「オタリアには勝てません...(諦観)」


「オタリアには勝てません...」
そう諦め気味に語ってくれたのは、先日、南米チリの海でお会いしたベンティスケロス社のギジェルモさんです。

ベンティスケロス社はサケの養殖会社で、周辺の自然や地域に配慮した養殖業の証である「ASC認証」を取得。

持続可能な養殖に取り組み、そのサケは日本にも輸出されています。

ところがこのサケ、人間以外にとっても美味らしく、狙って食べにくる動物がいます。

中でも強敵なのがオタリア。

オタリアのハーレム。風下に来ると、とても臭いのが、新鮮です。

南米沿岸に生息するアシカの一種で、オスは体重300キロにもなるとか。漁網を食い破り、駆除される例も後を絶ちません。

しかし、ASC認証には、「養殖魚を食べに来た動物は、殺す以外の方法で対処しましょう」という原則があります。

そこで、ギジェルモさんたちは、サケを育てる生け簀の周りに、オタリアが噛み切れない堅いロープの網を設置。被害を防ぐ工夫をしています。

ところがオタリアは、この対策を乗り越えてしまうんです。

なんと2頭がかりで、オタリア除けの強い網をぐいぐい押して生け簀に近づき、養殖用の網を噛み切る、そこからサケを引きずりだして食べてしまう、と言うのです。

1頭では近づけないサケを、協力プレーで手に入れる、その賢さには感心するばかり。

同時に感銘を受けたのが、チリの人たちの「共存」に向けた姿勢でした。

左がベンティスケロス社のギジェルモさん。

養殖場を荒らされれば誰だって腹が立ちますし、対策も殺してしまう方が楽なはずです。

それでも、海の豊かさを象徴するオタリアと共に生きる道を選んだ人々の苦労と努力には、強い意志と、温かさを感じました。

多様な生きものたちとの「共存」。

世界のどこでも、自然保護の大切なテーマとなるその考え方に、思いを新たにしたチリの海でした。
(C&M室 河村)

WWFチリ海洋担当のクリスティーナ。日本とチリの事務局が協力して、ASC認証の普及や、野生動物の保護調査に取り組んでいます。

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