世界の絶滅危機種が、ついに2万種に


広報担当の三間です。
昨日、絶滅の危機にある世界の野生生物の種数が、ついに2万種を超えた、という報道がありました(*)。

今年の6月時点から、合計で400種あまりが増えた計算になり、その大半は植物と、貝類や昆虫などの無脊椎動物でした。

動物だけを取りあげてみても、1996年の時点で、約5,200種だった絶滅危機種の数。それが今では1万種を超えてしまいました。

この増えた数字の中には、本来1種だった動物が、2種や3種に分類されるようになったケースや、もともと危機的だった「予備軍」の現状が、その後の研究によって明らかにされたケースも含まれています。

たとえば、スマトラ島とボルネオ島に生息するオランウータンは、以前は1種でしたが、今では島ごとに2種の動物として分類されています。ですから単純に、1996年から「絶滅の危機が倍になった」とはいえないかもしれません。

それでも、研究が進むに伴い、明らかにされてきた多くの危機は、隠しようのない「今の地球の姿」を示すものといってよいでしょう。2種に分類されたオランウータンも、それぞれの島で、絶滅の危機にさらされています。

今回のリストでその数を増やした小さな無脊椎動物や植物などは、特に密猟の防止や人工的な繁殖といった個別の手段では保護が難しく、生息環境の保全を行なわないと、守ることのできない生きものたちです。

この十数年間、保護活動により回復した生きものも確かにいますが、その一方で、生命の息づく環境自体の悪化が、より深刻な規模で広がっていることがうかがえます。

出来たことに対し、出来なかったことのいかに多いことか。この数字に何を学び、何を次の一手として打ち出してゆくかを、あらためて考えてゆかねばと思います。

 

  • ※ここでいう絶滅危惧種の数とは、IUCN(国際自然保護連合)の「レッドリスト」、つまり、絶滅の恐れのある種(しゅ)のリストにリストアップされた野生生物のうち、絶滅危機の深刻な3つのカテゴリー(CR、EN、VU)にランクづけされた生きものの数です。
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自然保護室(コンサベーションコミュニケーション グループ長)
三間 淳吉

森、海、気候、野生生物、さまざまな活動をサポートしています。

虫を追いかけ40年。鳥を追いかけ30年。生きものの魅力に触れたことがきっかけで、気が付けばこの20年は、環境問題を追いかけていました。自然を壊すのは人。守ろうとするのも人。生きものたちの生きざまに学びながら、謙虚な気持ちで自然を未来に引き継いでいきたいと思っています。

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