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ワシントン条約第17回締約国会議(CITES COP17)報告:成果と求められる努力

2016年9月24日に、南アフリカ共和国のヨハネスブルグで開幕したワシントン条約(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する法律:CITES)の第17回締約国会議(COP17)が、予定を1日前倒しして10日4日に閉幕しました。過去最大規模となった今会議には、世界各国から政府代表、国際機関やNGO(民間団体)のスタッフら3,500人以上が参加。これまで最多のサイドイベントが開催され、メディアの注目も非常に高いものとなりました。

得られた成果と締約国会議の変化

COP17の様子

今回のCOP17は、大きな成果を手にした一方で、今後に向けたさまざまな課題が明らかにされた会合となりました。

得られた成果や注目された点として挙げられるのは、まず非常な危機が指摘されていたセンザンコウが全種、商業目的の国際取引を禁止する決議が採択されたこと(附属書Ⅰへの掲載)。

そして、アフリカゾウの密猟や、象牙の違法取引に大きく関与している国の国内市場の閉鎖を求める合意が交わされたことです(決議10.10の改正)。

また、これらの他にも、今回のCOPでは、そもそもの違法な野生生物製品に対する需要の削減や、市場でのトレーサビリティ(追跡可能性)の問題、また飼育繁殖した動植物の扱いや、天然製品との区別が難しい合成製品、インターネットを介した違法取引(サイバー犯罪)、規制を骨抜きにする深刻な汚職問題といった課題についても議論が行なわれました。

このように、問題を「テーマ」という視点で捉え、解決の道を探る本格的な検討は、個別の野生生物種の保全を軸としてきたワシントン条約の会議が、新たなステップを踏み出したことを物語るものであり、大きな進捗といえます。

CITES COP17の日程(9日間)
9月24日 全体会合
25日
~10月3日
第一委員会 第二委員会
各委員会では、すべての議題について採択、否決、変更案の採択を行なう。全会一致で合意できない場合は、投票で決定する。附属書の改正など重要な案件は、2/3以上の賛成票で採択される。
条約による国際取引の規制対象となる種が掲載される「附属書」の改正や、個別の種の保全に関する議論 予算を含めた条約の運営管理や取引規制の施行に関する検討など
ワーキング・グループ
必要に応じ、随時つくられる。関係する締約国とWWF、トラフィックなどNGOのメンバーも参加。
10月4日 全体会合(全議案の採否確定)

深刻化する危機とこれからの課題

一方で、こうした取り組みが求められる背景として、野生生物をめぐる深刻な危機も、今回あらためて明らかにされました。

現在、ワシントン条約の附属書に掲載されている世界の動植物の種数は、実に3万5,000種以上。

さらに近年は、密猟や密輸などの「野生生物犯罪」が、国際的な規模で深刻化かつ複雑化し、附属書の掲載による国際取引の規制だけでは対応しきれない事態が生じています。

これに伴い、ワシントン条約の会議にも、対応に必要な提案が各国から非常に多く出されるようになりました。

今回のCOP17 の成功はまさに、こうした対応の必要性について議論が行なわれ、その具体的ないくつかの施策が合意された点にあったといえます。

しかし、ここで合意された「決議」や「決定」が実際に実行できるかは、各締約国政府が自国内で法規制を作ることができるかどうか、さらにそれを運用し、警察や税関などの法施執行官が違法取引に加担することの無いように、汚職が撲滅できるかどうかにかかっています。

問われる各国政府の姿勢と取り組み

ワシントン条約での交渉は、各国の経済的な利益が絡み、外交的な駆け引きが常に影響を及ぼす、とても複雑なものです。

しかし、全ての締約国は、条約の前文にある「野生動植物が現在及び将来の世代のために保護されなければならない地球の自然体系のかけがえのない一部をなすものであることを認識」し、自国の利益に固執せず、協調しながら、これらの取り組みを実践してゆかねばなりません。

WWFとIUCNの共同プログラムで世界の野生生物取引を監視するトラフィックと、WWFは、今回のCOP17でもオブザーバーとして参加。

議論の場となった2つの委員会では、野生生物取引調査の専門家として意見を述べ、またワーキング・グループのメンバーとして、容易に結果が得られない議論の調整や、提案の対案や修正案の作成などを手掛けました。

COP17で、話し合いのテーブルに載せられた議題は87件。附属書改正提案は62件にのぼり、これについては採択51件、否決5件、6件が撤回という結果になりました。

しかしこの一連の決議、決定の採択は、これからの新たな取り組みに向けた第一歩にすぎません。

次回のワシントン条約締約国会議COP18は、2019年に、スリランカで開催されます。

WWFとトラフィックは、このCOP18を見据えながら、今回のCOP17で決まった合意の実施を強く働きかけてゆきます。


CITES COP17 における決定・決議に関する報告(トラフィックまとめ)

【附属書の掲載や、個別の種の保全に属さないテーマとしての課題と合意】

ワシントン条約では、各国の政府代表により出される各提案を、「決議」、「決定」と呼ばれる形で文書化し、採否を決めます。これらの中には、附属書の掲載による国際取引の規制だけではカバーできない実際の施策に関して、各国に協力を促すものも含まれており、条約事務局、関係する各締約国の政府が、その実施に責任を持ちます。

これまで、ワシントン条約の会議では、個々の種に関する課題解決に向けた議論が主に行なわれ、「決議」「決定」による執行課題に関わる取り決めも、それが主流でした。

しかし、今回のCOP17では、近年深刻かつ複雑化する「野生生物犯罪」に対処するための提案がとても多く、その施策が具体的に決められました。

需要削減について

今回のCOP17では、野生の動植物に対する「需要削減」が非常に注目されました。

そして、違法取引に対処する手段の一つとして新たに、各国の消費者の行動を変化させることを求める決議が合意されました。

新決議では「違法な製品への需要を削減する」ことの重要性を強調した上で、締約国に対し、適切に対象を絞り、根拠を明らかにした上で、違法に獲られ取引された野生生物製品の利用に対し、消費者の行動を変えるよう求めるものです。

トラフィックの消費者行動変容コーディネータのゲイル・バーゲスは、「密猟と違法取引をなくすための規制努力も、違法な製品への需要を抑える努力なしには、効果がないでしょう」と需要削減の必要性を語りました。

トラフィックが日本の消費者を対象に実施した意識調査でも、一部の消費者は、野生生物製品への認識が低いことや違法性へ無関心であることが示されました。過剰な需要を生み出さないため、消費行動の変化につながる普及啓発が必要です。

飼育繁殖について

野生で捕獲した動植物を、「飼育繁殖した個体」として偽り、合法的に販売しようとする「ロンダリング」への対処について、新しい決議と決定が採択されました。

条約事務局は現状を把握するため、飼育繁殖とされている取引についての調査をおこない、必要に応じて締約国への勧告などを行ないます。

この偽装の問題は、日本も無関係ではありません。例えば、日本でも東南アジアから輸入されペット用に広く販売されている爬虫類のトッケイヤモリです。インドネシアで野生捕獲したトッケイヤモリを繁殖したものと偽って取引していることがトラフィックの調査でわかっています。

合成製品について

締約国は、ワシントン条約の附属書に掲載されている種からバイオエンジニアリングによって作られた製品が、野生の個体へ悪影響を与えないように適切に規制することに合意しました。

今後、条約事務局などが条文や既存の決議、決定の内容の見直しを行ないます。

この決定の採択は、次のようなケースを想定しています。

サイの角は需要が過大で、そのために毎年1,000頭を超えるサイが密猟されています。そこで、代替品で過剰な需要を賄おうという意図のもと、人工のサイの角がつくられました。しかし、これを本物と区別するのが困難なため、かえって問題が生じています。

こうした例が他でも発生すると、真贋の区別に高度な技術が求められ、多くの労力が割かれることになるほか、全体の流通量などの把握も難しくなります。

トラ牧場について

トラフィックは、会期中にトラの取引状況についてまとめた報告書『Skin and Bones Re-examined(皮と骨になり果てる:再点検)』を発表。2012年~2015年に押収されたトラのうち少なくとも3割がトラの飼育繁殖施設、いわゆる「トラ牧場」からのものであることを明らかにしました。

こうした事実を受け、各締約国は今回のCOP17で、アジアに生息するネコ科の繁殖施設の管理強化と、それに関係する取引の精査を行なうこと決めました。また、違法取引への関与を特に指摘されたラオスは、今後トラ牧場を順次閉鎖していくことを宣言しました。

【附属書改正に関する決議】

トラフィックが注目していた附属書改正提案とその結果。

種名提案内容トラフィックの見解COP17の結果
センザンコウ全種 附属書Ⅱから附属書Ⅰへ移行 提案支持 可決
附属書Ⅰへ移行
アフリカゾウ 附属書Ⅱの注釈変更 提案に反対 否決
附属書Ⅱのまま、注釈変わらず
アフリカゾウ 附属書Ⅱの個体群を附属書Ⅰへ移行 提案に反対 否決
附属書Ⅱの個体群は附属書Ⅱのまま
ハヤブサ 附属書Ⅰから附属書Ⅱへ移行 提案支持 否決
附属書Ⅰのまま
ヨウム 附属書Ⅱから附属書Ⅰへ移行 提案支持 可決
附属書Ⅰへ移行
ミミナシオオトカゲ 新たに附属書Ⅰへ掲載 提案支持 変更案可決
附属書Ⅱへ掲載
クロトガリザメ 新たに附属書Ⅱへ掲載 提案支持 可決
附属書Ⅱへ掲載
ツルサイカチ属全種 新たに附属書Ⅱへ掲載(附属書Ⅰ掲載種を除く) 提案支持 可決
注釈を付け附属書Ⅱへ掲載

センザンコウ:

食肉や伝統薬の原料として利用することを目的とした乱獲と違法取引により、非常な危機が指摘されていたセンザンコウが8種全て、条約の附属書Ⅰに掲載されることが決まりました。

世界で最も密猟されている動物といわれるセンザンコウ8種は、これまで附属書Ⅱに掲載され、輸出国の許可があれば国際取引が可能になっていました。しかし、伝統薬や食肉としての需要が増大し、密猟・違法取引が後を絶たないことから、商業取引の禁止を意味する附属書Ⅰへの移行が提案されました。附属書Ⅱで規制できないのだから、附属書Ⅰに掲載しても意味がないのではないかと効果を疑う声もありましたが、生息国が訴えるセンザンコウの窮状を他の締約国も理解し、マライセンザンコウとコミミセンザンコウに関する提案を除き全会一致で提案が可決されました。インドネシアが附属書Ⅰへの移行に懸念を表明した2種(マライセンザンコウとコミミセンザンコウ)は、投票の結果、賛成114票、反対1票の圧倒的大差で可決されました。附属書の改正が効力を発するのは、90日後、2017年1月2日からです。来年からは、すべての国際取引は違法となるため、輸出許可の有無や許可書が偽造でないかなど調べる必要がなくなり、取り締まりし易くなることが期待されます。

アフリカゾウ:

アフリカゾウは現在、ボツワナ、ナミビア、南アフリカ共和国およびジンバブエの南部アフリカ諸国に生息する個体群が附属書Ⅱに、その他の個体群が附属書Ⅰに分割掲載されています。附属書Ⅱの個体群の生息国であるナミビアとジンバブエは、実質的な象牙の国際取引の禁止措置である附属書の注釈を削除することで取引規制の緩和を求める提案をしました。一方で、附属書Ⅰに掲載されている個体群の生息国を中心とした国々は、全てのアフリカゾウ個体群を附属書Ⅰにすることで、象牙を含むアフリカゾウの商業取引を全面禁止とすることを求める提案を行ないました。南アフリカ共和国、タンザニア、地域開発をサポートする団体などがヒトとアフリカゾウの衝突の問題や地域コミュニティには保全を行うことへの利益が必要であるという観点からこの提案に支持を表明しました。生息国でなく取引にも関係していないブラジルは、生息国の意思を尊重すべきだという意見を述べました。規制強化に対しては、密猟が続く現状には国際社会が一致して明確な取引禁止の姿勢を示すことが不可欠であるという考えや、原則的に分割掲載は適当ではないという意見が述べられました。対立した提案は、いずれも投票の結果、否決されました。今後も現在の分割掲載が維持されることになります。トラフィック/WWFは、これらの両極端な提案には反対していましたので、否決されたことを評価しています。なぜなら、密猟の根本的な原因は、生息国、取引の中継国や消費国での政治的な腐敗や法規制と法の執行能力の欠如、東・東南アジアでの富裕層の増加に伴う過剰な需要であると考えているため、国際取引の賛成国と反対国の間の堂々巡りの議論は、本質的な問題から目を逸らせることになってしまう危険があると考えているからです。

ハヤブサ:

ハヤブサは、COP17に附属書改正提案がなされた陸生動物の中で唯一日本にも生息する種です。附属書Ⅰから附属書Ⅱへ移行する提案を支持する国が多くありましたが、一部の国が自国の小さな個体群への影響や違法取引の懸念を示したことから、投票が行われました。28票を要するEU※が反対を表明したため、賛成票は投票数の2/3に届かず、提案は否決されました。附属書Ⅰ掲載の現状が維持されます。

※EUは、地域的経済統合機関として2015年にCITESへ加盟しました。投票の際には、EUとして賛成か反対の一方にまとめて28票を投じるか、EU加盟国がそれぞれ個別に投票をおこなうか選ぶことができます。

ヨウム:

附属書Ⅱから附属書Ⅰへの変更を提案されたヨウムについても、活発な議論が交わされました。多数の国が提案を支持する一方、コンゴ民主共和国、南アフリカ共和国、ノルウェー、日本などは反対を表明しました。生息国のひとつであるコンゴ民主共和国は、今回の附属書改正提案の根拠として提出された情報は正確でなく、自国に生息する個体群は危機に瀕していないと訴えました。投票が行われ、賛成95票、反対35票で提案は可決されました。この提案については、採択までにもう一山ありました。委員会の決定を確定する最終日の全体会合の場でカタールが再検討を求めたのです。結局、再検討の要求は認められず、附属書Ⅰへの移行が確定しました。これを受け、カタールは、ヨウムの附属書Ⅰ掲載を留保すると表明しました。留保は、条約で締約国に認められているもので、留保の手続きを採ると、その規制内容に関しては締約国ではないものとして扱われます。ただし、締約国が取引相手となる場合には、輸出許可書に代わる証明書の発行が必要となります。

ミミナシオオトカゲ:

かねてからトラフィックが密猟と違法取引の急増に警鐘を鳴らし、ワシントン条約での規制の必要性を強調していたミミナシオオトカゲは、COP17で附属書Ⅰへの掲載が提案されました。すべての生息国で捕獲や輸出が禁止されているにも拘わらず、日本や欧州で2012年以降販売が確認されるなど、国際取引に対する規制がないことによる取引の増加が大きな脅威になっていると考えられています。附属書Ⅰへの掲載の議論では、生息状況に関する情報の不十分さが指摘されました。結局、附属書Ⅰ掲載ではなく、附属書Ⅱへ載せることに提案内容を変更し、採択されました。来年からミミナシオオトカゲの輸入には輸出国による許可が必要になります。日本国内の取引は規制されませんが、少なくとも輸入に際しては、輸出許可書が求められるため、生息国で密猟された個体が輸入される可能性は低減すると考えられます。

クロトガリザメ:

近年附属書へ掲載されることが増えてきた水産種が、COP17でも提案されました。クロトガリザメは、バハマなど21か国とEUにより共同提案され、附属書Ⅱへの掲載が話し合われました。ニカラグア、日本、アイスランドなどは、水産種の管理は地域の漁業管理機関が行うべきであること、附属書掲載の生物学的基準を満たしていないことなどから提案に反対し、投票によって採否を決めることになりました。その結果、賛成111票、反対30票で採択されました。なお、クロトガリザメに関する取引規制の開始は、12ヶ月延期することも併せて合意されました。

なお、前回第16回締約国会議までに、附属書にはすでにサメ8種が掲載されていますが、日本はこれらサメの掲載について、留保を付しています。

木材種(ローズウッド):

COP17では、商業的に国際取引されるさまざまな木材種の規制も決まりました。代表的なものが、中国などで高級家具に利用され、日本でも楽器等に使われている「ローズウッド」です。COP17では一般にローズウッドと呼ばれ取引されているツルサイカチ属全種、ブビンガ属 3種およびプテロカルプス・エリナケウスが附属書Ⅱに掲載されることになりました。日本は木材・木材製品の一大輸入国として、輸入される木材・木材製品が合法的・持続可能な形で伐採・取引されたものであるよう、輸入体制の整備だけでなく、原産国や中継国との連携を強化することが求められます。

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