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国内での象牙取引で違法事例再び 古物商ら12人が書類送検されるも不起訴に

2017年8月25日に象牙9本を違法に取引した容疑で、東京都内の古物商と従業員、その顧客ら12人が書類送検されるという事件が報道されました。これは、6月20日に同じく18本の象牙を違法に取引した業者が書類送検された事件に続き、2017年で2件目の摘発となります。世界では、ゾウの密猟と象牙の違法取引に歯止めをかけるため関係国が抜本的な対策に着手する中、日本国内で相次ぐ違法な象牙の取引。国内市場管理の問題点があらためて浮き彫りになっています。

象牙をめぐる「種の保存法」違反での摘発

2017年8月25日、無登録の象牙9本を違法に取引した疑いで、東京都台東区の古物商が警視庁により書類送検されました。

書類送検されたのは、古物商の社長とその従業員、そして顧客ら計12人で、法人としての古物商と、顧客が勤務していた法人の計2社です。

容疑は「種の保存法(絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律)」で義務づけられる国への「登録」をしていない象牙の違法な取引。

報道によれば、2015年12月から2016年1月にかけて、神戸市の顧客7人から、環境省に登録をしていない象牙9本を引き取ったとのことです。

「種の保存法」では、全形象牙(牙の形状を保持したもの)については、過去に日本に合法的に輸入された、環境省に登録されている象牙以外は、国内での取引を禁じています。

これは、象牙をはじめ、野生生物を過度な取引から守る国際条約「ワシントン条約(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)」に寄与するため、「種の保存法」が定めた取り決めです。

床の間象牙とも言われる、全形象牙

この登録を行なわず、同法に違反して象牙を取引した場合、個人で5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金(または併科)、法人では1億円以下の罰金という重い罰が科せられています。

今回の事件は、6月に同様のケースで別の業者が書類送検された例に続く、2017年で2件目の摘発。しかし、これらの違法事例では、容疑者が不起訴処分になるケースも少なくなく、実際、この事例においては8月29日付けで、東京地検において不起訴処分が決定しました。

認識の甘さが垣間見られる日本国内の対応

本来なら規制をよく理解した上で、法律を遵守すべき立場にある業者が、このような違法な行為に及んだ事実は、「種の保存法」による国内取引管理が、いまだ十分ではない問題点を指摘するものといえます。

実際、この古物商は2012年9月から2015年12月までの3年ほどの間に、個人から158本(合計1,325キロ)の全形象牙を買い取り、業者に転売していました。

こうした象牙の多くは、一般的に、個人が自宅や事務所の飾りとして所有していた古い象牙で、1989年に象牙の国際取引禁止が適用される前に輸入されたものであり、現在アフリカで起きている大規模な密猟による象牙である可能性は低いと考えられています。

しかし、日本国内では、象牙の取引の実態が正しく把握できておらず、万一そうした違法な象牙が新たに紛れ込んだとしても、それを見分ける手段が十分にありません。

また、今回送検された業者が過去に取引していたという158本の象牙に関しても、今後さかのぼって追跡捜査が行なわれない可能性もあるため、この中に出所の不確かな象牙が含まれていたとしても、迅速に確認できないのが、今の日本の現状です。

さらに、日本では2011年頃から、象牙の違法輸出が急増しています。
これは海外から違法な象牙が密輸されるのではなく、「日本から海外へ」向けた取引が行なわれている、ということです。

特に多い取引先は中国で、2011年から2016年までの間に、日本から中国へ違法に輸出された象牙は、分かっているだけで合計2.3トンにのぼりました。このうちの1.5トンが全形象牙でした。

2015年には組織的密輸ネットワークも摘発されていますが、こうした押収や取り締まりのほとんどは中国当局によるもので、日本政府としての動きはいまだ不十分なままです。

国際的にも問われる日本の姿勢

大規模な象牙の押収があった場合、アフリカゾウの密猟や、国際犯罪ネットワークの関与が考えられることから、取引ルートの徹底した犯罪捜査をおこなうことが重要です。

また、ワシントン条約でも積極的にDNA調査などの科学的捜査を実施することを促していますが、このような捜査をする体制が日本には整っていません。

加えて、日本の国内にどれくらい、個人の所有する全形象牙がどれくらい存在するのかもわかっていません。

こうした状況の中、今回の事件のように違法な国内取引が続き、さらに海外の市場に象牙を流出させて、密輸や密猟を活性化させるおそれのある日本の現状は、国際的に見ても許されるものではありません。

特に、中国国内での規制が強化される中、国内規制の緩い日本が、今後新たな象牙の密輸先や経由地として、犯罪組織に利用される可能性もあります。

今回の事件からも明らかなように、管理の緩い古物市場の実態把握と管理強化は、アフリカゾウの保護と、国際的な象牙の違法取引根絶に真剣に取り組む姿勢を、日本政府が示す上でも急務といえるでしょう。

これまでに象牙のオンライン取引をはじめ国内における象牙取引の実態を調査し、管理体制の問題と改善策を提言してきたWWFジャパンとトラフィックは、引き続き日本国内の違法象牙ゼロ実現を強く訴え、政府に対し対応の強化を求めるとともに、これらの管理が適切に行なわれないのであれば、象牙の国内取引の禁止を含めた、厳格な措置を取ることも必要であると考えています。

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