大きくなった南三陸のカキをいただきました
2015/05/22
日本で屈指の漁場、南三陸の海から、たくさんの生ガキが事務局に届きました。
厚い殻に包まれたその身の大きさと風味は、海の豊かさそのものを思わせます。
送ってくださったのは、宮城県南三陸町戸倉地区の漁業者の方です。
この地区では漁業者の皆さんが、東日本大震災の後、ただ震災前に戻すのではなく、新しい海との付き合い方、漁業の在り方を考え、復興に取り組まれてきました。

その一つが、以前から名産品だったカキ養殖の方向転換です。
以前、南三陸町では、海の環境にも負担をかける「過密養殖」を行なっていましたが、その結果、成長に時間がかかり、品質不良が起きるなど、いろいろな問題が生じていました。
そして、震災での津波で養殖場が全て流された後、南三陸の人たちは、生産量が減少することを覚悟で、養殖するカキの総量を減らし、その代り、質の高いカキの生産を目指す、一大決心をされたのです。
その結果は、素晴らしいものでした。
数こそ減ったものの、カキの成長速度は速くなり、しかも一つひとつが大きな、高品質の産品が生み出されるようになったのです。

南三陸の名産カキの養殖
私たちWWFも「暮らしと自然の復興プロジェクト」を通じて、その取り組みを支援し、南三陸の海で「持続可能な漁業」の実現を目指してきました。
事務局に送っていただいた生ガキは、まさにその成果であり、南三陸の海があの津波を乗り越え、新たな未来を切り拓いてきたことの、確かな証でした。
復興は、まだ終わっていません。
ですが、地域に目を向けると、たくさんの人たちのこうした努力が、次の時代の扉を開こうとしていることに気づかされます。私も被災地の出身ですが、まだまだできることがあると、あらためて思いました。

送っていただいたカキ
「持続可能な漁業」を、東北の海でより広く実現してゆくことも、その一つの道にしてゆければと思います。(自然保護室:前川聡)

南三陸の海