イベント報告:水田・水路の生きもの、知っていますか?

この記事のポイント
日本人が主食としてきたお米。そのお米がとれる水田の景観は日本の原風景ともいえるでしょう。そこには多くの野生生物が息づいています。しかしその水田も生きものたちも今、数を減らしています。その生きものたちに注目したイベント「水田・水路の生きもの、知っていますか?」を2018年5月、佐賀県武雄市で開催しました。 梅雨入り直前にも関わらず快晴となったこの日、4歳から40代まで幅広い年齢層で20名弱の方々が集まりました。

トークカフェ「水田を調べる人、伝える人、守る人」

参加者が初めに集まったのは佐賀県立宇宙科学館ゆめぎんがのレクチャールーム。そこでは水田・水路の生きものの生態を調べる人としてWWFジャパンのプロジェクト協力研究者でもある九州大学大学院農学研究院の鬼倉徳雄先生、水田を伝える人として武雄市橘町で地元の子どもたちに水田を通じた環境教育を実施している「ちゃりんこクラブ」の大串健さん、そして水田を守る人としてWWFジャパンで国内の水田・水路の生物多様性と農業の共生を目指すプロジェクトを推進する並木が登壇し、それぞれの水田・水路における活動や思いを語りました。

鬼倉先生からは水田を取り巻く水路とそこに生息する淡水魚たちの姿を見せていただきながら、水路の複雑さの重要性や近年の水路のコンクリート護岸化の影響を大きく受け数を減らしている淡水魚たちの危機について教えていただきました。大串さんからは、写真を見ながら2000年続く佐賀の人たちと水田の関わりについてお話をいただきました。最後、並木から水田・水路の生きものの保全と農業の共生の大切さと難しさについて説明、農業や地域社会の暮らしにも貢献できる未来に向けた取組みに対しての理解を訴えました。

鬼倉先生からのワクワクするレクチャー

3人の話を聞いた後は、地元農家さんにご用意いただいたおにぎりを食べながら、生物多様性の保全と農業の共生について参加者、トークスピーカー、WWFスタッフが同じ目線で語り合いました。

おにぎりランチ

JA婦人部のみなさまが作ってくださいました!

いざ、生きもの探し!

おなかも満たされた後は、いよいよ川での生きもの探しへ。
ゆめぎんがスタッフ伊藤辰徳さんに従ってみな武雄川へ。当日は梅雨入り直前にも関わらず快晴。
川の水の程よい冷たさを感じながら網などを使って川の生きものたちを捕まえていきます。

なにかつかまえられたかなぁ?

参加者のみなさんが捕まえた魚やヤゴなどは水槽に入れ、川から上がって伊藤さんのレクチャーを聞きながら観察。
ヨシノボリやタナゴなどたくさんの生きものを観察することができました。鬼倉先生は植物についても解説してくださいました。
小さな川でも多くの生きものが生きていることを実感する時間となりました。

田んぼツアー

川から上がった後はちゃりんこクラブのみなさんが環境教育「田んぼの学校」を実施されている田んぼへ。まだ田植えには少し早い時期でしたが、ちゃりんこクラブの活動についてお話を伺ったり、実際に田んぼの近くの水路を観察したりしました。魚は観察できませんでしたが、カエルやバッタなど水田を象徴するような生きものたちを見つけることができました。

トノサマバッタつかまえたよ!

生物多様性の保全と農業の共生への一歩

本イベントの参加者は、近い未来の担い手でもある高校生が半数を占めていました。その高校生たちがトークカフェでも生きもの探しでも真剣なまなざしで参加してくださったことがとても印象的なイベントとなりました。彼らは多くを語ることはありませんが、生物多様性の保全と農業の共生、という難しい課題に対し一生懸命考えてくれているようでした。WWFジャパンが取り組み始めたこの課題は、WWFジャパンだけでは解決できるものではありません。農業の現場での生産者、自治体、研究者、流通・消費を後押しする企業、そして消費者が対話し未来に向けて行動することが必要です。そんな中、若い担い手が本イベントに参加し課題を認識してくれたことはとても大きな一歩です。この一歩を大切に、ますますプロジェクトを推進してゆくべく、WWFジャパンは多くのステークホルダーと協働していきます。

最後に、イベントにご参加くださった皆さま、会場から生きもの探しまで全面協力いただきました佐賀県立宇宙科学館ゆめぎんがの関係者の皆さま、トークのスピーカーを務めてくださった皆さまに、心よりお礼申し上げます。

参加者のみなさんと集合写真。ご参加ありがとうございました。

イベント概要「水田・水路の生きもの、知っていますか?」

開催日 2018年5月27日
会場 佐賀県立宇宙科学館、武雄川、佐賀県武雄市立橘小学校学習田
参加者数 16名
共催 WWFジャパン、佐賀県立宇宙科学館

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