太陽を見つめる者


こんにちは。トラフィックの若尾です。

学生時代の寮にグリーンイグアナがいた、からではないのですが、爬虫類が気になり続けてきた私にとって、先日ちょっとショックなニュースがありました。

オオヨロイトカゲが10年後には絶滅するかもしれない、というものです。

オオヨロイトカゲSmaug giganteusは南アフリカに生息する、その名の通りごっつい鎧のような皮膚をもつカッコいいトカゲの一種。

日光浴のため、太陽をじっと仰ぐその姿からSungazer(太陽を見つめる者)というイカした通り名も持っています。

オオヨロイトカゲ
南アフリカ共和国の固有種でIUCNレッドリストでは、VU(危急種)に指定されています。成熟に5年もの時間がかかり、メスは2~3年に一度、1~3頭の仔を生むのみの繁殖率の低いトカゲです。

ペットとして人気が高く、1981年よりワシントン条約で国際取引が規制されてきましたが、未だに絶滅危機種。それどころか、絶滅のおそれはさらに高まっているとのこと。

最大の理由は、肝心の国際取引がきちんと規制できていないためです。

ワシントン条約はあくまで、国境を越える野生生物の取引を規制するものですから、その国の法律で取引が規制されていない限り、国内で売買しても違法になりません。また、飼育繁殖個体の場合は、国際取引の規制が緩和される場合もあります。

日本に輸入されたオオヨロイトカゲ属.生体の頭数
1981年以降計317頭を商業目的に輸入しており、7割以上が、飼育下繁殖または飼育下で生まれた個体とされている。

このため、南アフリカで捕獲され違法に持ち出された、野生のオオヨロイトカゲの多くが「飼育繁殖させたもの」と偽られて、今も各国で取引されているのです。

今年、インドネシアで爬虫類200頭以上を密輸しようとした日本人が逮捕されたニュースがありましたが、こうした恥ずべき行為に頼って商売を続けているペット業者や、そうした生きものの由来に疑問を持たない消費者が、オオヨロイトカゲのような絶滅のおそれのある動物を、さらに追いつめています。

野生生物やそれに由来する製品を見かけたらぜひ、どこから来たのか、皆さまもより深く、関心を持っていただければと思います。

ミミナシオオトカゲ
インドネシアから違法に持ち出されそうになった253匹の中には、ワシントン条約附属書Ⅱ掲載種で、インドネシアの法律で保護されているミミナシオオトカゲも含まれていたという。

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自然保護室(野生生物)、TRAFFIC
若尾 慶子

修士(筑波大学大学院・環境科学)
一級小型船舶操縦免許、知的財産管理技能士2級、高圧ガス販売主任者、登録販売者。
医療機器商社、海外青年協力隊を経て2014年入局。
TRAFFICでペット取引される両生類・爬虫類の調査や政策提言を実施。淡水プロジェクトのコミュニケーション、助成金担当を行い、2021年より野生生物グループ及びTRAFFICでペットプロジェクトを担当。
「南西諸島固有の両生類・爬虫類のペット取引(TRAFFIC、2018)」「SDGsと環境教育(学文社、2017)」

子供の頃から生き物に興味があり、大人になってからは動物園でドーセントのボランティアをしていました。生き物に関わる仕事を本業にしたいと医療機器業界からWWFへ転身!ヒトと自然が調和できる世界を本気で目指す賛同者を増やしたいと願う酒&猫好きです。今、もっとも気がかりな動物はオガサワラカワラヒワ。

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