自然の森に帰ったトラ「ウポニー」の死が教えてくれること・・・


※2023年6月26日をもって、WWFロシア(Vsemirnyi Fond Prirody)はWWFネットワークから離脱しました。

WWFロシアの事務局から大変ショッキングなお知らせが届きました。

スタッフブログなどでも度々ご報告しておりました、シベリアトラの「ウポニー」が死んだ、という知らせでした。

「ウポニー」は、2014年の冬に極東ロシアで人里に現れて捕獲され、野生復帰のリハビリを経て翌年5月に自然の森に帰ったオスのシベリアトラです。

その後も、発信器つきの首輪から送られてくるGPSの信号を基に、その行動圏や、人里にまた出没しないか、調査が続けられてきました。

その信号が突然途絶えたのです。 2月17日のことでした。

勢いくケージを飛び出し、野生へ帰っていくウポニーの姿

専門家たちは急いでGPS信号が途絶えた場所へ向かいましたが、かなり人里からも離れた場所で、死体を発見するまでには数週間を要しました。

死因はその外傷からヒグマか、より体の大きなトラに襲われたのではと推測されています。

WWFロシア、アムール支部のパベル・フォメンコはウポニーの死について次のようにコメントをしています。

「ウポニーは、人との衝突によって野生から離され、野生復帰のための訓練を受けた後に、再び自然に順応していくという、目まぐるしい変化のある生涯を過ごしました。

首輪からのGPS信号によってウポニーの移動状況がわかります

私たちは、そんなウポニーに「自由への挑戦」、そして「自然界で生き延びる」ことの象徴であってほしいと願っていました。

そんな矢先、この知らせを聞き大変残念に思っています」

自然の厳しい掟がもたらす死は決して少なくありません。

その厳しさにさらに、人の手による森林破壊や密猟を加え、すみかを奪ってしまうようなことは、絶対に無くしてゆかなければいけません。

「ウポニー」と名付けられた一頭のトラの生涯からは、そんな警告にも似た強い思いをあらためて感じました。(広報 山本)

シベリアトラすむ極東ロシアの森。2015年の調査では、野生のシベリアトラの個体数は523~540頭であると推定されています。

関連情報

関連動画:ウポニーの野生復帰に向けて

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WWFジャパン ブランド・コミュニケーション室 メディア グループ長
山本 亜沙美

大学時代の専攻していた海洋生物学をきっかけに、絶滅危惧種や環境保全活動に興味を持ち始める。2005年卒業後、米セントラルフロリダ大学院にて生物学を学び、2007年に卒業。卒業後、航空会社にて運行管理のオペレーション業務に携わった後、2010年にWWFジャパン自然保護室アシスタントとして入局。2013年より広報・プレス担当として、取材対応、記者発表などをはじめとしたメディアリレーション、イベント企画・運営などに携わる。2018年7月からメディアグループ長として、広報全般・WWFジャパンのブランドコミュニケーションを担当する。

海洋生物学が専門のリケジョな広報プレス担当です。人の心に響くものはいつの時代も変わらずですが、今は伝える手法が多様化しつつあります。情報のトレンドを追いかけ、常に一歩引いた視点で物事を見るように心がけています。休みがあればスクーバ&スキンダイビングをしにどこかの島に行っています♪

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