バンコクの国連会議の現場より


温暖化担当の小西です。
国連会議が開かれているタイのバンコクに来ています。
来たのは今回で3回目ですが、来るたびにきれいになっていて驚きます。

今月3日に始まったこの会議、初日から3日目の午前中までは、国の交渉ではなく、ワークショップが開かれました。6年間こうした国際会議を見てきましたが、これは初めてのことで、珍しい形かもしれません。

テーマは先進国の2020年の削減目標と、途上国の削減行動。
その中身しだいで「各国がどれだけ温室効果ガスの排出を削減するか」規模が決まる!だ・い・じ・な ワークショップです。

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会議場の様子。このワークショップも、深慮遠謀の下に開かれている!?

たとえば、森林吸収源というルールがあります。これは、ある国の削減目標から「その国の森林が吸収する温室効果ガスを、削減目標から差し引いてよい」というもの。
(この分は、森がほとんど勝手に吸収するわけですから、人が排出削減の努力をするわけではありません)

日本の場合、京都議定書での最初の削減目標は、1990年比で「6%減」ですが、そのうち3.8%が森林吸収源。つまり、実質的な日本の削減目標は、6%から3.8%を除いた「2.2%」ということになります。

これを、新たな削減目標の中で「どれくらい使ってよいことにするか」によって、各国が努力せねばならない排出削減のボリュームが決まり、実際に石油や石炭から排出されるCO2などの量を左右することになるのです。

こうしたいくつもの課題を話し合い、各国の目標が比較できるようにしながら、足りない分をどうするか検討… と。回りくどいけれど、これが国際交渉の現場です。
今後の交渉を含めた会議の内容については、またご報告いたします!

 

 

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専門ディレクター(環境・エネルギー)
小西 雅子

博士(公共政策学・法政大)。米ハーバード大修士課程修了。気象予報士。昭和女子大学特命教授、京都大学院特任教授兼務。
中部日本放送アナウンサーなどを経て、2005 年に国際 NGO の WWF ジャパンへ。専門は国連における気候変動国際交渉及び国内外の環境・エネルギー政策。2002 年国際気象フェスティバル「気象キャスターグランプリ」受賞。環境省中央環境審議会委員なども務めている。著書『地球温暖化を解決したい―エネルギーをどう選ぶ?』(岩波書店 2021)など多数。

世界197か国が温暖化対策を実施する!と決意して2015年に国連で合意された「パリ協定」の成立には感動しました!今や温暖化対策の担い手は各国政府だけではなく、企業や自治体・投資家・それに市民です。「変わる世の中」を応援することが好きな小西です♪

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