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万博予定地の環境保全を求める要望書を提出

この記事のポイント
WWFジャパンは、日本自然保護協会ならびに日本野鳥の会と連名で、日本国際博覧会協会、大阪市、大阪府らに、2025年に開催される大阪関西万博の会場建設予定地である「夢洲」の自然環境の再生および保全を求める要望書を提出しました。夢洲(大阪市此花区)は大阪湾に造成中の人工島ですが、水辺環境には絶滅危惧種を含む多くの野生生物の生息地となっていることが地元NGOの調査から明らかになっています。
目次

夢洲の生物多様性

公益社団法人大阪自然環境保全協会の調査によると、夢洲(ゆめしま)ではこれまでに、鳥類112種(うち絶滅危惧種51種)、植物206種(うち絶滅危惧種および重要種12種)が確認されています。

特に冬に日本にやってくる渡り鳥のホシハジロについては、「ラムサール条約」の参加基準に届く数が飛来していることも指摘されています。

ラムサール条約とは、正式には「特に渡り鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約」といい、生物多様性が豊かなウェットランド(湿地・水辺環境)を保全し、持続的に利活用するための国際条約です。

日本国内では、これまでに53か所のウェットランドが登録されています。

また、環境省が全国で実施してきた自然調査「モニタリングサイト1000」の記録によると、夢洲(調査地名:大阪北港南地区)では、2004~2011年にかけて、トウネン、ハマシギ、シロチドリなどでたびたび1000羽を超える群れが記録・報告されています。

地球規模の渡りを行なうことで知られるシギ・チドリ類ですが、アジア地域においては依然として減少傾向にあることが報告されています。

地球温暖化による影響や密猟など様々な影響が指摘されていますが、中継地、越冬地となる干潟の消失も、危機の大きな理由と考えられています。

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夢洲では環境省レッドリストで絶滅危惧種II類(VU)に指定されているセイタカシギの繁殖も確認されている。

99%が失われた大阪湾の干潟

環境省の自然環境保全基礎調査によると、明治20年以前は大阪府に167haの干潟が現存していましたが、その後、埋立等によりすべてが消失。現在ではわずか2haが記録されるのみとなっています。

夢洲は大阪湾に造成された人工島で、環境再生が目的ではありません。

しかしながら、これまでに夢洲で確認された渡り鳥をはじめとするさまざまな野生生物の記録は、大阪湾がかつて生物多様性の豊かなエリアであったこと、また、今なおそのポテンシャルは失われていないことを示しています。

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夢洲の造成途上でできた湿地環境。一時的環境でありながら多くの野生生物が生息している。

SDGs貢献を掲げる万博のあり方とは

大阪・関西万博は、その開催意義に、国連の「SDGs(持続可能な開発目標)達成への貢献」を掲げています。

SDGsとは、国連が定めた持続可能な開発のための2030年の17の国際目標です。

貧困や教育、健康、不平等の解消など、社会・経済の目標とともに、森や海の保全、気候変動対策などの環境面の目標が定められています。

今、政府や自治体のみならず、多くの企業や市民団体もがSDGsの達成に向けて取り組んでいます。

大阪・関西万博が目指すSDGs達成の貢献とはどのようなものになるのでしょうか。

その開催意義と貢献のあり方が問われる中で、WWFジャパンは2022年3月22日、日本自然保護協会、日本野鳥の会と連名で、以下の4点について、2025年日本国際博覧会協会、大阪市、大阪府、環境省、内閣官房国際博覧会推進本部に対し、要望書を提出しました。

  1. 夢洲の土地造成事業を見直し、大阪・関西万博の会場整備計画の「ウォーターワールド」は、万博会期後もシギ・チドリ類などの水鳥が生息できるように、人工的な構造物による整備ではなく、湿地と干潟を形成する計画に変更すること。
  2. 夢洲の未利用地にコアジサシの繁殖地を整備すること。
  3. 夢洲は、万博開催後も自然観察・野鳥観察など自然体験の場として活用し、大阪湾沿岸域の重要な湿地の保全と利用の面から、南港野鳥公園と合わせて、ラムサール条約湿地の登録を目指すこと。
  4. これらを具体的に解決し実現するうえでも、関係する環境団体や専門家など多様な関係者とのオープンな協議会の場を早急に設けること。

人工湿地において生物多様性を維持・向上させることは、容易なことではありません。

しかしそれでもなお、失われた自然環境を復元し、生きものの暮らしを守り、人々に伝えていくことは、大阪・関西万博が目指すべきSDGs貢献であり、レガシーになるとWWFジャパンは考えます。

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コアジサシ(環境省レッドリスト:VU)。砂浜や海岸環境の悪化による繁殖適地の減少により個体数の減少が危惧されている。

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