ラムサール条約湿地「中池見湿地」を通過する北陸新幹線建設工事において、 ラムサール条約の決議を遵守することを求める要望書


要望書 2016年4月8日

独立行政法人 鉄道建設・運輸施整備支援機構
理事長 北村 隆志 殿

公益財団法人 日本自然保護協会
NPO法人 ウエットランド中池見
NPO法人 中池見ねっと
NPO法人 ラムサール・ネットワーク日本
日本湿地ネットワーク
公益財団法人 日本野鳥の会
公益財団法人 世界自然保護基金ジャパン

ラムサール条約湿地「中池見湿地」を通過する北陸新幹線建設工事において、ラムサール条約の決議を遵守することを求める要望書

福井県敦賀市の「中池見湿地」は、袋状埋積谷という地形が大きな特徴で、世界的にも希少な約10万年の歴史をもつ40mもの厚さの泥炭層が堆積しています。加えて、多様な水辺環境により多様な動植物の生息地であることが評価され、2012年7月に世界的な保護地域であるラムサール条約の湿地として登録されました。

この地域では北陸新幹線の建設計画があり、1996年に計画ルートが公表され、そのルートについて2002年に環境影響評価書が提出されました。その後、中池見湿地がラムサール条約に登録された直後に、1996年に公表されたルートよりも約150m湿地の内側に変更したルートが認可・公表されました。貴機構は事業が中池見湿地に及ぼす影響を回避・低減するための保全対策を話し合う中池見湿地付近環境事後調査検討委員会(2013年11月~2015年3月)を設置し、その結果を受けて、1996年に公表されたルートに沿った形で変更したルートを2015年5月8日に公開しました。

中池見湿地は世界的にも特殊な地理的環境をもつことから、通常とは異なる泥炭層の形成・維持機構が存在していると推定されます。また、現在の計画ルートは水源となる山をトンネルで通過する計画です。このような場所で工事に伴う水文環境の変化を正確に予測することは困難であり、ひとたび水文環境に変化が生じれば中池見湿地の形成・維持機構そのものに不可逆的な影響を与える恐れがあります。さらに今回の中池見湿地にかかる工事は、ラムサール条約湿地内を通過するため、国内外の保護地域の開発を助長する恐れがあります。

ラムサール条約では環境影響評価の法制度・プロセス及び戦略的環境影響評価に生物多様性関連事項を組み込むために、「決議Ⅹ.17環境影響評価及び戦略的環境影響評価:科学技術的手引きの改訂版」が2008年に決議され、ラムサール条約湿地内の事業での活用が推奨されています。中池見湿地にかかる工事においては、この決議に則り最大限の環境配慮が必要です。

そこで当会は次のことを要望いたします。

1.ラムサール条約の決議Ⅹ.17に則った「環境管理計画」を中池見湿地の自然に精通している市民・NGO等を含む専門家の意見を反映させて、作成してください。

ラムサール条約の決議Ⅹ.17で定める環境影響評価のガイドラインでは、事業で見込まれる環境影響を回避、緩和、代償するための措置をどのように実施、管理、モニタリングするかについての詳細な情報を示す「環境管理計画」を作成することが求められています。中池見湿地にかかる工事を行う場合には、この決議に則り事業者は具体的な工法を示した上で「環境管理計画」を作成してください。その作成にあたっては、最大限の環境配慮を行うために生態学や工法に詳しい専門家とともに、中池見湿地の自然環境に精通している市民・NGO等を含む専門家の意見を反映させてください。

2.モニタリング調査の結果や環境配慮等の事業評価について、独立に検証する評価委員会を設置してください。

中池見湿地への工事による影響を確実に回避・低減するには、事業で計画された措置が確実になされたか、モニタリング調査の結果に異常がないかを常に確認・検証する必要があります。特に、中池見湿地の形成・維持機構にとって重要な水文環境の変化を正確に予測することは困難であることから、専門家による評価が必要です。このため、モニタリング調査の結果や環境配慮等の事業評価について、事業者のみで検証するのではなく、独立に検証する評価委員会を設置してください。

3.モニタリング調査の結果や評価委員会の会議等は、中池見湿地の保全に関わる関係者および市民が入手・利用可能となるよう随時公開してください。

中池見湿地は、世界の宝であり、地域の財産です。敦賀市では2015年5月に「敦賀市中池見湿地保全・活用計画」を策定し、モニタリング調査を行いながら湿地の保全や教育、観光、交流、研究の場など、その賢明な利用を進めています。工事で明らかになった情報は中池見湿地の保全に関わる関係者が活用できるよう適切に公開し、中池見湿地の保全や賢明な利用に貢献することが大切です。モニタリング調査の結果や評価委員会の会議等は、中池見湿地の保全に関わる関係者および市民が入手・利用可能となるよう随時公開してください。

4.工事において予期せぬ事態や事故に備えて緊急時計画を策定してください。

中池見湿地の形成・維持機構にとって重要な水文環境にひとたび変化が生じれば不可逆的な影響を与える恐れがあることから、リスク回避のためには予期せぬ事態や事故が起こった際に行う、連絡体制、対応・協力体制、緊急対応法とその資材の準備、訓練等を記した「緊急時計画」を準備しておく必要があります。中池見湿地にかかる工事を行う場合には、事業者は「緊急時計画」を工事前に策定してください。

以上

この件に関する問合せ

WWFジャパン 自然保護室 前川聡 Tel:03-3769-1713

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