レッドリスト「絶滅種」の数が減っている?


広報担当の三間です。
先日、新しくなった「レッドリスト(絶滅のおそれのある種のリスト)」の数字で、ちょっと妙な事に気が付きました。
「絶滅種」についての数字です。

IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストでは、西暦1600年以降に絶滅が確認された野生生物がリストアップされており、毎年その数もアップデートされています。

たとえば、2012年のレッドリストに名を連ねた絶滅した鳥類は、実に130種でした。
では、遡って2006年の数は?

当時の資料をひっくり返してみたら、なんと「135種」という数字が出てきました。6年の間に、絶滅したはずの鳥が5種、消えてしまったわけです。

新旧のリストを照合すると、こんなことがわかりました。

まず、2006年にあって、2012年のリストに名の無い鳥が、7種ありました。1種ずつ調べてみると、7種のうち6種は、分類が変わり、別の鳥と同一種とされたため、リストから消えたことが判りました。そして、もう1種は、喜ばしいことに、再発見されたらしい!とのこと。

一方、2012年のリストにあって、2006年に無い鳥は2種でした。うち1種は、やはり分類が変わって、新たに「別種」とされたものでしたが、もう一種は、近年絶滅が確認された鳥でした。

つまり、絶滅種減少の主因は「分類の変更」だったわけですが、これは喜んで良い話ではありません。別種であれ、同種であれ、特定の地域からその生きものが姿を消した、という事実に、変わりはないからです。

絶滅種や絶滅危惧種の問題では、とかくこうした数字に目が行きがちですが、数にばかり気を取られると、本当に起きている野生と自然の危機を見誤ることがあるかもしれません。

レッドリストの数字を減らしてゆくことは、私たちにも大事な課題ですが、こうした点についても意識してゆかねばならないと、改めて感じています。

 

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レッドリストの絶滅種一覧には、ドードーやオオウミガラス、リョコウバトといった、よく知られた鳥も含まれています。

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自然保護室(コンサベーションコミュニケーション グループ長)
三間 淳吉

学士(芸術学)。事務局でのボランティアを経て、1997年から広報スタッフとして活動に参加。国内外の環境問題と、保全活動の動向・変遷を追いつつ、各種出版物、ウェブサイト、SNSなどの編集や制作、運用管理を担当。これまで100種以上の世界の絶滅危惧種について記事を執筆。「人と自然のかかわり方」の探求は、ライフワークの一つ。

虫や鳥、魚たちの姿を追って45年。生きものの魅力に触れたことがきっかけで、気が付けばこの30年は、環境問題を追いかけていました。自然を壊すのは人。守ろうとするのも人。生きものたちの生きざまに学びながら、謙虚な気持ちで自然を未来に引き継いでいきたいと願っています。

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