エネルギー基本計画「白紙からの見直し」を歓迎


東日本大震災から2カ月が経つ2011年5月10日、菅直人首相は原子力と化石燃料へ過度に依存した現在の「エネルギー基本計画」を見直す姿勢を明らかにしました。これは、震災によって顕在化した原発の問題と、地球温暖化の解決をめざす方針として評価に値するものです。これはWWFが提案する、原発の段階的廃止と大規模な省エネの実現、そして再生可能エネルギー100%による新しいエネルギー社会の実現にも通じた内容です。

再生可能エネルギーを「基幹エネルギー」に!

2011年5月11日、WWFジャパンは、10日に官邸で開かれた記者会見で、菅直人首相が「エネルギー基本計画」を見直す姿勢を明確に打ち出したことを歓迎する声明を発表しました(※1)。

「エネルギー基本計画」は、日本が国としてどのようなエネルギー社会を目指してゆくかを示した方針ですが、従来の計画は、原子力と石油や石炭といった化石燃料に強く依存した内容となっており、これが風力や太陽光といった、再生可能な自然エネルギーの社会的な普及拡大を阻む、一つの要因になっていました。

菅首相は会見の中で、「今回の大きな事故が起きたことによって、この従来決まっているエネルギー基本計画は、一旦白紙に戻して議論をする必要がある」と述べ、さらに、再生可能エネルギーを「基幹エネルギー」として位置づけて推進し、省エネルギー社会を構築するとして、エネルギー政策の転換に向けた姿勢を明確にしました。

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今後の見直しは「大規模省エネ」と「再生可能エネルギーの大量導入」を軸に

ただし、現段階では、全体としてどのような見直しになるか、具体的な方向性が見えていません。
WWFジャパンは、今回発表した声明の中で、今後の「エネルギー基本計画」の見直し議論にあたっては、以下の点を考慮するよう求めました。

原発の新規増設の凍結と段階的廃止

  • 現状のエネルギー基本計画は、2020年までに新たな原子力発電所を9基、2030年までに14基を増設することを計画しているが、今後の原子力発電所の新規増設は、全て凍結すること。
  • 安全性を更に重視するために、原子力発電所の設備を無理に利用拡大するのではなく、段階的に廃止していくこと。また、政府が、浜岡原子力発電所を、現時点では暫定的とはいえ、止める要請を出したことは歓迎すること。

温暖化対策を後退させない

  • こうした原子力発電に依存したエネルギー社会からの転換が、地球温暖化対策を後退させる理由としないこと。
  • 電力需要をまかなうための火力発電の、一時的な稼動増は仕方ないにしても、中長期的には化石燃料への依存度を下げてゆくこと。特に石炭へのこれ以上の依存を避けること。
  • 火力発電所の建設に際して、環境アセスメント(影響評価)を免除するような短慮の動向は絶対に避けること。
  • 政府が現在掲げている温室効果ガス排出量の2020年25%削減目標や、エネルギー基本計画の中で示されている(エネルギー起源CO2排出量の)2030年30%削減目標について、「変更止むなし」と安易に結論付けないこと。

今回の震災の後、現在までに140を超える国々が日本に支援の手を差し伸べました。
その中には、すでに温暖化の影響に苦しんでいる途上国も多く含まれています。日本がそうした支援に対して応える1つの方法は、世界的な温暖化対策を推し進めるため、引き続き温室効果ガスの排出削減に、積極的に貢献していく姿勢を見せていくことです。

新しい基本計画の実現を左右する鍵

日本が国として、原子力に対する依存度を下げつつ、温暖化対策をきちんと推進していけるかどうかの鍵は、菅首相が会見の中で指摘した、次の2つの点にかかっています。

●大規模な省エネの実現
●再生可能エネルギーの積極的な推進

この実現は、決して不可能なものではありません。
東京電力管内や東北電力管内については、再生可能エネルギーを中心とする分散型のシステムを重視し、積極的な省エネを実施した方が、結果的に費用も安くなるという研究もあります(※2)。

日本の技術をさらに一段と高める省エネ推進と、産業育成にもつながる再生可能エネルギーの推進を両輪とした「エネルギー基本計画」の再構築が期待されます。

 

 

脱原発と大幅な省エネ・節電で、再生可能エネルギー100%の安全な未来を!

WWFは、2011年2月に『エネルギー・レポート; The Energy Report』を発表し、2050年までに世界のエネルギー供給を100%、再生可能エネル ギーでまかなうことが可能かどうかを検証し、経済的、技術的に、それが実現できることを示しました。

現在、WWFジャパンでは、原発に頼らず、再生可能エネルギー100%で、快適な生活ができる未来を、日本でどのようにして拓くべきなのか、専門家や事業者、NGOなどさまざまなステークホルダーに参画していただきながら、その検討を進めています。

今後、政府のエネルギーに関する政策見直しについて、エネルギー政策と温暖化対策の両面から注視し、提言をしていきます。

 

※1 菅内閣総理大臣記者会見(平成23年5月10日)http://www.kantei.go.jp/jp/kan/statement/201105/10kaiken.html
※2 ノーチラス研究所による研究:David von Hippel and Kae Takase (2011) The Path from Fukushima: Short and Medium-term Impacts of the Reactor Damage Caused by the Japan Earthquake and Tsunami on Japan’s Electricity System. Nautilus Institute for Sustainable Development. http://www.nautilus.org/publications/essays/napsnet/reports/SRJapanEnergy

関連情報

途上国の国々が受けている温暖化の被害(「地球温暖化の目撃者」より)

 

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