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本気で脱炭素化に挑む鉄鋼業 [JFE スチール株式会社前編]


2050年に温室効果ガスをネットでゼロにするという目標を持つ日本、電力の脱炭素化に注目が集まりがちですが、実は日本の産業部門CO2排出量のうち、約40%を排出しているのは鉄鋼業。鉄は自動車や建築物などあらゆる産業の素材であり、日本のものづくりを象徴する産業です。そして脱炭素化が難しい産業の代表でもあります。その鉄鋼業の脱炭素化をいかに進めていけるのかが、世界的に問われています。国内外で競争が加速する中、その難題に挑むJFEスチールの西日本製鉄所(広島県福山市)を訪問してきました。

製鉄には一般的に二つの方法があります。一つは高炉でコークスと呼ばれる石炭を入れて、鉄鉱石から鉄を取り出す方法。効率的であり、高品質なものができますが、大量のCO2が排出されます。もう一つは電炉で鉄スクラップを溶かして、リサイクルする方法で、CO2排出量は4分の1になります。

このたびJFEスチールは、高炉の一つを大型電炉に置き換えることを発表されました。そもそも日本の鉄鋼業の電炉比率は25%前後、欧州では約50%、米国も60~70%なので、もっと電炉化することで排出削減が進むのにと思っていた私は、いさんでJFEスチールに伺ったのです!

そこで見たのは、いくつもの工場が整然と立ち並ぶ一つの町のような広大な製鉄所。まさに地域の経済と雇用を支える国内最大規模の基幹産業の姿です。この西日本製鉄所の敷地内では、ディーゼル機関車が走り、踏切や信号機があるなど一般の道路と同じでした。脱炭素を進めるということは、この町の半分の設備を総とっかえするような作業とか。。。その壮大さに気が遠くなるような気持ちで、高台からその町を眺めた私です。

そこでは今の技術で可能な様々な省エネ策が進められていました。高炉送風機の電動化や低温の排熱利用などの省エネ・高効率化、還元鉄の活用などなど。段階を踏んで実証された技術から順次導入されています。その一つとして、大型電炉への置き換えも計画されているわけです。今の技術でできることをやりながら、同時に超革新技術の開発を進めて、いずれ2050年にカーボンニュートラルを達成する計画です。

高台から見た西日本製鉄所、3方を海に囲まれ、向かって左側から材料が船で運ばれてきて、プロセス順に工場が並んでおり、出来上がった製品は、右側の海から送り出されるようになっている。
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高台から見た西日本製鉄所、3方を海に囲まれ、向かって左側から材料が船で運ばれてきて、プロセス順に工場が並んでおり、出来上がった製品は、右側の海から送り出されるようになっている。

正直に言って私の印象では、日本の鉄鋼産業はこれまで脱炭素に前向きとは思えなかったのですが、今回の取材では本気度をひしひしと感じました。パリ協定の実施時代に入って、世界中で素材産業も脱炭素を求められるようになった中、切迫感をもって取り組まれているのだと実感したのです。

これまでの効率的な製鉄方法をあえて変えて低炭素化していくためには、莫大な投資が必要となります。ご説明くださったJFEスチール専門主監(地球環境)手塚 宏之氏は、「これまでは投資回収が見込める省エネをやっていたが、これからは従来の省エネ投資の基準では満たせなかった投資回収年数が長いものも踏み込んでやっている」。私が「もしカーボンニュートラル計画がなければ、電炉も検討されなかったですか?」と質問したら「そうでしょうね」と。

脱炭素は本当に困難な道です。でも挑戦していく、という強い決意を感じた取材で、胸が熱くなった小西でした。世界の鉄鋼業に伍して、高品質で低炭素な製品で競争力を持つ日本の鉄鋼業に期待しています! 詳しくはJFEスチール訪問記をご覧ください。

製鉄所の前でJFEスチールの皆様と。
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製鉄所の前でJFEスチールの皆様と。

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専門ディレクター(環境・エネルギー)
小西 雅子

博士(公共政策学・法政大)。米ハーバード大修士課程修了。気象予報士。昭和女子大学特命教授、京都大学院特任教授兼務。
中部日本放送アナウンサーなどを経て、2005 年に国際 NGO の WWF ジャパンへ。専門は国連における気候変動国際交渉及び国内外の環境・エネルギー政策。2002 年国際気象フェスティバル「気象キャスターグランプリ」受賞。環境省中央環境審議会委員なども務めている。著書『地球温暖化を解決したい―エネルギーをどう選ぶ?』(岩波書店 2021)など多数。

世界197か国が温暖化対策を実施する!と決意して2015年に国連で合意された「パリ協定」の成立には感動しました!今や温暖化対策の担い手は各国政府だけではなく、企業や自治体・投資家・それに市民です。「変わる世の中」を応援することが好きな小西です♪

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WWFは100カ国以上で活動している
環境保全団体です。

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