世界最小のイルカが絶滅寸前の危機に


ヨウスコウカワイルカという動物をご存じでしょうか。その名の通り、中国の長江(揚子江)にすむ珍しい淡水のイルカです。

しかし、2006年の調査で1頭も確認できず、絶滅したのではないか、というニュースが流れました。

こんなにも科学が進歩して、自然保護活動も盛んになった21世紀に、私たちの目の前で野生生物が絶滅するなんて...。当時大学生だった私は深い衝撃を受けました。

そして先日、今度は別のイルカが絶滅寸前、というニュースが流れました。

世界最小のイルカの一種、ヴァキータ(コガシラネズミイルカ)

ヴァキータ(コガシラネズミイルカ)という、メキシコに生息する、世界最小のイルカの一種です。

長年100頭から多くても数百頭とされ、絶滅が危惧されてきましたが、今年2月に発表された最新の調査結果によると、残る個体は推定30頭。

専門家は早ければ2018年には絶滅する恐れがあるという予測も指摘されています。

危機の原因は、トトアバという大型魚を獲る網に誤ってかかり命を落とす「混獲」。

メキシコのカリフォルニア湾に生息する。

同じく絶滅が危惧されるトトアバは、国際取引がワシントン条約によって禁止されていますが、浮袋が中華料理の高級食材となるため、密漁と違法取引が後を絶ちません。

長年、政府や研究者と共に保全活動を続けてきたWWFメキシコは今、ヴァキータを何としても守るため、関係国政府に対し緊急措置を強く求め、保護を訴えるキャンペーンを計画しています。

対象となる生物だけでなく、他の生物にも危機をもたらす違法取引や密猟。

「混獲」がヴァキータを危機に追いやっているとされています。

日本も野生生物の輸入国、そして原産国として、こうした問題に関係している可能性が十分にあります。

海の向こうの保護活動が成功することを願いつつ、私たちも日本でできること、するべきことに全力を尽くさなければ、と決意を新たにしました。(トラフィック 北出)

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網にかかったヴァキータ

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自然保護室(野生生物)
北出 智美

修士(生物学、生物多様性マネジメント)
国際的な自然保護に携わることを目指し、カナダのブリティッシュコロンビア大学で生物学を専攻。遺伝子レベルの進化と多様性に魅せられアルバータ大学でシカの遺伝子の研究を行なった。国際NGOでの就職を目指しオックスフォード大学で生物多様性マネジメントを履修し、帰国後外務省任期付職員として環境条約に携わる部署に勤務した後、2013年にWWFジャパンに入局。WWFでは野生生物取引に特化した活動を行うTRAFFICで活動し、2020年より現職(2018年からTRAFFICジャパンオフィスの代表も務める)。

「野生生物取引」の問題は、SNSで話題のカワイイの野生動物ペットから、犯罪組織と巨額のマネーがからむ密輸の問題まで本当にダイナミックで、活動の切り口も様々。日々、新しいことを学びながら、今、自分たちがやるべきことは何かを考え抜き、行動したいと思っています。

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