社のサプライチェーンをどこまで把握しているのか。自然へのリスクや影響が大きい場所を特定し、課題が見つかったときに、調達先やサプライヤーとの関わり方をどう変えているのか。そして金融機関などの情報の読み手が、企業のこうした変化を読み取り、次の行動を促す対話につなげられるのか。
今回のベンチマーク調査は、企業を評価するだけのものではありません。WWFは、得られた結果が、企業が自社の現在地と次に取り組むべき課題を確認し、金融機関が企業との対話をより具体的なものにしていくための材料として活用されることを目指しています。

開催概要
日時: 2026年10月6日
開催形式: オンライン
主催: WWFジャパン
イベント名: ネイチャーポジティブに向けた パーム油調達におけるTNFD開示ベンチマーク調査
申込者数: 329名(企業・金融機関など)

当日資料
TNFD開示は実務を映しているか
開示から見る取組みの質

この記事をシェアする

人と自然が調和して
生きられる未来を目指して

WWFは100カ国以上で活動している
環境保全団体です。

PAGE TOP