セミナーを開催:サケの持続可能な利用をめざして


※2023年6月26日をもって、WWFロシア(Vsemirnyi Fond Prirody)はWWFネットワークから離脱しました。

WWFジャパンでは、WWFロシア、ワイルドサーモンセンターの協力のもと、2011年12月21日にセミナー「極東ロシアにおける持続可能なサケ資源利用と責任ある調達に向けて」を開催しました。ゲストスピーカーとしてロシアや日本、ドイツ、カナダの企業代表、また、MSCやTRAFFICといったNGOの参加を得、今後注目されるサケの資源管理に何が必要なのか、その課題と現状を共有しました。

サケの一大消費国、日本への期待

サケは、日本人にとって、もっともなじみのある魚の一種と言ってよいでしょう。
事実、日本はロシア産ベニザケのもっとも大きなマーケットとなっており、日本で消費されるロシア産ベニザケの多くは、カムチャッカ半島沖や沿岸といった極東ロシア地域で漁獲されています。

2010年には、ロシアで漁獲されたシロサケのおよそ97%(2,074トン)を、またベニザケの42%(2万1,014トン)を日本が輸入しました。日本は、自国でも多くのサケを水揚げ・生産していますが、近年は輸入量がそれを上回る年も出てきており、輸入を通じた消費は、着実に拡大しています。

WWFではそうした消費と流通を担う日本企業こそが、太平洋沿岸やロシアにおける持続可能なサケ漁業の推進と、現地カムチャッカ半島などの自然環境と資源の保護に、大きな役割を果たす可能性があると期待しています。

今回開催したセミナーは、こうしたロシア産サケを調達する日本企業に対し、ロシアにおける持続可能な漁業に向けた改善を推進するため実施したものです。

知られていない生産現場の問題

北太平洋におけるサケ漁業と深いつながりがあるにもかかわらず、日本のマーケットや消費者は、カムチャッカをはじめとする極東ロシア地域が抱える問題に対し、十分かつ深刻な認識は、あまり持っていません。

とりわけ、自然が豊かなカムチャッカは、日本にやってくるロシア産サケの半分以上を生産している地域ですが、ここでは、マーケット需要の高いベニザケを中心に、違法な漁獲や、無報告な漁獲が横行。持続可能でない操業が続いているほか、漁獲対象でない魚や海鳥を混獲し、それを海に捨てる海上投棄も問題となっています。

加えて、こうした問題を助長しているのが、不透明な流通です。ロシアの漁船から、日本の食卓までの経路を追跡できる、「トレーサビリティ」の確保や漁獲証明書の不備といった情報が、現状では十分に確認できていないため、問題のあるサケが流通しやすいとの指摘があります。

その中で、今回のセミナーは、日本で極東ロシアのサケ漁業の問題を提起し、その改善をマーケットの関係者と考える初めての機会となりました。

WWFジャパン水産担当の山内愛子は、「このセミナーが日本の水産企業にとって、積極的にロシアのサケ資源保全に取り組むためのきっかけとなることを願っています」とコメントし、今後の活動に向けた第一歩としての意義を述べました。

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ロシア、カムチャッカでのサケ漁の様子

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東京でのセミナー

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川を遡上するベニザケ。カムチャッカにて

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サケの加工工場(ロシア)

セミナー参加者によるコメント

ブライアン・コォウエットさん(ワイルドサーモンセンター)
天然のサケは世界的に広く流通しています。そのため天然サケの保全というのは、各国の水産業界による効果的な取り組みの有無に左右されます。今回、日本の水産業界がこうした取り組みへの一歩を踏み出したことに感銘を受けています。

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ウラジミール・スミルノフさん(サハリンのサケ漁業者)
ロシア人の多くが、ロシア国内の問題のほとんどは、国境の内側で解決するものだと思っています。しかし、ロシアと日本の両国が、太平洋サケという同じ資源に依存しています。日本とロシアが協働で取り組んで始めてこの漁業が抱える問題を解決に導けると信じています。

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和田一彦さん(亀和商店)
昔日本人は国産の魚だけを食べていました。ですが現代では、我々は多くの水産物を外国から輸入しています。このようなグローバルなマーケットでは、日本企業もしっかりと調達する魚を見極め、合法で持続可能なものであることを確認しなくてはなりません。MSC認証の推進というのは、こうした検証のためのツールとなりうるのです。

 

*当日の資料をご希望の方は、communi@wwf.or.jpまでメールにてご連絡ください。資料は郵送になりますので、お名前、お送り先をご明記ください。

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