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動物愛護法が改正 野生動物の保全に向けた展望と課題

この記事のポイント
2019年6月12日、国会で「動物の愛護及び管理に関する法律(動物愛護法または動愛法)」が改正されました。この法律は、ペットなどの飼育や愛護だけではなく、自然環境や野生生物の保全にも大きく関係する法律です。なぜならば、ペットなど一般に飼育されている動物が逃げたり、捨てられたりして外来生物となる問題や、絶滅のおそれのある野生動物が数多くペットとして取引され、その需要が密輸事件まで引き起こしている現状を、規制するものでもあるからです。このため、今回の法改正にあたり、WWFジャパンは、野生生物保護の観点から、国会議員への要望と情報の提供を行なってきました。

求められてきた「動愛法」の改正

動物の愛護及び管理に関する法律(通称、動物愛護法、または動愛法)が、2019年6月12日に、国会で改正されました。

これは、ペットや家畜など人間の飼育下にある動物の管理や取扱いについて規定する法律で、こうした動物の福祉などの観点から注目されることの多い法律です。

しかし、この法律は本来、人が飼育していない野生動物や、その生息環境の保全にも、大きくかかわる要素を持ったものでもあります。

たとえば現在、日本ではさまざまな動物がペットとして飼育・取り引きされていますが、そうした動物の中には、希少な海外原産の野生動物も多く含まれています。
ペット目的の捕獲が原因で、生息国で絶滅の脅威が高まっている種や、すでに国際取引の規制に対象となり密輸されている種も少なくありません。

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ペットとして人気が高く密輸入が相次ぐコツメカワウソとインドホシガメ

また、飼育されているペットが逃げ出し、野生化して日本国内の在来の野生生物を捕食する「外来生物」を生み出してしまう問題も生じています。

これらはいずれも、不適切な管理が原因となっている問題です。
しかし、こうした飼育や管理、ペット取扱事業者の要件を規定し、取り締まるための動愛法は、これまで内容に不備が多く、問題の予防や解決に十分な貢献ができてきませんでした。

このため、対策と改善の一環として、「動愛法」の改正が必要とされてきたのです。

どう「法改正」を行なうべきか?

今回、国会で行なわれた「動愛法」の法改正は、前回の2012年から7年を経て改めて改正が議論されてきたものです。

この法律は、国会議員が提案する「議員立法」として国会で審議されおり、政党を越えた議員連盟において、特にペットとして販売されるイヌの販売開始時期を生後7週齢から8週齢に引き上げるといったことや動物虐待への厳しい厳罰化などを中心に検討が進められてきました。いずれにしても、野生生物や自然環境の保全を、強く意識したものではありませんでした。

そこでWWFジャパンは、自然保護を推進する観点から、国会議員らへ要望書を提出。

さらに、専門家による国会内での勉強会を開催しました。
この議員会館内での勉強会では、現行の「動愛法」の課題を指摘しつつ、日本におけるペット飼育や管理がどのように環境問題につながっているかを議員に伝え、自然保護の観点を盛り込んだ法改正を求める働きかけを進めてきました。

WWFジャパンが特に要望した点は、以下の4点です。

  1. 法律の目的に「自然環境への配慮」を明確に入れること
  2. ペットから人に感染する可能性のある感染症への対応を法制化すること
  3. 外来生物を増やさないよう、飼い主に厳しい飼育の「義務」を課すこと
  4. 絶滅のおそれのある種を取扱う事業者を厳しく管理する仕組みを導入すること

今回、法改正の前後に意見交換や要望を行なった国会議員。左から福島瑞穂議員、生方幸夫議員、武田良介議員

改正された法律と残された課題

今回の「動愛法」の改正案は、生方幸夫議員、福島みずほ議員をはじめ多くの関係する議員らによって最終的にまとめられて提出され、衆参両院での審議を経て、2019年6月12日に国会で法改正され成立しました。

今回の改正により実現した、最も重要な点は、今後ペットとして取引されるイヌやネコなどの愛玩動物には、マイクロチップを埋め込むことが義務化されたことです。

これは、動物の体内に飼い主などのデータを入れた小さなチップを入れておくことで、一匹ごとの所有者が誰かを特定できるものです。もしも、ずさんな飼い方をして、野外に放したり、逃げられたりしても、これを調べれば、飼い主が分かることになり、悪質な飼い主にはその責任が問われることになります。
つまりこれは、各地でイヌやネコが新たに野生してしまい、外来生物として在来の生態系に悪影響を及ぼす問題を予防する、一定の効果が期待されます。
しかし、こうした点を除くと、今回改正された法律の内容には、まだ多くの課題が残りました。
たとえば、以下のような点です。

  1. すでに飼われているペットについては、マイクロチップの埋め込みが義務化されていない。飼い主が自主的に行なう「努力義務」の状態。
  2. 絶滅のおそれのある野生動物の取引を行なう動物取扱事業者の登録が、許可制にならなかった。事業者には生き物に応じた飼育施設の整備や帳簿管理が求められるのみ。
  3. なによりも、この法律の目的として、野生動物や生態系への影響配慮が追加されなかった。飼育動物の安全と、人間やその生活環境を守ることのままである。
  4. 動物由来の感染症が私たちの健康に及ぼす影響について、継続して検討する状態。

残念ながら、この状況では、外来生物問題への対応や、希少な野生動物をペットにする自然環境への問題解決は十分ではありません。

せめて、野生動物を取り扱う業者については、十分な知識と設備を有した事業者だけが取り扱えるよう、許可制を導入したり、取引の履歴をデータベース化して、追跡調査ができるようにするなど、より厳格な制度化を、法律として規定してゆく必要があります。

外来生物や、違法行為を含むペットを目的とした野生動物の取引問題については、すでにその影響が明らかになっており、外来生物による国内の希少な野生動物の捕食が確認されています。

奄美群島に生息する希少固有種のアマミノクロウサギとケナガネズミ。これらの種は奄美群島で外来生物による捕食被害が深刻な問題となっている(撮影:池村茂氏)

 

今後は新たな法律の制定も視野に入れながら、引き続き自然環境への配慮と、その実現に向けた改善を、WWFジャパンとしても働きかけていきます。

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