米中も批准!日本はパリ協定列車に乗り遅れないように!


先日、大きく報道されましたが、温室効果ガスを排出する世界の2大国、アメリカと中国が「パリ協定」に批准することを発表しました。

いずれ世界全体の温室効果ガスの排出をゼロにすることを目指す画期的な世界の約束「パリ協定」。

昨年末の国連会議で成立したこの協定は、批准(参加の意思表示)する国が55か国を超え、その国々の排出量が世界の排出量の55%を超えることで、発効します。

「京都議定書」は、発効までに7年半もかかってしまいましたが、パリ協定はこの年内で発効しそうな勢い!

というのも、9月のG20前に姿勢を明らかにした米中を含め、9月15日現在ですでに27カ国が批准(出典:UNFCCC)。さらに32カ国が年内の批准を表明しているからです(出典:Climate Analytics)。

一年前、誰がこんな展開を想像できたでしょうか。

特に、京都議定書を批准しなかったアメリカと、世界第一位の排出国となりながら、COP15(2009年)でネガティブな姿勢が目立った中国。

これまで、温暖化防止の国際交渉を翻弄してきた両大国が、今回は率先して批准したことで、最も野心的な温暖化対策の国際約束「パリ協定」は、現実味をぐっと増したのです。

そこでちょっと顔が青ざめているのが欧州連合(EU)。

もともと自他ともに認める温暖化交渉のリーダーですが、EU加盟国の中で削減目標をどう分担するかが決まるまでは批准できないと言われているので、2016年内の批准はほぼ不可能でしょう。

批准しない、という選択は考えられませんが、協定がもし年内に発効した場合、EUはパリ協定列車のスタート時には間に合わない!ことになります。

翻ってわが日本はどうでしょう?

日本は排出量全体の3.8%を占める、世界第5位の排出国。

しかも、今年5月の伊勢志摩G7では、各国に「パリ協定の早期の批准」を呼びかける宣言をホスト国としてとりまとめました。

その日本が、パリ協定の発効に乗り遅れたら、言行不一致も甚だしいことになります。

日本がこれからの重要な交渉で発言力を保つためにも、列車に乗り遅れてはなりません!

「パリ協定」は早ければ、今年11月7日から開かれる国連の気候変動会議COP22(マラケシュ会議)で、発効する可能性があります。

これに間に合わせるためにも、日本には10月7日*までに協定に批准することが望まれます!
(温暖化担当 小西)

  • *パリ協定は、批准した国が55か国を超え、その排出量が55%を超えてから30日後に発効する

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専門ディレクター(環境・エネルギー)
小西 雅子

博士(公共政策学・法政大)。米ハーバード大修士課程修了。気象予報士。昭和女子大学特命教授、京都大学院特任教授兼務。
中部日本放送アナウンサーなどを経て、2005 年に国際 NGO の WWF ジャパンへ。専門は国連における気候変動国際交渉及び国内外の環境・エネルギー政策。2002 年国際気象フェスティバル「気象キャスターグランプリ」受賞。環境省中央環境審議会委員なども務めている。著書『地球温暖化を解決したい―エネルギーをどう選ぶ?』(岩波書店 2021)など多数。

世界197か国が温暖化対策を実施する!と決意して2015年に国連で合意された「パリ協定」の成立には感動しました!今や温暖化対策の担い手は各国政府だけではなく、企業や自治体・投資家・それに市民です。「変わる世の中」を応援することが好きな小西です♪

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