被災地の海で新しい人と海の関係を築く人たち
2016/02/15
自然保護室の前川です。
先日、宮城県北部漁業士会の研修会に講師として出席してきました。
漁業士とは、地域の指導に携わる優れた漁業者の方が任命されるもので、宮城県では、北部、南部、中部の3区域に分かれて定期的な情報交換や研修を実施しています。
今回の研修会では、県の養殖振興プランが話題として提供され、私からも海の環境に配慮した養殖の証「ASC認証」のについてお話をさせてもらいました。
昨年11月、宮城県漁協志津川支所戸倉事務所が手掛けるマガキの養殖が、国内初となるこのASC認証の本審査を受けました。
これは、戸倉の漁業者の皆さんが、震災と復興を契機に、以前は当たり前だったカキの過密養殖をやめ、「持続可能な養殖」のあり方を模索する中で手掛けている試みの一つです。
勉強会に参加されていた戸倉の漁業士からは、「震災後、養殖密度を1/3に減らしたことで、カキがいきいきと育つようになっただけでなく、作業にかかる時間も大幅に減り、より良い生産を目指す余裕が出てきた」との発言があり、「たくさん作れば良い」という意識も変わりつつあるとのこと。
戸倉では現在もASCの認証審査が続けられていますが、こうした取り組みに対しては、県内の他の地域でも関心が広がっています。
あの大震災からもうすぐ約5年。
宮城県の養殖の生産基盤は復旧しつつあるとはいえ、いまだ震災の痛手は消えず、将来の持続的生産と発展を見据えた、経営や販売、生産、品質の改善が必要とされています。
すでに120を超える世界の養殖場が認証を取得し、国際的なエコラベルとしても信頼される「ASC認証」が、そうした県の取り組みを支える手立ての一つとして、地域の海の保全と、震災からの復興に貢献してくれることを期待しています。