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見て、聞いて、味わって、田んぼの魚の保全について考えるイベントを実施

この記事のポイント
かつては身近な風景の中で数多く見られた、メダカやドジョウ、タナゴなどの魚たち。しかし、田んぼや水路の自然が失われる中、こうした日本の淡水魚は、今やその4割以上が絶滅の危機に瀕しています。WWFジャパンでは2017年より、九州で淡水魚と田んぼの自然を保全する取り組みを開始。その活動の一環として2018年11月、東京の渋谷でイベントを実施しました。11月25日のトークイベントには、WWFジャパンの会員の方をはじめ、40名が参加。精緻な淡水魚の細密画と、九州の新米のおにぎりを楽しみながら、魚や田んぼのお話しに耳を傾けました。

東京・渋谷で淡水魚の原画展とトークイベントを開催

知ってほしい!日本の淡水魚の魅力

日本の川や湖などにすむ「淡水魚」というと、どのような魚を思い浮かべるでしょうか。
コイやフナ、ナマズ、メダカやドジョウなどを連想される方もいるかもしれません。

実はこの淡水魚、日本には400種以上が生息しています。
その中には、自然の河川や湖沼のみならず、人が作った農業用の水路や、水田などをすみかとしている魚も数多く含まれており、その4割が今、絶滅の危機に瀕しているとされています。

そこでWWFジャパンでは、こうした魚と、その置かれている危機的な状況について、たくさんの人に知っていただくため、2018年11月23日~12月2日まで、株式会社モンベルのご協力のもと、東京・渋谷にあるモンベル渋谷店の5階サロンにて、「淡水魚の原画展-日本の原風景を泳ぐ絶滅危惧種15選」を開催しました。

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原画の淡水魚たち。全部で56種の魚が展示されました。

この絵を手掛けられたのは、NPO法人nature works代表で、博物画家としても知られる、小村一也氏です。

展示されたのは、世界でも日本のごく一部にしか生息していない、国際的にも稀少な淡水魚をはじめ、メダカやドジョウなど、身近でありながらも現在、減少や絶滅が心配されている魚たち。

これら水田や水路にすむ魚は、比較的人の暮らしに近いところにすむ、身近な魚ではありますが、それでも、その大きさや色、形などを間近に見る機会は、なかなかありません。

原画展では、水の上から見るだけでは分からない、色鮮やかな魚たちの姿を、繊細な骨格や、小さな鱗1枚1枚に至るまで見事に描き出し、来場者の皆さんを魅了しました。

小村氏の筆による淡水魚カワバタモロコ。この魚のように、自然の川にはほとんど生息しておらず、土手が土のままの人が作った農業用水に生息する魚もいます。そして、こうした土の水路が、コンクリートで固められたことで、カワバタモロコは絶滅寸前の危機にあります。

左上から順に、カゼトゲタナゴ、ニッポンバラタナゴ、セボシタビラ、ヤマノカミ

またこの原画展では、危機にある淡水魚の現状や、WWFが現在、九州で取り組んでいる保全活動も紹介。

展示された魚たちの絵を楽しみながら、その保全についても理解を深めていただきました。

会場に設置されたボードには多くのコメントが寄せられました。

おにぎりを食べながら聞く専門家のお話

また、原画展開催期間中の11月25日には、会場で参加者の皆さんに「おにぎり」を食べていただきながら、魚の専門家の話を聞くトークカフェも行ないました。

スピーカーとしてお招きしたのは、九州大学アクアフィールド科学研究室の、鬼倉徳雄准先生。日本を代表する淡水魚の専門家のお一人です。

また先生は、WWFジャパンが現在、九州の水田地帯で行なっている、保全プロジェクトのパートナーでもあり、研究室の大学院生の皆さんと共に、長年にわたり九州で魚の調査活動に取り組んでこられました。

登壇頂いた九州大学の鬼倉徳雄准先生

熊本県玉名市でとれたお米で作られたおにぎりを味わいながらお話を聞いて頂きました。

WWFからのお話:日本の水田とその自然をめぐる問題

この日のトークイベントでは、まず、WWFジャパンで水田・水路の保全プロジェクトを担当するスタッフから、取り組みの背景と、その重要性についてお話をさせていただきました。

日本の淡水魚が目下、危機的な状況にあり、国内の淡水魚のうち42%が絶滅危惧種となっていること。
農薬や外来生物の侵入も脅威になっていること。

何より危機の大きな原因として、重要な生息地の一つである田んぼの環境が変化していることをお伝えしました。

今、日本では、お米の需要の減少に伴い、田んぼが減る一方、残る田んぼでも効率的な稲作を行なうため、コンクリートで水路を固める圃場整備が進み、魚などが棲みにくい環境に変化しています。

魚が生きるためには、植物や小さな生きものが生きられる土の土手や砂の川底の水路が必要ですが、高齢化が進む農業者の方々にとって、こうした自然な水路は、整備が困難な環境です。

このため、農業が無ければ残せない水田や水路の自然が、農業を守るために失われてしまう、という、解決の難しい問題が起きているのです。

鬼倉徳雄先生のお話:減少する日本の淡水魚たち

鬼倉徳雄先生からは、WWFとのプロジェクトで行なっている共同研究と、その調査研究の中でも明らかになってきた、主に九州の淡水魚について、お話しをいただきました。

共同研究のフィールドは、九州の有明海・八代海沿岸を中心に広がる水田地帯。
この地域の田んぼに、文字通り網の目のようにめぐらされた水路は、日本有数の複雑さを持っています。
これは、貴重な淡水を効率よく使うことを目的に、昔の人々の知恵が生み出した水系で、環境としても、流れが速い場所、遅い場所、深さなども実にさまざまです。

そして、こうした多様な水路の環境こそが、多様な淡水魚の生息を可能にする、一番のカギとなっています。

その一例として鬼倉先生は、世界でこの地域にだけ生息するドジョウの一種、アリアケスジシマドジョウは、産卵する時期になると、普段すんでいる場所から移動し、流水速度が異なる水路を利用することを紹介されました。

また、同じく日本の固有種で、希少種でもあるニッポンバラタナゴが、大陸から観賞魚として持ち込まれ、全国各地で野生化した外来種のタイリクバラタナゴと交配し、野生動物としての血統が失われつつある現状もご紹介いただきました。

西日本の水路やため池などに分布するニッポンバラタナゴ。九州以外の地域では、タイリクバラタナゴとの交雑によって、野生種がほぼ絶滅してしまった。

今回、鬼倉先生はWWFジャパンとの共同研究を通じ、熊本、佐賀、福岡県内の約140カ所の水路で魚類の調査を行ないましたが、その結果と、約10年前に先生が調査した結果と比較すると、在来種の数が明らかに減少しており、希少種もさらに個体数を減らしていることが明らかになりました。

こうした現状を説明しながら、鬼倉先生は農業を行なう中で、魚にとって必要な環境を工夫して残していくことの大切さを訴えられました。

「食」を通じて考える、農業と魚の未来

トークイベントの最後の質疑応答では、魚についての質問から今後の活動の展開まで、時間内に対応しきれないほどのご質問が寄せられました。

その中で、淡水魚をはじめとする生きものに配慮した農業や、お米の普及についても、話題になりました。

今回のイベントでは、プロジェクトのフィールドで収穫されたお米のおにぎりを、参加者の皆さんに召し上がっていただきましたが、「食」という行動は、誰にとっても共通した身近な体験です。

この「食」を希少な淡水魚とつなげていただきながら、WWFとしてもこれから、生きものに配慮したお米づくりがもっと必要になること、そして、消費者がそうしたお米を選ぶことが、取り組みの支えとなることをお話しいたしました。

あまり知られていない淡水魚や、水田・水路の自然の危機的な状況を、原画展やトークカフェを楽しみながら、たくさんの方に知っていただいた今回の企画。

難しさはあるものの、これからは「安全で効率的な農業」と「野生生物の保全」を、「対立」ではなく「両輪」として行なってゆく必要があります。
WWFジャパンとしても、そのための努力と知恵を傾け、取り組みを続けてゆきます。

淡水魚の原画展-日本の原風景を泳ぐ絶滅危惧種15選
期間 2018年11月23日~12月2日
場所 モンベル渋谷店 5階サロン
主催 WWFジャパン
協力 株式会社モンベル、NPO法人nature works
トークカフェ「知る・食べる・考える淡水魚と田んぼの不思議な関係」
日時 2018年11月25日 13:00~15:00
場所 モンベル渋谷店 5階サロン参加者:34名
主催 WWFジャパン
協力 株式会社モンベル、植村遊希(コムユニ)

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