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韓国で「野生動物カフェ」が全面禁止に!


お隣韓国より、驚きのニュースが飛び込んできました。2022年1月14日、韓国環境省が韓国全土に159軒ある「野生動物カフェ」を3~4年の猶予期間の後、全て禁止とする方針を発表。

さらに、これらのカフェで飼育されているアライグマ、ミーアキャット、プレーリードッグや各種両生爬虫類などの動物たちは、韓国中部に位置する国立生態院および新設する2つの保護施設に移すことが伝えられました。

特にアライグマは、本規制に伴い野外に遺棄された場合、生態系に大きな悪影響を与えると予想されるため、個体の試験的な登録も開始されるとのこと。

アライグマ(Procyon lotor)は日本でもペットブーム後大量に野外に遺棄され、現在では特定外来生物に指定されています。
© Frank PARHIZGAR / WWF-Canada

アライグマ(Procyon lotor)は日本でもペットブーム後大量に野外に遺棄され、現在では特定外来生物に指定されています。

同時に、野生動物を飼育することのできる「動物園」のライセンスも現行の登録制から、5年間後には審査を伴う「許可制」に変更となり、基準に満たない施設は閉鎖となります。

これらの韓国政府による「野生動物カフェ」に対する思い切った施策の背景には、展示利用される野生動物の動物福祉が不十分とする声や、新型コロナウイルスパンデミックにより感染症をはじめとする公衆衛生への懸念が高まったことが背景にあります。

同様の「野生動物カフェ」は日本にも数多く存在しますが、残念ながら、日本では野生動物のペット利用に伴う問題や改善策についての議論が十分になされていません。
また「野生動物カフェ」は動物福祉や感染症のリスクに加え、野生動物がペットとして安易に飼えるという誤解を広めたり、ペットとして飼いたいという需要をいたずらに喚起するおそれがあります。

現在、こうしたペット利用は、さまざまな野生動物を絶滅の危機においやる世界的な問題となっています。韓国政府の「野生動物カフェ」全面禁止は、野生動物の保全の観点でも効果が期待されます。

日本においても野生動物のペット利用について議論がすすむよう、WWFジャパンも働きかけを続けていきます。(野生生物グループ 岡元)

野生動物であっても「飼育繁殖された個体ならばOK」とは限りません。野生動物を飼育下繁殖個体と偽るロンダリングも横行していますし、繁殖個体の親の由来まで確認することは困難です。また、現在の日本では、飼育下繁殖個体と密猟や密輸による野生個体の識別ができない、という大きな問題があります。
© Kari Schnellmann

野生動物であっても「飼育繁殖された個体ならばOK」とは限りません。野生動物を飼育下繁殖個体と偽るロンダリングも横行していますし、繁殖個体の親の由来まで確認することは困難です。また、現在の日本では、飼育下繁殖個体と密猟や密輸による野生個体の識別ができない、という大きな問題があります。

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自然保護室(野生生物)、TRAFFIC
岡元 友実子

獣医学修士(ソウル大学)/ 学芸員 / IUCN カワウソ専門家グループメンバー
学部から大学院に至るまで、野生動物について専門的に学ぶ。修了後、上野動物園など日本および台湾での動物園勤務を経て、2021年WWFジャパン入局。現在はペットプロジェクトに関連した業界変容を担当。

学生時代に海外で野生のカワウソを見たことをきっかけに、大のカワウソ好きに。「二ホンカワウソ絶滅」の悲劇を二度と起こしてはならない!の決意を胸に日々野生動物保全のため奮闘中。特技は語学(英語・中国語・韓国語)。

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