2030年“ネイチャー・ポジティブ”達成に向けて日本も対策の加速を! ~国連生物多様性条約 第15回締約国会議第一部終了を受けた声明~


国連生物多様性条約会議第15回締約国会議(CBD COP15)が2021年10月11日から正式に開始されている。中国が議長国として前面に立ち、締約国を牽引して2020年以降のグローバルな生物多様性枠組(ポスト2020年GBF)を野心的で革新的、かつ最大限の野心で示すことが求められている。

生物多様性枠組に向けた国際交渉は、2020年9月に国連総会で開催された生物多様性サミットから開始され、自然回復の誓約 (Leaders Pledges for Nature)、自然と人々のための高い野心連合 (High Ambition Coalition for Nature and People) 、G7、またIUCN(国際自然保護連合)が主催する総会(World Conservation Congress)を通じて議論形成されており、ヨーロッパを中心とした各国からの高いコミットメントが示されてきている。人類は、人、地球、経済、そして地球上のすべての生命の持続可能な未来のために、生物多様性を2030年までに回復軌道に乗せる(ネイチャー・ポジティブ)という重大な責任を負っている。政府関係者だけでなく、経済・ビジネス界のリーダー、学術関係者等が一丸となって、責務を認識しながら可能な取り組みを実施するときにある。

WWFジャパンはCBD COP15で開催されたハイレベルセグメント、昆明宣言の採択、ならびにグローバルイニシアティブ・団体からの発信を受け、日本政府並びに日本の経済・ビジネス界のリーダーに向け、以下の行動に向けて共に活動を強化していくことを求めていく。

1.2030 年までに生物多様性の損失を回復し、30×30ならびにネイチャー・ポジティブな世界と自然との共生社会の実現のため最大限の野心を提示すること
CBDが示す3つの目的(生物多様性の保全、その構成要素の持続可能な利用、および遺伝資源の利用から生じる利益の公正かつ衡平な配分)はGBFでも引き継がれ、継続して野心的に取組む必要がある。特に2030年までに生物多様性の損失を回復し、陸域・海域それぞれの30%を保護・保全するという“30×30”の確実な確保とネイチャー・ポジティブな世界を実現するために、十分なリソースを確保しつつ、最大限の野心を持ってコミットメントすることが必要である。その意味で、今後策定される生物多様性国家戦略においても、2030年までの30×30の確保とネイチャー・ポジティブ達成を明確に位置付けるべきである。

2.国内外における生産と消費のフットプリントを考慮し、生物多様性損失の要因に対処するための適切かつ必要な対策を策定していく
生物多様性損失の直接的・間接的要因に対して適切かつ必要な行動をとり、人と地球と持続可能な経済のために、生産と消費の持続不可能なフットプリントを大幅に削減することを目標として掲げることが必要である。また個別の重要な部門、特に食料システム、農業、漁業、林業、インフラ、製造業、加工業などにおいて、自然に与える損失よりも便益が上回る“ネイチャー・ポジティブ”な産業へと変革していくための具体的な対策・施策を講じていくこと。また人間活動により健全な生態系を損なわないように、ワンヘルスの考え方を導入することが必要である。このような働きかけは、公正であることも必要で、多くのステークホルダーが参加し、意見を言える形で実施されなければならない。

3.生物多様性に必要な資金をあらゆる方面から早急に確保すると同時に、生物多様性損失につながる資金の流れやインセンティブを廃止していく
生物多様性の回復に必要な財源に対して、あらゆるステークホルダーからの貢献を求める。これには、ネイチャー・ポジティブに向けた経済への公平な移行、自然や生態系サービスの価値を十分に考慮し「見える化」することが必要であり、これまでの資金の流れを見直す必要がある。つまり、公的資金はもとより、民間資金も適切に生物多様性保全の取り組みに流れるようにすると同時に、逆に、生物多様性損失につながるような資金の流れやインセンティブを廃止していくことが重要である。さらに気候活動との相乗効果は重要であり、適切なセーフガードと生態系サービスを備えた、公平で権利に基づく自然を基盤としたの解決策(Nature based Solutions)への投資を促進することも必要である。

4.権利ベースのアプローチを目指し、活動にはすべてのステークホルダーを包含するものであることを確約すること。
国内外で実施する様々な活動の中で、権利ベースのアプローチに基づいて強力に実施され、すべての権利者とス テークホルダーが参加できるようにすることが必要である。

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