【COP17現地報告】第2週ハイレベル会合が開幕、2030年目標達成への道筋を示せるか
2026/10/26
- この記事のポイント
- アルメニア・エレバンで開催中の生物多様性条約会議CBD-COP17は、10月27日から閣僚級が参加するハイレベル会合を迎えます。第1週の交渉では、昆明・モントリオール生物多様性枠組(KM-GBF)の進捗を評価する「グローバルレビュー」や資源動員、遺伝資源に関するデジタル配列情報(DSI)の利益配分メカニズムである「カリ基金」などの重要議題をめぐり交渉が続きましたが、主要な論点では依然として各国の立場に隔たりが残っています。2030年目標達成に向けた行動強化につながる具体的な合意を生み出せるかが、第2週の交渉の焦点です。また、交渉の外では、自然に有害な公的インセンティブの改革に向けた議長国アルメニアのイニシアティブをはじめ、ハイレベル会合で各国が行動の加速に向けてどのような政治的コミットメントを示すのかにも注目が集まります。
ハイレベル会合への期待
アルメニアのエレバンで2026年10月19日から開催されている生物多様性条約の第17回締約国会議(CBD-COP17)は、第2週に突入しました。
第1週の交渉では、複数の議題で議論が前進しましたが、CBD-COP17の主要な決定事項である「グローバルレビュー」や資源動員などは難しい交渉が続き、なお合意に至っていません。
【参考記事】生物多様性条約COP17会議について
10月27~28日に予定されているハイレベル会合では、各国の閣僚級が参加して交渉が進められます。
「昆明・モントリオール生物多様性枠組(KM-GBF)」の世界的な進捗を評価する「グローバルレビュー」では、明らかになっている進捗の遅れを、各国における行動の加速につながる具体的な決定へと転換していくことが求められています。
そのためには、信頼のある資金およびその他の実施手段による裏付けが不可欠です。

アルメニアの首都エレバンで開かれているCBD-COP17の会場
グローバルレビュー
グローバルレビューについては、KM-GBFの世界全体の進捗状況を評価した「グローバルレポート」によって明らかになった実施のギャップに対し、CBD-COP17としてどのように対応すべきかをめぐって交渉が行われています。
グローバルレポートで明らかになったギャップには2つの側面があります。
ひとつは、KM-GBFの目標達成に向けて各国が設定した国別目標の野心が十分ではないこと。もうひとつは、設定された目標に対し、実施が十分に進んでいないことです。
交渉では、各国の目標やその実施をどの程度強化すべきか、また、その実現に必要な資金や能力構築、技術移転などの実施手段の不足にどう対処するかをめぐって、依然として意見の隔たりが残っています。
WWFは、これらを対立する論点とは捉えていません。目標と実施の強化、そしてそれを支える資金をはじめとする実施手段に関する約束の履行は、切り離して議論するのではなく、一体として進められる必要があります。
また、グローバルレビューを各国の行動強化につなげるためには、生物多様性損失の根本要因となっている経済・社会システムの変革の推進や、条約の下での実効的なフォローアップ措置も不可欠です。
しかし、これらの論点についても各国の立場に隔たりがあり、まだ合意に至っていません。
資源動員と資金メカニズム
資源動員と資金メカニズムに関する交渉は、とりわけ難航しています。特に大きな意見の隔たりがあるのが、先進国による途上国への公的資金支援の拠出義務や、過去20年間見直されていない資金供与国のリストの拡大をめぐる議論です。
また、こうした資金に関する交渉に多くの時間が割かれていることで、2030年以降の資金メカニズムのあり方や、自然に有害なインセンティブの改革といった重要な論点について、十分な議論を行なう時間が限られています。
WWFは資金動員をめぐる難しい論点について、各国が建設的な議論を進め、2030年の資源動員関連の目標の達成に向けた政治的意思と具体的な前進の道筋を示すことが重要であると考えています。
また、10月26日に開催されたハイレベルイベントで立ち上げられた議長国アルメニアの「ターゲット18」に関するイニシアティブは、自然に有害なインセンティブの改革に向けて各国が本格的な行動を開始するための重要な後押しとなる可能性があります。
【参考記事】【COP17現地報告】自然を損なう公的資金の転換を急げ ~ ターゲット18実施加速へ
遺伝資源に関するデジタル配列情報(DSI)~カリ基金
DSIを利用する企業から年間10億~100億米ドルの資金調達が期待される「カリ基金」は、前回のCBD-COP16で設立・運用開始されました。その実効的な運用をどう実現するかという最大の課題が、CBD-COP17でも引き続き議論の中心となっています。
第1週終了時点で、カリ基金への拠出表明額は5社からの計1万656米ドルにとどまっており、このうち2社は正式な拠出ではなく、拠出の意思表明(プレッジ)の段階にあります。
現在の議論では、各国制度への支払いとカリ基金への拠出による二重負担の問題をどう回避するか、また拠出対象の企業や拠出額の基準をどのように整理するかといった論点が検討されています。
DSIの議題にはこのほかにも多くの論点がありますが、いずれも立場の隔たりが大きく、交渉の進捗は限定的となっています。
WWFは、カリ基金が十分な資金を動員し、生物多様性保全や先住民族・地域社会への利益配分に実質的に貢献できる仕組みとなるよう、CBD-COP17で建設的な議論が進むことが重要だと考えています。

空から見たアマゾン川。地球の肺ともいわれる世界細田の熱帯雨林が広がる。その保全はブラジル一国だけではなく、国際的にも取り組むべき環境課題である。
会議成功に向けたラストスパート
CBD-COP17では、グローバルレビュー、資源動員、DSIに関する利益配分メカニズムなどの主要議題に加え、多くの議題で交渉が続いています。
グローバルレビューで明らかになったKM-GBFの進捗の遅れについて、各国間で程度や重心の違いはあるものの、行動の強化が必要であるとの認識が一定程度共有されています。
閉幕までに、各国の立場の隔たりを埋めながら、その認識を具体的かつ実効的な行動強化の道筋として合意し、各国における実施の加速につなげることができるかが注目されるほか、交渉外のイニシアティブ立ち上げやコミットメントの発表が行動加速の後押しになるかにも期待が集まります。
WWFは、引き続き関係各国への働きかけや情報発信を積極的に行ないながら、会議の成功に向けて尽力していきます。
【参照記事】The will is here at COP17, but can countries find the way(WWFインターナショナル・プレスリリース2026年10月23日)
